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元の世界に戻れるかどうか今後の情報収集に全て関わってくるだろう。
もしかしたら転移に関することはかなり困難な情報収集となる可能性がありそうだ。
「太蔵君 そろそろ寝たほうがいいよ明日もきついぞ」
田嶋の言葉にふと我に返る、今日の疲れを明日に残してはいけない。
彼の言葉に甘えて自分のテントに引き上げる太蔵だった。
その後3日間第一層を攻略して、次の第二層へ下っていく。
第二層では4日間粘り地上へと戻り着いた。
「ふう 第二層は一層とはまた別物だな…」
岡田が心底疲れた顔で無事に戻れたことを感謝している。
「まったくだ これはレベル上げが最重要だな」
田嶋も魔物の強さに半分悲鳴を上げていた。
「お陰で 個人レベルも上がりましたね」
太蔵はこのダンジョンにて一週間で6レベル上げることに成功した。
他の二人も29に到達していた。
「太蔵くんは26かい? 俺達はようやく29だな」
この世界ではレベル30に到達すると、誰からも一目置かれる存在となる。
アレックスからその日は御目出度うと祝辞の言葉をかけられる筈だ。
「はは 俺達はチートだからな 素直に喜んで良いものかと」
田嶋は喜びながらも何か割り切れない気分でいた。
この世界の人よりほぼ倍以上の速度でレベルがあがっていく、しかも上がるたびに各数値の上昇もこの世界の人より大きく伸びていく。
そのために彼等がこの世界に無理矢理呼び込まれた目的なのだ。
「因みに今勇者はどの程度のレベルなんですか?」
太蔵はふと疑問を感じた。
「さて…この地を出たときが半年前で50だと聞いている。その後各地でレベルを上げながら魔王の領域に近づいている筈だ。」
半年前で50ですか…当然対魔王に向けてレベルを上げている最中であろう。
「うーん 確か半月前に70に到達したと報告がありましたね」
アレックスが水筒の水を飲み干しながら教えてくれた。
レベルが80までいけば歴代の勇者の中でも上位クラスになるという。
70まで到達すると1レベルを上げるために信じられない魔物の数を倒さねばならない。
どのレベルで見切りをつけて魔王戦になるかが勝負の分かれ道となる。
さて、人の心配より明日の自分を考えねば、何としても第2層の魔物を余裕で倒さねば次に進めないぞ。
更に4日後に念願の太蔵はレベル30に田嶋等は31に上がり今回はここまでと一旦城に戻る事になる。
「さて 城に帰れば楽しみが待っているな」
城に帰る道すがら二人が急にニヤニヤと笑いながら語りだす。
「…何か待っているのですか?」
何となく二人のその態度に不信感を抱き尋ねてみる。
「「あはは まぁ 城に着けば分かるよ」」
そう言って太蔵の背中を二人は軽く叩いて先に急ぐ。
「ふう 久しぶりのベットだ、この硬いベットでも天国に思える」
野営の連続に体も大地に慣れてきた、城の硬い簡易ベットでも上等の布団に感じる。
練習場の隅にある井戸で旅の垢と汚れを落として夕食まではまだ時間があるので、疲れを癒やすために横になっている。
ステータス板を見て改めて今回の遠征の成果を確認してみた。
「驚いたな 当初の数値とは完全に別物になっているな…」
この世界に来た時の数値から、体力・俊敏性・耐力・魔力等全てが桁外れな数値が並んでいた。
地球に戻ればオりンピックで多種目にて金メダル確実であろう。
裏を返せば 人外な存在 に近づいた事になる。
喜ぶべきか人外となり悲しむべきか…。
どちらともつかない感情に少し悩む太蔵である。
「それより問題は今まで不明だった新スキルの存在だな…」
当初より太蔵は 耐力増強スキル とは別にもう一つ成長スキルとして別枠の不明スキルがあった。
それが今回レベル30に達して突然ステータス板に現れたのだ。
「劣化版 創造魔法」そう新スキルは書かれていた。
皆にこれは何かと相談したが、アレックスも田嶋氏等も知らぬと困惑していた。
あまり聞かないスキルらしい、只何となく想像出来るので皆から何か作ってみろと勧められ、ならばと剣を作ろうと日本刀をイメージしながら魔法を発動したが エラー となりはじかれる。
