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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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太蔵等を捕えようと近寄って来た者達をあざ笑うかのように太蔵等は消え去った。



「「うぉぉー-」」


突然の光と共に何人かの人影が宿屋の部屋に出現した。

不意を突かれて高弟二人が思わず声をあげてしまった。


慌てて二人は口を閉ざすと光の中から現れた人物に刮目する。


 老師だ! 久保田が早い帰還に顔を崩して微笑んだ。


 うん? 他の二人は誰だ・・。何やら様子が、、、。


その疑問は直ぐに解消される、ひどい傷・・いや拷問の跡か?

詳細は不明だが手当てせねばならぬ、二人は動いた。

太蔵から二人を受け取り自分等のベットに運び込み寝かした。


 「・・こいつを早く飲ませてくれ」


太蔵の手に2本の小瓶が握られていた。

それを受け取り怪我だらけの二人に与える。


いつも自分等が飲んでいる薬と少し違う気がする。

小田切の問いに老師が答えた。


「中級ポーションだ 今手に入る中ではこれが最上品だ」


淡い光が怪我人を包む 驚くほどの速度で回復していく。

なれどそれ程の薬でも元に戻らない箇所があった。


田嶋氏の左手、岡田氏の右足それぞれの指が全て欠損していた。


「老師 この怪我の様子はもしかして・・・」


「・・そうだ 拷問跡だ」


高弟二人は唸りだす。


「もう一週間早かったら、、申し訳ない事をした・・」


太蔵は珍しく落ち込んでいた。


「・・老師、そんなに落ち込まないで下さい。命は助かったのです、これに勝るものはありません」


小田切が丸くなった太蔵の背に声をかけた。

久保田もそれに同意してまずは怪我人の体力回復に全力を注ぐべきと注進する。


その言葉にようよう太蔵も顔を上げて頷いていた。


「・・そうだな、命さえあれば後日元に戻す方法もある」


それが何を指しての意味なのかは高弟二人はその時には理解できていなかった。

顔や体の腫れもかなり引いてきた、薬の効能が信じられない程の効果を発揮したようだ。


「後は寝かして体力回復に努めよう・・」


「所で老師、どちらが田嶋さんなのですか?もうお一人の方は?」


 そうか バタバタで満足に弟子たちに説明していなかったな・・。


ようやく太蔵は少し冷静さを取り戻していた。




「成る程、岡田さん?ですか、同じくこの国から無理やり召喚された方なのですね・・」


ベットに横たわり深く寝息を立てる二人の顔を順にみる弟子たちであった。


「しかし・・勝手に召喚しておきながらこの仕打ちはひどすぎますね」


この国のトップに対して不満をぶちまける。


「ああ・・このままでは絶対に済ませない」


何やら決意した太蔵の顔は怒りに震えていた。




翌日遅くに目を覚ました二人は太蔵に助けられた礼を何度も繰り返した。


「もう止めてください、全ては私の至らぬ行動が原因でお二人にご迷惑をお掛けしたのです。謝るのは私の方です」


その言葉にようやく礼を言うのを止めたが、しげしげと太蔵の顔を覗き込みその理由を問うた。


「どこからお話すればいいか・・」


先ずは少しでも食事をして体力回復に努めましょうと、宿屋の女将に胃に優しい料理を二人前作ってもらうように交渉する。


ついでに昨夜から知人が泊まり込んだことを報告して、昨日の宿泊代と合わせて2人部屋を一つ数日手配した。


部屋に届けられた食事を二人は美味しそうに胃に流し込む。

久しぶりのまともな食事に満足している様だ。


中級ポーションのお陰か、二人は独自にトイレに行けるほどには回復した。

もう数日宿にて過ごせば歩く程度は問題がないと思われる。


その日も一日二人は寝て過ごし、体力の回復に努めていた。


夕方の食事を終えたころに部屋に訪問して、太蔵はこれまでの経緯を二人に説明する。


「えーと、、良く分からぬがそんなことが本当にあるのだね・・」


「しかも あの田川が其方の世界に乗り込んで来たなんて・・」


「いやいや 太蔵君が再び転移でこの世界に現れる方が・・」


何を話しても二人には驚きの告白となる。

次から次に話題が三人にて途絶えることが無かった。


そんな上機嫌な太蔵の顔を盗み見ては高弟二人は思わず釣られて笑顔になっていた。


翌日太蔵は小田切を連れて首都に情報収集の為に訪れていた。

久保田には申し訳ないが田嶋氏等の護衛をお願いした。


首都の近くの森林に転移した二人は何食わぬ顔で門の行列に並び、二日分の滞在金額を別に門番に支払って首都の中へと入り込んだ。


まず何度か行った事のある薬屋にて上級と中級のポーションを数本購入する。

