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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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 大火球 放つ!


田川が投じた魔法は大火球となり太蔵を襲う。


 何の 体力強化!


その声に田川は思わず信じられんと太蔵を凝視した。

もの凄い熱量と爆発の光が辺り一面に広がり、しばし近くにいる者達は完全に動きが止まり、ただ熱風と爆音が過ぎ去るのを待つしかなかった。


「な なぜだ・・お前は何故スキルを、、」


驚いたようにゆっくりと後ろを振り返りながら、田川は大地に触れ伏していく。


「・・すまんな田川さん、この手しか儂には思いつかなかったのだ」


あの大火球からどのようにして逃れたのか、気がつけばいつの間にか太蔵が田川の後ろにおり、強烈な一撃を彼に入れていた。

この火球の爆発音と光は麓の人々に目撃されて、各方面に連絡されて大騒ぎになっていく。


「う うわぁー--」


突然の大声が発せられて、アナーシャを捕えていた男が、奇声をあげてアナーシャを突き飛ばし一目散に逃げだしていた。


「あっ 待ちやがれ!」


久保田が逃げる男を追う素振りが見えたが、太蔵がそれを止めた。


「あの男より田川さんの確保が先だ」


「老師 もうすぐ特務班の者が到着すると思います」


「ならば下の駐車場まで運ぼうか・・」


「念の為 暴れぬように手足の関節を外しておこう」


太蔵による処置が終わると小田切が担ぎ上げて階段に向かい始める。

久保田はアナーシャの縛めをとり、何やら体の心配をして語り掛けていた。

彼女は乱暴もされた形跡もなく、拘束だけで済んだ模様だ。


「おっ 何やら1台の車が上がってきます」


下の駐車場から1台の車が急発進で逃げるように立ち去っていくのが見えた。

それとは逆に大型の車が一台ヘッドライトを明るく照らしながら坂を登ってくるのが見えていた。


「やれやれ 何とか解決したか・・いたた」


太蔵はまたも体を痛めたのか少し痛がるように顔を顰めている。


「まったく老師には驚かされますね、後で是非詳細を説明してもらいたいです」


大宮を始め 皆がしきりに呆れた顔で頷いていた。


「おっと 彼を引き渡す前に・・」


未だ意識のない田川の体をまさぐり奪われた魔石を回収し、さらに内ポケットより何やら折りたたまれた羊皮紙を探り当てる。


「おう これだ、転移の魔方陣だ」


何か懐かしそうにその羊皮紙を広げて感慨深く暫く見つめている。


「なぁ 老師、それが先ほど話に出てきた・・」


「うむ、、儂と田川が生還できたのもこれのお陰だ」


周りにいた皆が集まり、興味深くその魔方陣を覗き込む。

そうこうするうちに自衛隊の特殊車両が駐車場内に到着した。


「おっ 到着だな、いかん まだ肝心なことが終わっていないな・・」


太蔵は倒れている田川の胸に片手を置き、何やら念じている。

突然眩い光が二人を包み込む。


「うぉー 何だ老師、何が起きたんだ?」


「・・よし 上手く行った、詳細は後だ彼を引き渡すぞ」


駆けつけた隊員に彼の扱いに関しての注意事項を話して、去り行く特殊車を見送る一行であった。





「さぁ さぁ 老師、もったいぶらずに昨夜のことを話してくれ」


昨夜はもう明け方近くに道場に帰り着き、流石に疲れから皆が一旦休むことになった。

アナーシャも上司に無事に救出された報告をして道場内の部屋にて休ませていた。

昼近くに皆が起き始め、太蔵が現れるのを今かと待ちわびていたのだ。


「う うむ、元気だな久保田は・・」


「老師 体調は如何ですか? 自衛隊病院の方に行かれた方が・・」


「いや 完全回復だ、ほら」


そういって彼は軽く体を元気に動かす。

昨夜の痛みが嘘のように彼は微笑んでいた。


「・・なれど 昨夜の状態はかなり問題でしたし、、」


田川から受けた攻撃により、かなりのダメージが残っていると大宮は判断していた。

最低でもまた骨が数本ひびが入っていると大宮は見ていたのだ。


「うーん 魔法で回復した・・・」


小さな声で皆に伝える太蔵に、突然何を言い出すのだと皆が怪訝な顔で太蔵に注目する。

それが本当なら 前回の入院騒ぎは何だったのかと誰しもがそう思う。


