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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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アナーシャは組織から抜けると宣言をする。


どうやら彼女の希望通り事が進む方向に纏まりだした。

それに気をよくした彼女は上機嫌に部屋から出ていく。


「・・何か あんな感じで組織から出て行けるものなのか?」


「・・彼女は少し特別なのかもな」


高弟二人は呆気に取られて部屋から出て行く彼女を傍観していた。


「・・なれど 当面は彼女の動きに監視が必要でしょうね」


小田切はぼそっと呟く、他の二人もそれに頷いていた。




「それより昨夜のことをもっと詳しく教えていただきませんか?」


大宮も気を取り直して太蔵に昨夜の対決の詳細を聞きたがる。


「「だったな・・そちらに話を戻さねば、、」」


高弟二人も本題に入るべき太蔵と向かい合う。


「うん? 何から話せばいいのかな」


太蔵はのんびりとお茶タイムを楽しんでいた。


「何からって、、そ そうだな、まず何故に急に動きが良くなったんだ?それを聞きたい」


昨夜田川に追い詰められていた太蔵が、それまでとは違う動きで逆転したきっかけを知りたがる。


「ああ あれは儂のスキルを発動した それだけの事よ」


すました顔で当然な事と太蔵はにこやかに笑う。


「だから それがおかしいだろう?今まであんなスキルなど見たことがなかったぞ」


この3人にしたら初見であのスキルを見たことになる。


「ふむ だが今まで使う必要がなかっただろう?」


その言葉に思わず皆が口を閉ざす、今までの老師との付き合いを振り返り始める。

言われた通りあのようなに追い詰められた太蔵は今までは見たことが無かった、唯一前回の田川との対決時には魔石による魔法発動にて彼を退かした事ぐらいだ。


「実はな あの前回の戦い時に彼に布石を打っていたのだがその意味が分かるかな?」


怪訝な顔で考え込む3名だ。


「・・もしかしたら、前回は魔石に注意をわざと向けさせていたのですか?」


小田切が初回対決時の意図を察したようだ。


「うむ 相手が田川氏なら正直レベル差がありすぎた。彼は魔導師の為に確かに格闘技は得意ではないが、魔物と長い間戦い抜きそこそこの動きは出来ると儂は思っていた。事実実戦にて必要に追われて彼はそれなりの動きを習得していたんだ。その為に儂が苦労していたのはご存じの通りだ。そして彼の思い込みを利用して初回は撃退することが出来たと言う事だ」


「それは・・魔法やスキルはこの世界では再現できないと言う事を利用したと考えればいいのですか?」


「正解だ。彼はこの世界に戻り、恐らくその点を再認識したと思う。だから儂を倒すためには圧倒的なレベル差による体力とスピードだけで行くしかないと思ったはずだ」


「・・所が老師はどう言うわけか魔石を持ち込み、その力で魔法を発動して一泡吹かせる事に成功した・・となるのですね」


「うん 魔導師である田川氏にとって、魔法は自分の一部になっていた筈だ。不可能と諦めていた魔法を魔石さえ手に入れれば再現できる。そう思った田川氏は魔石と言う存在に意識が持っていかれたことは容易に想像できるだろう」


「・・ええ 逆に言えば老師がその方向に誘導したとも・・?」


「ははは 大宮さん鋭いね。続いて正解だ」


「だが老師よ、何故にそんな手間がかかる事をしたんだ?初回からそれを利用して倒せばよかっただろう?そうすれば入院など言う痛い目にあわなかったのに・・」


「はは 無論それも当初考えていた。だがお前たちも感じたと思うが、どうにも田川氏と会話が当初かみ合わないと言う現実に少し路線変更をしたのさ」


「・・それは もしかして再度話し合う事を期待しての?」


「うん 小田切の考えた通りだ。あくまで勘であったが、田川氏とはもう一度対決しそうな気がしていたんだ。ならば次回の対決時の保険と思い、魔石の存在に意識を向けさせて他の方面を手薄にしたかったのだ」


