1/35

前置

１．前置き

　今から千年程前の中国に小さな小国があった。

　満月の明かりが辺りを照らす真夜中に、その小国から小さな炎があちらこちらに上がってきていた。

　それは、小さな小国がモンゴル帝国からの襲撃を受けていたからである。

　小国の一人の兵士が慌てて王の寝室の前まで走って遣って来て膝をつき息を切らせながら話し始めた。

　「夜分失礼いたします。王よ。モンゴル帝国からの奇襲を受けております。もうこの城は持ちません。早くお逃げになって下さい。」

　王は寝室にいたが、既に起きており身支度を済めせていた。

　「くそ。フビライハンめ。モンゴル人のくせに。祖父チンギスハンの秘宝を求め我が国まで攻め入ってきたか、この中国大陸を我が物にしよって、呪ってやる。この体が朽ち果てようと。末代まで呪ってやる。」と小国の王が悔しさを滲ませながら言った。

　「まさか王。あの場所に行くのではないでしょうね。」と先ほどの兵士が驚いて言った。

　「もうそれしかあるまい。それに奴らもそれを狙っているはずだ。民衆もその場所に避難するように伝令をしろ。」と王は叫んだ。

　家来たちは民衆を城の中にある隠し扉へ導き奥にある大きな洞窟へ案内していった。

　フビライ軍は城に攻め入ったが城の中には人っ子一人いなくフビライ軍は城の中を探し始めた。

　小国の王たちが逃げた大きな洞窟の中には小さな村があり明かりを灯し逃げた民衆が空き家の中に隠れていた。

　王達は洞窟の奥にある奥にある神社の前まで遣ってくると深々と会釈をして息を殺してゆっくりと中に入って行った。

　洞窟の中の小さな村はたいまつやロウソクの灯りだけが照らされていた。

　人びとは家の中から祈るように外の様子を見ていた。

　王たちは神社の中にある祭られている棺の前に立ちゆっくりと棺を開けた。

　フビライ軍が城の中を調べていた時、足元から紫色の霧が立ち込めてきていた。

　すると兵士の一人の顔が青ざめて周りの兵士に噛みついていった。

　人を襲う兵士の数が次第に増えていった。

　フビライ軍の隊長が、その様子を見て一斉にこの場から逃げるように指示した。

　「退却だ。急いで、この場から立ち去るぞ。」

　紫色の霧は小さな小国の外にまで広がり、その紫の霧を吸ったモンゴル兵士達は次々と顔色が変わり仲間に襲い掛かって行った。

　村の中は青ざめた人々がうろつき始め、逃げ惑うモンゴル兵士を次々と襲っていった。

　モンゴル兵たちは広がってくる紫色の霧から逃げていた時、朝日が昇った。

　すると次々と襲い掛かっていた兵士達が倒れて紫色の霧は太陽の光を避けるように動きだし小さな小国に戻っていった。

　フビライ軍は後を追い城の中に進入して紫色の霧が吸い込まれている場所を見つけた。

　フビライ軍は洞窟の入口を見つけ中に紫色の霧が充満している事を確認すると洞窟の入口を頑丈に塞ぎ、この城を崩壊させた更地にした。