「・・まぁ 彼のスキルをコピーしたのだけどな、、」


真剣な顔で話す太蔵に誰しもがとっさの言葉を無くし呆然と彼を見つめる。


「・・あっ もしかして、田川を引き渡すときに何やらしていたのは、、、」


勘の良い小田切がようやく昨夜の不思議な老師の行いを思い出す。


「うん あの時に、、おっと」


誰かが近寄って来る気配を感じて太蔵は黙り込む。

部屋にノックがあり、アナーシャがお茶を持って入って来た。


「皆さん お茶を入れてきましたよ うん?」


にこやかに入室した彼女は何やら皆の空気が少し緊張している事に気づき小首を傾げる。


「ははは・・何でもない、そうだ 君もそこに座りなさい」


太蔵に勧められてアナーシャがおずおずとソファーの一角に座り込んだ。


「アナーシャ 君にお願いがあるのだけど、昨夜見た事は全て忘れて欲しい。どうかな?」


あれだけの事を忘れろと太蔵は言う、しかも情報が命の外国の特務機関の者に対してだ。

昨夜見た情報はそのまま持ち帰ればとんでもない自国の利益になる話になるが、それを全て見なかったことにしろと太蔵はぬけぬけと彼女にお願いしている。


「・・はぁー-、私がどんな組織に属しているのか知っての話ですね、、なれど命を救われた恩義も確かにありますし、、でしたら一つ条件があります」


今度は皆が何事かと アナーシャの条件に聞き耳を立てる。


「私をここで正式に採用する これが条件よ」


「・・正式に? それはつまり、、」


皆が彼女の条件に耳を疑って困惑していた。

そんな一同の困惑を無視してアナーシャが語り始める。


そもそも彼女は最初の採用目的が語学力であった。

アジア地区の他国語を最低5ヶ国は堪能な彼女に通訳として当初は採用されていた。


採用後に彼女の意外な交渉力がある事に組織は気がつく。

いつの間にか通訳から更に責任のある交渉班として編入されて現在に至る。


しかし彼女自身は国で一般的な通訳者よりは高額な給与と手厚い国からの各種保護による環境にてそこそこ満足していたが、特務機関としての実績は左程の事がないと自覚していた。

本人曰く、単なる高額給与の職場としか意識がなく、今回の件で少し落ち込んでいるそうだ。


「「「アニメ!?」」」


そう彼女は特に日本関係を強く選んだのは、自分の趣味とアニメからの情報による日本に慣れ親しんだからに過ぎない。


実際に赴任して現実の日本を知るにつれ、その特異性と歴史にはまりだす。

仕事の合間には日本各地へと遊びまわる生活ぶりらしい。

いつしかこの国にて永住したいと考えていたと話す。


「・・えーと だが機関の人間としてそう簡単に辞める事は難しいのでは?」


「そうね、、 でも何とかなるかな?」


突然にアナーシャは携帯を貸してと久保田に言う。

彼女は拉致された時に身の回りの物を取り上げられて、身に着けていなかったのだ。


久保田の携帯から誰かに連絡を入れ始めた。


「ああ 叔父様? はい お陰様で・・そうなのまだ道場よ・・・それでね叔父様にお願いがあるのだけど、組織から抜けたいのだけど問題ある?・・・はい・・そうよ、この際辞めたいの・・・・・この道場で暮らすことになるわ・・・・はい・・ええ 少し待って」


叔父様とは誰なんだと 皆が呆気にとられて聞き入っていた。

アナーシャは突然太蔵に代わって欲しいと携帯を手渡す。

突然のふりに戸惑いながらも太蔵は携帯を受け取り相手に話しかけた。


「もしもし?、、 ああ 貴方でしたか。突然に代われで私も・・・はい・・・・宜しいのですか?・・・ええ 構いませんが・・・」


暫く電話口の相手と状況を互いに話し合う二人がいた。


【ええ 此方こそご迷惑を掛けますが、ひとつアナーシャの事をお願いいたします・・】


そう伝えて電話口の男は携帯を切る。皆が緊張して太蔵からの言葉を待っていた。


「ふう、、相手の電話主は東アジア統括責任者のアンドロノフ氏だ。彼女は彼の姪になるそうだ。そして彼からは逆に丁寧に今回の事をお願いされたよ」


 はぁー-? 久保田が一際大きな声でアナーシャと太蔵を交互に見据えた。


「あら? 何よ久保田は? 私がここに居る事で何か文句があるの?」


 いやいや  何も・・。


久保田は慌てて口を閉ざし ごもごもと何かを呟いていた。


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