96
当面は基本2日毎に投稿予定です。
太蔵は静かにドアに近寄り内の様子を伺う、太蔵の耳に届いてきたのは男女の甘い声での話声であった。
「ふふ ねぇ今回のご褒美にこの邸貰えないかな?」
「それは あまりに無理だろう、単に役目を果たしただけだしな・・」
「あら 解決に一役かったのだからそれなりの褒美が欲しいわ」
「・・それは上の判断だからな でもかなりの高ポイントが稼げたよな」
「高評価で報酬が沢山もらえたら結婚しようね」
「・・そうだな、どれだけ褒美が貰えるか楽しみだしな・・・」
「あっ・・そこ、、いいわ、、、ふふふ」
後は聞くに耐えない言葉が続いてくる。
この女の声は確かに記憶がある・・田嶋氏の下女の声に間違いあるまい。
すると男の方も屋敷奉公の男であると思われる。
何となく読めてきた・・太蔵は当時を思い出していた。
この二人は田嶋氏の動向を監視するスパイで間違いあるまい。
田川氏も当初から監視が入っていたと話をしていたな・・。
全てはあの糞女による差し金であろう。
そうか・・すると田嶋氏に同行して従者として城の内部を探った事もバレていた?
太蔵は田嶋氏等を巻き込んだことを後悔した。
あの女の方が役者が上であったのだ・・。
あの女は最初から異世界人を信用していなかったのだろう と遅ればしながら気づく。
無性に自分にもあの女にも嫌気がさしてきた。
静かにドアノブを押し込んで鍵がかかっていない事を確認した。
気配を消して内へと入り込む。
行為に夢中になっている二人には太蔵の進入には気づくことは無かった。
静かに汚い尻を向けている男の後ろにたどり着くと、首筋めがけて一撃を入れる。
忽ち男は女へ倒れ込んだ、それを何か勘違いしたのか女が嬉しそうな声を上げる、素早く女に近づくとその喉元に冷たいナイフを突きつけた太蔵である。
「・・静かにしろ 騒ぐと殺す」
太蔵の恐ろしい殺気に反応して女は甘い空気から正気に戻り震え出した。
更にナイフを少し進めて金属の冷たさが伝わるようにした。
「だ 誰なの・・お願い、、助けて、命だけは、、、」
「儂の質問に答えたら考えてやる・・分かったら頷け」
女はすぐさま小さく何度も頷いた。
「まず・・田嶋氏は何処にいる?」
「・・捕まったわ・・犯罪者として、、」
「それはいつの話だ?」
「い 一週間ほど前よ、、、」
一週間前?しまった、弟子のレベル上げの前に確認していたならば・・
太蔵は又しても後悔するのであった。
「お前らは田嶋氏の監視要員として派遣されたんだな?」
彼女はまたしても小刻みに頷いていた。
「・・誰の指示だ?」
「ち 直接には会っていないけど、、女王陛下の指示だと・・」
「全ての異世界人達にも監視が?」
「そう、、聞いているわ、、お願い助けてくれるならどんな事でも、、、」
「・・黙れ 質問だけに答えよ」
小刻みに頷いて泣きそうな顔になる。
「ここにいたメイドや従者たちはどうした?」
「つい 数日前に全員解雇されたわ・・」
「なぜ お前たちはここにいる?」
「い 一応 管理者が居ないと不用心でしょう」
「・・最期の質問だ 拘束された田嶋氏の居場所は分かるか?」
「わ 分らない、恐らく城の地下の拷問室だと思う、兵達が話していたのを聞いて・・」
「・・完了だ ご苦労さん」
太蔵は指先に力を込めて深く真横にナイフを動かした。
驚いたような顔で女は自分の喉に手を当てた、だがごぼごぼとあふれ出てくる血液が忽ち一面に広がりだして女は声も出せずに苦しんていたが、やがて静かに息を引き取っていく。
そんな女の死にざまを見ても太蔵は眉一つ動かさなかった。
続いて男の背中から心臓を目掛け深くナイフが入り込んでいた。
男が一瞬反応したがこれまた静かに力が抜けていく。
「地下の拷問室か・・留置場の下にあると聞いた事があるな・・」
留置場の場所自体は知っていた、ただ中に当然入った事は無く詳しい事は知りようがなかった。
「確か あの場所には番兵が2名常に立っていたな・・コーナーの隅が死角か、、」
太蔵は場所を思い浮かべ城内へと転移する。
「・・あの場所か」
留置場の入り口に予想通りに2名の警備兵が立っていた。
コーナーからわずかに顔を出して様子を伺い魔法袋に手を置いて何やら取り出す。
