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7しわ寄せがきたんですが!

 蒼白な顔で、陛下に向き合うアイリッド殿下。

 まぁ、蒼白通り越して、透明になりかけている人が殿下の隣にいるけど。


「そんな…酷い」


 いや、何で男爵令嬢まで落ち込むかね?

 婿に来てくれるんだよ?

 好きなんでしょ?「彼個人」が。


<いいじゃないですか?……フフッ>


 男爵家に婿入りするか、それとも、王家の人間という肩書だけで、令嬢と結婚するか…。

 どちらにしても、殿下には何のメリットもないけどね。

 あるとしたら、メリッサ嬢の家だけだ。

 唯一の跡取りであるメリッサのため、殿下が男爵家に婿に入ったら、男爵家は存続出来る。

 しかも殿下は、廃嫡したとはいえ、王家の直系だしブランド力はある…けど。


 今回のせいで汚点まみれだし、正直、対外的にはどうかな?


 あー、でもメリッサ嬢が王太子と結婚してたら、家は親戚筋から養子縁組してたんだよね…跡取りいなくなっちゃうもん。


 そう考えると、メリッサ嬢って、別にいてもいなくても、男爵家から見たらどちらでもいい感じ?

 騒いでるのは本人と、その母親だけなんだろうなぁ…。


 ……やめた。


 他人の家の事だし、手を差し伸べる気もないし。

 アイリッド殿下とメリッサ嬢がどうなろうが関係ないや。


 まぁ、あれだけやらかしたんだから、落ちる方に一票だけどね。

 本当、家共々消えてもよかった……ゴホン。


 思わず黒い物が外に出かかり、誤魔化すために咳払いをする。

 それを見たエリオット様が、不思議そうに私を見ていた。


「どうかしましたか?」


 美しい仕草で小首を傾げる彼女に、頬が染まる。

 本当に、ゲンキンなものだ。

 一瞬で意識が彼女に向いてしまった。

 どれだけ彼女の事が好きなんだか…。

 自分の感情なのに、毎回制御に苦労する。


 流れる様に巻かれた金の髪も、深い泉の色をした緑の透き通る瞳も、全て美しい。


 ご本人は、何時も「シルビアの様な可愛らしい容姿が良かったわ!男のくせにズルいわよ!」と、可愛らしく頬を膨らませるが、自分の容姿が嫌いな私にとっては、エリオット様の方が何倍も素晴らしいと思う。


 一族の血の影響で、美少女とも見間違う容姿の自分など、男として受け入れられるものではない。

 しかも、身長も低く、ヒールを履いた彼女と並ぶと、あまり高さが変わらないのが、本当に嫌になる。


「それより」


 若干現実逃避していると、エリオット様が神妙な面持ちで口を開いた。


「アイリッドの件はどうでもいいですわ。落ちるなり、婿に行くなり好きにすればいいと思います。………ただ、お父様、現在お父様の直系の子供は私達二人だけ。すなわち……」


 エリオット様がそこまで言うと、陛下が申し訳なさそうに口を開いた。

 まぁ、言われる内容は予想できるかな…。


「エリオット、すまないが、次期王に…」

「嫌です」


 陛下が言い終える前に、エリオット様の言葉が被った。

 ……彼女の事だから言うと思ったけど。


「お父様!私、幼少期にお父様と契約いたしましたよね?シルビアの元へ嫁ぐから家は何があっても継がないと。私はサフィール家の姓を名乗るのを今までずーーーっと夢みていましたのよ?今更次期王など、なりたくはありません!一族内の継承権を持つ方々を当たってくださいませ!」


 側からみたら我儘でしかない発言だが、エリオット様が、ずっと王家という立場を煩わしく思っていたのを知っている手前、下手に口が出せない。

 それに、エリオット様がここまで言うのには理由がある。


「だが、エリオット。お前にも帝王学は一通り教えたはず。なんら問題はなかろう?」


 陛下のその言葉を聞いた瞬間、エリオット様の視線は一気に、弟であるアイリッド殿下へと向けられた。

 はっきり言うと、視線だけで人が殺せそうだ。


「この愚弟が!貴方がバカなせいで…。なぜ私が貴方なんかの尻拭いをしなくてはならないの!貴方と双子と言うだけで、こんなにも自分が嫌になったのは初めてよ!」


 そして、王女としては失格。

 彼女は両方の瞳から大粒の涙を流した。


「シルビアの……シルビィのお嫁さんにもぉなれないじゃない!」


 ここで愛称で呼ばれるとは、そこは想定外だった。

 と、それは置いといて、私の家では男子が生まれると、必然的に次の跡取りとして決まる。

 男子のみに受け継がれる血統魔法のせいだ。

 そのため、エリオット様が言った言葉が正しい。


 王位に着く彼女に対し、私は家を継がなくてはならない。

 婿として王家に行く事はできないのだ。


「エリオット様……」


 悲しみを堪えきれない彼女に対し、私はそっと彼女を自分に抱き寄せる事しか出来なかった。


<クソ王子…お前のせいだ!>


 その時、一人の男性から声が掛かった。

 今まで空気だった人物……。


「そう悲観するには早くないかい?」


 声の主はこの学園の学園長だった。

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