詳細を確認すると自分のイメージした刀は使用魔力が不足して作製不可となった事が判明。
ならばこの世界の剣であればと再度イメージすると、体内からかなりの魔力が引き出される違和感と共に一振りの剣が出現した。
手に取り眺めてみたが、何処にでもある兵士が使うごく一般的な剣であると判明。
なれどその見返りにほぼ体内の魔力が消費していた。
皆で協議の結果、おそらく新スキルの前に書かれている 劣化版 が問題であろうと結論がでる。
このままではかなり作製に制約があるスキルではないかと、だが今後レベルが上がって 劣化版 が外れるか、高レベルになり魔力が十分に利用出来ればそれなりの品が出来るのではと一致した。
取り敢えず今は大した事ができないが様子を見ることになった。
「良くわからないスキルだな…」
ベットに横になったままステータス板を見つめ太蔵は呟いている。
悩んでいた太蔵は突然のノック音に我に返る。
突然ドアがノックされ一人の女性が入って来た。
長身で清楚な顔立ちの美少女いや自分より少し年上かも…。
時たま城の下女と思われる女性が来ては洗濯物などを引き取ってくれたが、その女性と比べては失礼だが、明らかにこの女性は格が違うと感じられた。
そんな女性が突然訪問してきて太蔵は少し戸惑いが生じていた。
その女性は更に太蔵が驚く事を述べた。
「ハジメマシテ 私ハ ラーシャ トモウシマス」
に 日本語? 辿々しいが確かに日本語としか聴き取れない。
「私ノ コトバ 可笑シイデスカ?」
呆気に取られしばし黙りこくったユウゾーに追い打ちの言葉が返ってきた。
「いえいえ 分かります、少し驚いたので…」
慌てて言葉は通用する問題ないと安心させる。
強張った顔の能面に近い顔の表情が少し和らいだ気がした。
いや 西洋風の顔立ちだから石像彫刻の様な顔だな…。
要件を尋ねると今日から部屋が変わるので付いてきて欲しいとの事だ。
その後何言か言葉を交わしたが、彼女に見とれて狼狽していた太蔵はつい適当に言葉を合わせた。
部屋替えか…恐らくレベル30に達して待遇改善が見直されたと判断した、少ない荷を纏めてラーシャの後から付いていくと、二階の移住区へと導かれていく。
この地区は今までとは違い落ち着いて清掃の手が良く入れられている。
前を歩くラーシャを失礼のない程度に観察していた。
華奢な感じがしていた彼女は歩く姿にスキがなく、何となく気になり太蔵は彼女を見ていたのだ。
よく観察してみると彼女は決して細い体ではなく、適度な筋肉を隠し持っている体型で引き締まっているが為と、恐らく着痩せする体質である事に見かけは華奢に見えたのだと判断した。
「あっ」 前方の角を曲がった時に極小さな声が彼女から漏れた。
何事と前方を見ると誰かが小さく此方に手を振り、今まさに部屋に入っいく瞬間であった。
田嶋氏だ…。思わず片手を上げて挨拶をする。
彼は僅かに微笑んで部屋へと消えていく。
そうか彼等も部屋替えなんだなと理解して、近くに彼等がいる事の安心感が浮かび上がった。
田嶋氏が消えた部屋を通り過ぎ、二つ先の部屋でラーシャが止まり、鍵を差し込み扉を開ける。
ドアが開かれ案内され太蔵は中に入った。
「あ 明るい」
それが太蔵の第一声であった。
今までの部屋は窓がなく、只寝る為だけの部屋であった。
それに比べてこの部屋は生活する為の部屋であると主張していた。
窓からは陽が差し込み壁は白を基調とした部屋であり、トイレの設備も付いていた。
部屋自体は10畳程度だが大きな柔らかそうなベットと簡単な机に椅子、服も仕舞える作りおきのタンスも備えていた。
窓から城の中庭が見え、色とりどりの花が眼下に広がっている。
窓を少し開け新鮮な空気を吸い込み、おもむろに吐き出す。
花の匂いが漂ってきた気がする。
気に入った いままでとは段違いの部屋だ
太蔵はラーシャに礼を言うべき振り向く。
「有難う ラーシャさん ここはいい部屋・・だ?」
それ以上は太蔵は言葉が出なかった。
振り向いた太蔵の目に入ったのは、一糸も身に纏わぬ裸体のラーシャがいた。
当面一週間に一回の投稿予定になります。