これだけで金30枚が飛んでいく、、。


欠損修復に有効な特級ポーションは特別な店にしか用意していないとの事だ。

それに価格が1本白金貨1枚(1千万円に相当)するらしい。


裏筋の少し小汚い店へと太蔵は入り込む。

この店は裏販売の闇事業にも手を染めているらしい、盗品関係も扱うと昔騎士のアレックス氏から聞いていたのだ。


カウンターにいる目つきの悪そうな店主が太蔵等を険しい顔で見つめて、何か売り物か?と短い会話を発した。


 この品だ 短く答えて太蔵はカウンターに小袋を置く。


その中身を覗き込み その男は絶句した。

改めて手に取り中に入っていた宝石関係を見入る。


散々眺めて手に取り何度も見返して元の小袋に仕舞いこんだ。


 ここではなく奥に入れ とカウンターの仕切り板を持ち上げて先に中へ入っていく。


二人は奥へと招き入れられた。


小部屋の一角に椅子があり先にその椅子に座り込んでいた。

改めて目の前のテーブルに小袋を置いた太蔵等も椅子に座り込む。


「何処であんな物を手に入れた?今専門家を呼んでいるから少し待て」


「まさかその専門家は怖い兄さん方じゃないよな?」


太蔵は笑えぬ冗談を相手に伝えた。 彼は苦笑いをしながら。

それに対して 其方の出方次第で裏口から参上するが それが好みか?


相手も笑えぬ冗談を返す。


「その宝石の出時は話せないが、さる貴族が金に困って金策の為に手放すがその仲介に儂が選ばれた とだけは話しておく」


いけ しゃあしゃあと太蔵は嘘を並べた。

何やら難しい顔をして黙ってその話を聞いている。


「・・場合によっては次回もあるのか?」


また同等品の斡旋がある可能性を聞いたようだ。


太蔵は 可能性はある と短く答える。  


何やら一人で納得したのか 小さく頷く店主だ。

突然裏口が静かに開かれて誰かが入って来た。


何やら目先のきく小男が店主に軽く挨拶をしてその隣に座ると、、。


「これか・・?」


テーブルの上の小袋から宝石が3個転がりだす。途端にその男も目つきが変わり出す。

1個1個を慎重に確認し始めた。


小窓から入る日の光に丁寧にそれをかざしてその乱反射を見つめていた。


「馬鹿げている・・こんな品など今まで見たことが無い、、」


宝石は大き目のダイヤが1個 それなりのダイヤが2個の鑑定であった。


「これは何処の店のカットだ? 完璧なカットだ・・」


深いため息と共に手を組んで唸りだす。


「で? いくらの値をつけるんだ?」


太蔵が畳み掛ける、、途端に二人が何やら小声で相談を開始する。



「結果から言う この小さめのダイヤ2個で白金貨3枚だ。もう一つのダイヤは値が付けられん、預かる事は可能か? この場の一応価格は白金貨10枚を考えているが、仲間内で処理すればさらに価格のアップは可能ではあるがな・・」


どうすると 店主は太蔵を睨む。


「・・すると合計で白金貨13枚と言うのだな?」


そうだ あくまで最低価格だが、、店主は今はこれ以上は無理と態度を硬化した。


「現ナマで揃えてくれるのだな?後日は断るが・・」


「おお・・売ってくれるか?少し待て!」


店主は奥へと入り込む。

代わりにもう一人の男が軽くため息を吐きながら太蔵に尋ねる。


「なぁ このダイヤのカットをした者の名を聞いてもらえるか?手間賃は出す」


それに対して太蔵はゆっくり首を振り、無理だと伝える。

途端に打ち歯牙れた姿で落胆する様子が見られた。


「・・待たせた、確認してくれ」


テーブルの上に白金貨13枚を並べた。

それをゆっくりと数えて 太蔵は店主に・・。


「別口だが 特級ポーション2本手に入らぬか?」


「・・薬は今五月蠅くてな」


軍がなにやら動きがあるらしくポーション関係を買い占めているらしい。


「どこかの国と?」


「うーむ そうらしい、国政に注力すれば良いものを・・最近も何か城で騒ぎがあったらしく兵達が走ずり回っているからな・・」


「ほう 城で?何があったんだ?」


「どうやら重犯罪人が転移魔法で逃げられたと言う話だが、何処まで本当かは分からん」


ほう ほうと太蔵は話を聞いていたが、これ以上情報は入らぬと立ち上がろうとする。


「待ちな 確かに高額ポーションは欠品気味だが、2本で白金貨3枚でどうだ?」


成る程・・通常より5割り増しか と苦笑いを浮かべた。

白金貨3枚をスーッと店主の前に差し出す。


ニヤリと店主は笑い裏の棚から何やら小瓶を2本持ってきた。


「一応 鑑定をさせてもらうぞ」


ダンジョンにて以前入手した鑑定書を手に持ちその小瓶を鑑定する。


「間違いないな いい取引が出来たようだ」


太蔵と店主は互いに笑いながら握手を交わした。


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