「・・つまり更に切り札として、スキルを用意していたと?」


「またまた大正解だ。その布石により彼は魔石に多大の意識を向けて、そして魔石を入手した事により完全にハイ気分になり、あまりほかの方に意識が向かなかったと思う」


「つまり油断しきった状態であった時に、突然老師のスキル発動があった・・」


「だな 推測するに彼は一瞬パ二くったと思うんだ」


「・・そりゃ 思いもよらぬ事に直面したんだからな、、当然だわ 隙も出るわな・・」


「その通りだ、お陰で儂は生き延びた事になる。切り札は最後の瞬間まで隠すべきと言う事だな。そうそう お前たち参入を禁じたのにスキル発動して参入しようと思っただろう?一瞬儂はあの時は焦ったぞ」


「「あっ・・確かにあそこでスキル発動したら田川がスキルの実存に勘づいてしまうのか・・」」


太蔵の助っ人に入ろうと二人が動き出した時に、彼の一声で二人は止まったのだ。

あのままスキルを発動されたら、最悪太蔵は田川にスキルの存在を気づかれ敗れていた可能性が高かった。


「「えーと 老師申し訳ない・・」」


そうは言っても 見るに見かねての参戦の決意であったろう、高弟二人の必死の決意に感謝はすれど咎める気持ちなどは太蔵にはない。


「それであのスキルはどれほどの効果が実際に?」


大宮は何か感じたのか、その効能について聞きたがった。


「あれは素の状態を3倍に高めることが可能になる、儂の固有スキルだな」


「げっ 正に人外の動きになるのか!?」


「・・流石の田川も老師の動きについて行けなかったのですね」


「そうだな 最後の決め技に使用した」


全員が深いため息と共に納得した様子だ。



「それと・・もうひとつお伺いしますが、、」


小田切は太蔵が先ほどちらりと説明した事にひっかかりを感じていた。


「老師は最初この部屋に入って来た時に 体を気遣う我等に確かスキルで直したと言うような発言をなさっていましたが・・もしやそれは昨夜の駐車場内で起きた事と関係があるのですね?」


「おう そうだよな、そんなスキルがあれば前回は何故使わなかったんだ?」


あの発言を信じるなら、前回入院などの騒ぎもなく対応できたのではと久保田等も気づく。

それに対しにこにこと笑いながら太蔵は嬉しそうに語りだす。


「小田切の推察通り昨夜入手した新スキルだ」


太蔵が話す意味が理解できなくて全員が呆然と呆気に取られていた。


「ま まってくれ老師。急に何を言い出す、、いや 待てよ そうかあの駐車場内での出来事か?」


倒れている田川の胸に手を置いて何やら老師はしていた、そして突然に二人は光に包まれたあの一瞬に何かがあったと理解したのだ。


「何があったんだ?」


久保田は探るような目つきで太蔵に尋ねる。


「だから 儂のスキルを発動して、田川氏のスキルを複写させてもらったんだよ」


平然と問題発言をする太蔵であった。

だからと言って はいそうですかと素直に理解できるレベルの話では無かった。


「・・なぁ 老師、どれだけ隠し事があるんだ?もう俺の頭の中はぐちゃぐちゃだぞ!」


これ以上は理解できんと久保田は諦め顔になる。

小田切と大宮も同じような気持ちで、全て諦めきったように頭を振る。


「いや 左程に難しい話ではないぞ、単に固有スキルの複写を利用しただけだ、だが残念なことに儂自身のスキルレベルが低い為に必ずしも全てのスキルが複写できる訳ではない。それに複写したスキル自体が低レベルの状態だから必ずしも満足な状態とは・・・」


「・・なぁ 老師、あんたの行った異世界とはどれだけチートなんだ!」


思わず太蔵の説明に声を荒たげる久保田であった。

他の二人ももっともだとしきりに頷いていた。


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