中国 7日目 百恵と張
23.中国 7日目 百恵と張
数年後、上海。
上海美術館に一人の女性が美術鑑賞をしていた。
女性はある場所に立ち止まり真剣に飾ってある古い絵を見ていた。
その女性は大きな帽子と綺麗な薄ピンク色のワンピースを着ており、日の光によっては美しいボディーラインが透けて見えていた。
大きなサングラスをかけて顔が見えないが、美しい顔立ちが想像出来た。
その女性は上海美術を出ると、止まっている黒い車に乗った。
黒に入ると帽子とサングラスを取った。
「百恵さん、お目当ての作品はありましたか。」と運転士が優しい口調で言った。
「張さん、あったわよ。彼女がしていたペンダントと同じ紋章の絵が書かれている作品が飾ってあったわ。」と百恵が胸元からペンダントを取り出し眺めながら言った。
百恵はすっかり綺麗な女性になっており、父の仕事と同じ外交官になる為、大学を通っている女子大生であった。
大学は学生運動が盛んに行われており、世界ではベトナム戦争が始まっている激動の時代であった。
中国もまた、激動の時代であった。
百恵達は黒い車で上海の街を走っていた。
物置いや死体が至るところに転がっていた。
「これからどうするんですか。」と張は百恵に言った。
「モンゴルに行くわよ。」と百恵が言った。
「えー。」と張は驚きながら言った。
張は百恵の事が忘れらず、日本、香港、台湾と追いかけ、今は上海まで追いかけ来ていた。
そして、今度はモンゴルである。
二人はプロペラ飛行機に乗ってモンゴルに渡った。
飛行機の中では、百恵は真剣に中国語の本を読でいた。
「何を読んでいるのですか。」と張が言った。
「美術館にあった書物よ。」と百恵が言った。
「えっ。ちょっと、いつ間に盗んできたのですか。それ不味くないですか。」と張が驚いたように言った。
「何で私があんな着慣れないワンピースと大きな帽子をかぶっていたと思うのよ。ガラスのケースに飾ってあるから悪いのよ。簡単にカギは開けられるし警備員は少ないし、持ってい物かと思うわよ。」と百恵が笑いながら話した。
「普通は思いませんよ。」と、張は驚いたように百恵の話しを聞いたが、張は百恵の近くにいるだけ幸せだった。
張は将来、父のホテル経営を継ぎ、百恵さんを花嫁にする事が彼の夢であった。
「ここに美術館と同じ紋章が書かれているわ。」と百恵が本に書かれている紋章を指さして言った。
「その紋章は何ですか。」と張が言った。
「チンギスハンの物らしいわね。」と百恵が言った。
「チンギスハンて、あの女の子となんの関係があるのですか。」と張は不思議そうに言った。
「昔昔、始皇帝は永年の命を求めて、水銀を飲んだと言われているは。そして、中国を統一して3年後に水銀の飲みすぎで死んだわ。その時の墓は大きく生きた人間も一緒に埋められたとか、そしてチンギスカンの墓も同じように大きく生きた人間も一緒に埋められたとか、そして、フビライハンは探し求めていた小さな小国を見つけ攻め行った。」と百恵が言った。
「探し求めていた物とは」と張が聞いた。
「永遠の命。しかし、攻めいったフビライハン軍はその国を攻め滅ぼそうとしたが死者蘇り敗退を喫し退却が、その後その国は無くなっていたそうよ。」と百恵が言った。
「あー。今回も危ない旅になるのでは。」と張が悲しそうな声で言った。
「じゃあ、次はベトナムにする。」と百恵は笑いながら言った。
「やめてくださいよ。」と張が言った。
飛行機は無事、モンゴルに着いた。
張は馬とロバを借りて百恵と一緒に山の中、立ち入り禁止の国立公園にやって来た。
「この近くに例の紋章を持っている部族が居るはずよ。そこに行きましょう。」と百恵が言った。
百恵の乗っている馬はあっという間に山を駆け下りた。
張のロバでは、ゆっくりと百恵の後を追って行った。
「待ってよ。」と張は叫びながら追いかけた。
百恵は目を閉じて昔の事を思い出していた。
そして、戸棚に飾ってあった写真を手に取って見ていた。
若し頃の自分と旦那の張との写真であった。
百恵は、椅子に座り直して写真を胸において、目を閉じた。
百恵はペンダントをくれた女の子を探す為、モンゴルの山の中に住んでいるある部族を訪れた。
部族の長が出て来た。
女性であった。
百恵はその部族の長にペンダントを見ると部族の長は話し始めた。
この山の更に奥地に立ち入り禁止の国立公園の中に洞窟があり、その中に、そのペンダントを持っていた女の子が居るらしい。
しかし、その洞窟の中には猛毒の紫色の霧が充満しており、普通の人間はガスで死の恐れがある危険な場所である。
この部族の巫女と呼ばれる女性しか洞窟には入れない。
百恵は、その地下洞窟の入口にやって来た。
そしてガスマスクをして洞窟の中へと入って行った。
洞窟の中は涼しく冷たい空気が流れていた。
すると、冷たい空気に紛れ込んで紫色の霧が流れ込んできた。
紫色の霧の中から人影が見えた。
百恵は拳銃を二丁取り出してガスマスクの中から人影に拳銃を向けた。
後ろから人影が見え、鎧を纏った男が剣をふりかざした。
間一髪、百恵は避け拳銃を撃つた。
鎧の男は倒れたが、直ぐ立ち上がった。
前からも鎧の男が百恵に襲って来た。
百恵は右手の銃で後ろの鎧の男、左手で前の鎧の男を銃で撃ちながら百恵は洞窟の奥へと入って行った。
百恵の冒険心に火がついた。
どうしても、奥に隠しているものを見たかった。
「あの子はこの洞窟の奥に居るのね。巫女とは、この紫色の霧にも耐えられる人達ね。何故、彼女達は大丈夫なのか、この奥に何があるの。」と百恵は思い考え込んだ。
一方、張は洞窟の入口で百恵の帰りを心配しながら待っていた。
百恵は洞窟の奥に行き周りを見渡して驚いた。
そして、馬にまたがり真っ黒な鎧を着た兵士が二人現れ、百恵に襲って着た。
百恵は命からがら逃げて別の洞窟の入口から出たが、体は傷付き張とは合流できずに草原で倒れ込んでいた。
星が輝く夜、遠くからオオカミの遠吠えが聞こえて来た。
百恵はもう駄目だと思った時、一人の女の子が百恵の前に現れ、大人達を呼んできてくれた。
張も慌てて、その場所に現れた。
百恵は松葉杖をつきながら張の手配した飛行機に乗り、モンゴルを出た。
数年後、その部落がなくなったと張から聞かされた百恵は、あの時助けてくれた女の子を探しに、あの場所に向かった。
その女の子が桜と向日葵の母親で欄であった。
欄はもうあの場所には居なく、混乱の中国大陸を逃げ回っていた。
そして、偶然仕事で北海道に遣って来た時大人になった欄と出会うことができた。
数年後、百恵は北海道の山の中の倒産しかかっていたスキー場とホテルを買収した。
百恵はあの頃のことを思い出していた。




