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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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その娘は涙を浮かべながらも、奉公先の貴族の無実を信じていた。


(オカダ男爵とな? あの岡田氏で話の前後で判断しても間違いないだろう・・)


「・・その男爵様がいつ頃取り潰しに?」


ここは敢えて惚けて対応すべきと太蔵は心に決めていた。


「・・つい4日前に正式に、、」


逮捕されて直ぐの沙汰となる・・余りにも手際が良いとしか考えられない。


余りの出来事で数日実家にて過ごしていたが、本日知り合いの者と気分転換に食事に付きあっていたが、たまたま太蔵等に巡り合ったようだ。


「そうですか・・その貴族様は昔からこの国の貴族様で?」


「いえ そもそもが勇者様一行のメンバーの一人なんですよ。ただ実際には魔王討伐のメンバーには参加していなかったようです」


 ふむふむ そこまでの情報は正しいな・・。


「ならば 我が祖国の出身と考えても良いのかも知れませんな」


表向きには召喚にて異世界人を呼んだとは国民には発表はしない。

あくまでも国内外から選抜されての勇者一行と報じられる。


自国の見栄と他国への召喚魔法の秘密性の為でもある。

なれどそんな話はやがて静かに一般人にも伝わっていくものである。


「して 今日の本題は別に何かあるように思うのですが?」


オカダ男爵の同胞だからと言う以外に、太蔵に声かけたのではあるまいと推測したのだ。


「・・はい、旦那様は本名が サトシ オカダと申します。もしあなた方の同胞の方でこの名前に覚えのある方がいらっしゃいましたら・・特に親戚関係の方なのですが、、、実は私のお腹の中には旦那様のお子が宿っております・・・」


 あっ、何故に気がつかなかった・・お気に入りの子にしては祖国の言葉を教えるほどの仲なのだ、当然寝物語の中で色々と教わった可能性がある事を。


「当然、この子は実家で育てるつもりではありますが、旦那様の親戚関係が判明すればこの子に会いに来てくれるのかもと淡い期待がありました。確か旦那様のご両親は幼い頃に亡くなったと聞いておりまして」