丸い球を10個程掌に入れてそっと指先で狙いをつけた。
続けて2回指先が動き何やら猛スピードにて飛んでいった。
途端に番兵の2名が声も出さずに崩れ落ちる。
太蔵は辺りをもう一度確認してゆっくりと倒れている兵に近寄り確認した。
丁度眉間の場所にその丸い物体はめり込んでいる。
「ふむ 指弾にはやはりパチンコ玉が最適か・・・」
倒れている兵達を跨いで地下へ続く階段へと足を進ませた。
本来倒れた兵達を始末してから動くべきだが、時間の節約と気分が晴れない感情に包まれて太蔵は無視して歩み始める。
階段の下は入り口が見えていた、壁に身を寄せて静かに中を見る。
留置場で間違えない、兵が廊下の片隅にある机にて何やら書類を作成しているのが見えた。
小さく靴音を響かしてみた、それに反応して兵が此方を見る と同時に太蔵の指から弾かれた物体にてそのまま横を見たまま兵は机に崩れ落ちる。
(この奥に更に階段がありそうだな)
音が出ぬように通路を歩き出す。
拘置所は沢山の囚人が入っていたが、誰もつかの間の惰眠に陥り、少しでも体力を回復しようと努めているように見えた。
(皆 かなり拷問に近い取り調べを受けたみたいだな)
誰も何かしらの傷を体に受けているように見える。
疲れ果てて生気の無い顔しか確認できない。
突き当りに更に地下へと続く階段が確認できた。
太蔵は何も考えない素振りでその階段を下りていく。
拷問室だ・・いろいろ人をいたぶる道具が目に入った。
部屋に入ってすぐ横に小部屋が設置されていた。注意深く中を覗くと2名の看守が仮眠中であると判明。
ゆっくりとドアを開きまたしても指弾が2発・・。
恐らくそのまま仮眠から永眠へと移行していく。
ゆっくりと拷問室全体を見てみる。
一番奥に鉄格子の個人部屋が3つある。
その内の2つに人が居る事が見えた。
(どこかにあの拘置所を空ける鍵が・・)
仮眠室にはそれらしき物が確認できない、ふと倒れている兵を軽く蹴飛ばして向きを変えてみた。
ガチャ ガチャと何やら金属音が小さく響く、近寄り腰にぶら下がっていた何本もの鍵を見つけることが出来た。
そのカギを手に一番奥の拘置所に近寄り鍵穴に順番に合わせていく。
軽い金属音と共に鍵がはずれる音がする。
中に入り鎖で手足4本を各結ばれて動けない人物に近寄って顔を覗き込んだ。
薄汚れ血だらけで顔も拷問で腫れあがっているが、この顔には見覚えがある。
田嶋氏だ 生きていた・・ 思わず太蔵は涙がこみ上げてきた。
田嶋さん 私です。 分かりますか? 助けに来ました。
彼の耳元で静かに声を出す。
何度目かの呼びかけに彼はようやく意識を戻し、腫れて見えぬ目を必死に開いて確認しようとしていた。
誰だ? 貴方は?
ようやく声を 拷問により潰れた声が低く響いた。
太蔵です 三橋 太蔵です。貴方を助けに来ました。
たいぞう・・くん? いや 彼はもう この世界には・・・。
詳しい話は後でします。隣の拘置所にいるのは岡田さんですか?
そう・・だ・・彼はおかだ・・だ
了解 まずはこの鎖を外します。
太蔵は鍵を合わせて鎖を外そうとしたが、持っている鍵では反応しない。
別の誰かがカギを持っているらしい、、えーい 探す時間がない。
太蔵は体力スキルを発動して鎖を握りしめると、思い切り引きちぎり始めた。
次から次に鎖を思い切り引きちぎり田嶋氏を自由にすると、隣の拘置所に移動する。
岡田氏にも同様に 鎖を引き千切る。そのまま肩に岡田氏を担いでまた田嶋氏の元へと戻る。
二人共しっかりして下さい。今から脱出しますよ。
その時上の方が騒がしくなる。
しまった、敵が感づいたようだな・・。
何やら大声と共に階段を速足で下りてくる複数の人数の音が大きく響いた。
「田嶋さん 私に掴まって下さい、絶対に離さない様に!」
田嶋氏が弱々しく なれどしっかりと抱き付いた。
太蔵は片手で岡田氏を抱き上げ、もう片手で口に咥えた転移の魔方陣の羊紙に手を置く。
「「いたぞ!奥に怪しい男が居る!!」」
兵達が太蔵めがけて走り込んで来た。
「転移!!」 こもった声が響き渡る。
間一髪、太蔵を捕まえようとした兵の手をあざ笑うかのように太蔵等3名はその場から掻き消えていった。




