2勘違いもいい加減にしてほしい
過去作につき、文章が変なとこがあるかもしれません。
一応改稿しながら投稿しますが、寛大なお気持ちで読んで頂けると嬉しく思います。
「婚約破棄…とは?どう言う事でしょうか」
全く持って寝耳に水な話しに、私は眉間にシワを寄せた。
いや、ホント。意味が分からない。
ーーーあら、噂は本当だったみたいですわね?
ーーーシルビア様大丈夫かしら?
ーーーこれは、殿下は何を…。
しかも、無駄にバカ王子…もとい、アイリッド殿下が声を張り上げたせいで、会場中の視線が私達へと向いてしまった。
ザワザワと飛び交う言葉達。
殿下は王太子。
私は侯爵家の人間。
ただでさえ目立つのに、勘弁してほしい。
(あ、よく見ると斜向かいで父上が凄い顔してる…)
だが、そんな中バカ王子はこの空気をものともせず、勝ち誇った表情で口を開いた。
「貴様、私とメリッサの仲に嫉妬し、当て付けの様に男どもをはべらせているではないか!恥を知れ!この淫売が!」
王子にあるまじき口の悪さに、頭痛がしてきた。
淫売って……どこでそんな言葉覚えてきたんだ。
殿下の言う「男ども」とは…あれか?
王国騎士団の団長子息、王国魔法士団の団長子息。あとは、商業ギルドの元締めの子息に、冒険者ギルドの元締め子息……?
で、だから何?
国を将来支えて行く「仲間」として、あとは幼馴染みとして、彼らとの付き合いは長い。
今更そんな事を言ってくる殿下の頭の中はどうなっているのか…。
しかも、私が彼らと一緒にいても、なんら問題がない事をまったく知らない。
いや、もしかしたら幼少期に聞いていても、都合の良い事しか聞かない殿下は、右から左だったのかもしれない。
「はべらす…ですか?しかも殿下の口からその様な汚いお言葉が出るとは…嘆かわしい」
目を細め、呆れた表情で私は返した。
(あ、父上が額に手を当ててる…あーあ)
取り繕うのも面倒になり、私は盛大な溜息を漏らす。
モノを知らないにも程がある。
「なっ、貴様不敬であろう!王太子である私にその様な態度!」
「そうですわ!殿下に対し、何様ですの!」
バカ王子に便乗して、男爵令嬢まで口を出してきた。
ちょっと黙っていてほしい。
思わず目を細め令嬢に視線を向けると、ビクリと体を引き攣らせた。
その瞬間、怒りに顔を赤める殿下。
「貴様が私の気を引きたがっている事は分かっているのだぞ!そのために男どもを側に置いたのだろうが!だが残念だったな、私はメリッサと結婚する!貴様との婚約は破棄だ!」
「側に…と言うか、友人ですが、それが何か?私はやましい事は一切しておりませんし、まして殿下の気を惹こうと思った事など一度もございませんが?」
「はん!ものは言いようだな。貴様が側にはべらす男共は皆国の有力な家のものばかり、ハーレムでも作ったつもりか!」
は?ハーレム?………何を気持ちの悪い事を。
世界が逆さになっても有り得ない。
私に「そちら」の趣味はないのだから。
「意味が分かりません。何を根拠に?」
「貴様、まだそのような戯言を!証拠なら……!」
…………いい加減にしろよ?
怒りに任せ、ある事ない事捲し立て始めたバカ王子。
あまりの言いように、比例するようにどんどん私の心が冷えてゆく。
その時。
「いい加減になさい!」
ますます憤慨した殿下の声を遮るように、綺麗な声が響いた。
声の主は、父上の横で怪訝そうな表情をしながら傍観していた「彼女」。
「貴方、自分が何をしているのか分かっているのですか!」
怒りと呆れての混じった瞳で此方を見据える彼女。
正直、彼女に迷惑はかけたくなかったんだけど、仕方ない。
まぁ、彼女がこの状況に口を出さない訳がないのは分かってたけどね。
でも、本音を言うと、もう少しこの茶番を続けて、粗を出しまくったバカ王子をフルボッコにしてもいいかと思っていたんだけど。
私のみならず、「友人」達に働いた無礼をきっちり償わせないといけないでしょ?
本当、ボロ雑巾になるまでフルボッコにしてやるつもりだったんだけど……ある意味助かりましたねぇ、クソ殿下。