岡田氏は戦後のどたばたに於いて 捨て子で施設に送られて成長した筈だ。

彼女には幼い頃に両親が死亡したと話したのであろう・・。


「・・成る程、よく理由は分かりました、幸いこの年で交友関係は広う御座います。知り合いを色々と確認してみましょう。万一身元が判明した時の連絡場所は商会で?」


途端に彼女は嬉しそうに頷き、商会の場所を詳しく太蔵に教えてくれた。

その後しばらくして彼女と別れる事となった。



「ふぅ 人の縁とは不思議なものだのう・・・」


「そうですな 人は一人では無いと改めて思いますな」


「さて 宿屋へ転移しようか」


「それにしても先ほどは色々と苦労なされながら彼女との会話ご苦労様でした」


此方の言葉はわからぬ小田切であるが、太蔵の様子から何となく太蔵の苦労を感じていたのであろう。


二人は薄暗い路地筋へと移動していく。




「うおっと、お帰り・・」


久保田が突然の転移帰還に驚きながら出迎えた。


「お二人の様子はどうかな?」


「おう かなり元気になって回復したぞ、そろそろこの宿での限界ではないかな?外に出たがっている節があるからな」


念の為に日に1本中級ポーションを投与して来た。

問題は一人が歩行が一人が片手がまだ不自由である。


このまま転移で元の世界へ戻るにしても、どの年代に戻るのか不明過ぎる事だ。

医療の発達した年代なら問題ないが、最低どの年代に戻っても二人が生活できる状態にはしておきたい。


なれどその一歩は今日解決できる筈と3人は二人の部屋へと向かう。


「「おっ ()()、お疲れ様!」」


にこやかに出迎えた二人であった。


「えーと その呼び方はどうにかなりません?」


太蔵は二人の呼び方に困っていた。

少し前から高弟二人が太蔵を呼びかける言葉を面白がって採用していた。


「いやいや 姿・形も私達より50年以上は人生経験がある太蔵君にはぴったりの筈だが?」


絶対面白がっての採用だと太蔵はため息をつく。


高弟二人も笑いをかみ殺しながら頷いていた。




「・・そうそう、例の品入手出来ましたよ」


途端に二人の顔が真顔になり驚いている。


「・・嘘だろう 1本白金貨1枚必要な薬が、、どの様な算段で?」


彼等は太蔵が1本1千万円の薬を買う余裕などないと見ていた。

自分等でも上級ポーションまでしか用意していなかったのだ。


下級貴族は左程豊かな生活までは望めない。

無論 一般人にとっては羨望の生活ではあるが、土地持ちではない下級貴族は暮らしぶりは精々知れている程度なのだ。


そんな高額な薬を予備で持つより、日常の貴族としての体裁を保つ為に使うほうに向けられる。


「よくぞ 手に入ったものだ・・どの様にして?」


実際は2本で3千万にて購入したのだがな・・余計な負担になる事は言わないが・・。


「そんな詮索より まずは飲んでみて下さい」


2人に小瓶を手渡す。


「「・・間違いない、、この色 匂い・・特上ポーションに、、、」」


暫く その小瓶を黙って見つめていたが、意を決意して二人はそれを飲み干す。


「「う うぉぉぉー--」」


生態が元に戻る痛みを伴い二人の欠損していた指がゆっくりと復元されていく。


「「はぁ はぁ・・も 戻ったぞ!」」


2人が元に戻った指を見つめて泣き出さんばかりに喜び出した。


太蔵等3名もホッとしたようにしきりに嬉しそうに頷く。


「良かったですね お二人共。おめでとう」


その夜は二人の全回復を祝って賑やかな宴会が催された。





「「老師、済まぬが我等に簡易鎧類の先行投資をお願いする」」


太蔵は気にするなと何度も彼等を説得したのだが、律儀な彼等はダンジョンにて魔物を退治して少しでも金貨を稼いで返すと聞かないのだ。


近場のダンジョンは中級ではあるが、上級に限りなく近いダンジョンと有名な曰く付きの場所だ。

その気になって下層に潜ればかなりの金額が確かに稼げることになる。


二人の勢いと弟子たちのレベルアップの続きを兼ねて太蔵等はダンジョンへと入っていく。



「「おう 何だあの二人はあれが上の中クラスの働きなのか・・」」


今迄二人だけでのダンジョン攻略しか知らない高弟達は、リハビリを兼ねての二人の動きにもついて行けずに困惑していた。


「レベル10違うとはこんなにも違いがあるものなのか・・」


面白い様に魔物を凌駕する二人はまだ全力ではない。


しばしの貴族生活にて体や感は鈍っている筈だが、無人野を行く勢いである。

それを呆然と見つめては自分等に発破をかけて高弟達も魔物目指して突撃していた。


3日間のダンジョン生活が終わり全員が一旦帰還していた。





「「ははは まだ俺たちも捨てた物じゃないな」」


店先に積み上げられた魔石類を前に、商人は勘弁してくれと頭を下げていた。

とても 手持ちの金が足りないと泣き言が連発する。


その中で二人は満足そうに笑い合っていた。


「凄いんだな上の中クラスは・・・」


太蔵も厳密には上の中クラスにカウントされる、それを聞いていた二人がそれは違うと言い出した。

建前上はそうかもしれないが、自分等二人で太蔵と闘っても勝てぬ と断言したのだ。


それを聞いて弟子の二人が自信を少し無くしたようだ。

この世界に来てレベルアップを繰り返し、それなりに自信が出来ていたが元貴族との差に驚き、さらにその上の太蔵の存在に改めて自分等の師の強さを認識したのだ。


「「この世界は皆 バケモノ揃いだ」」


だが、そんな太蔵も転移して来た田川に押されていた事実がある。

いかに自分等は井の中の蛙だったかと思い知らされた3日間でもある。



「うむ老師殿、ここは少し物足りないな、上級へと移動しようではないか」


田嶋氏等はすっかり昔の勢いを取り戻したようだ。


高弟二人はその言葉にコクコクと頷くしかなかった。

太蔵も苦笑いでそれに賛同した。


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