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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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太蔵と大宮の二人は何故か異世界における話で盛り上がっていた。


「先ほどから転移の話が出ていたが、話をしながら儂も派遣される隊員の方に出来る事がないか考えていたのだが、もしかして可能性があるかもしれんと少し考えている事がある」


「・・それは是非ともお願いしたいと思いますが、どのような手段が?」


大宮が突然の老師の提案に目を見開いて乗り出してきた。


「いや まだ構想だけであまり期待してもらっても困るのだが、、まずは準備をしてもらいたい物がある」


大宮は老師から依頼されたものを手配すべき席を立ち、連絡へと座を外す。



「老師・・何を考えられています?」


「うーん そう期待するな、出来る可能性は半分以下だと思うのでな」


「それでも可能性があるだけ凄いと思うぞ」


「うむ 最善は尽くしてみるつもりだ」


派遣される隊員の精神的安定に役立てばと、太蔵は頭に浮かんだ事項を現実とすべきと懸命にその手順や細工を練り直していた。



「なぁ 老師、話は違うが先ほどから出てきた異世界に、、もしかだが行く事が可能になればその時は俺も一緒に連れて行ってくれないか」


「ほう 行ってみたいのか?」


久保田の提案に太蔵は驚きと、ある意味その好奇心に感心していた。


「だ だってよ、向こうに行けば経験値が入りレベルとやらが上がるのだろう?さすれば今より強くなれるわけだろう? 俺は前回の老師と田川との戦いを見て、自分の力なさをしみじみ感じたんだ。あの嵐のような二人の戦いに今の俺が飛び込んでも ものの数秒で叩きのめされてしまうと感じていたんだ。そして魔法も覚えてみたいと思ってな・・お願いだ、もし異世界に行ける事があれば必ず俺も同行したい。これ この通りだ」


目の前のテーブルに頭を擦り付ける勢いで久保田は深々と老師に頭を下げた。

そんな久保田の様子を横目で見ていた小田切も口を開く。


「老師、その節には私も宜しくお願いいたします」


「なんと、、小田切も付いてきたいとな?」


「はい この男一人強くさせるのには少し今後に不安ですし、何よりこの者の監視役が必要でしょうから」


「おい それはどう言う意味なんだ?」


「そういう意味だ 危なくて向こうで老師が苦労しそうだ」


しばらく高弟同士の言い合いが続いていたが、それをにこやかに太蔵は眺めていた。


「まぁ その辺にしなさい。行けるかどうかは現在ではほぼ無理な段階だからな」


これに関しても検討してみるとだけしか太蔵も答えようがない。先ほどは大宮氏との話題の中心になったが、その可能性があるかもしれないと言うのが本音であり、過剰な期待はするなと釘をさす。




「そう言えば今日はアナーシャはどうしたんだ。いつもはとっくに着いて何やらごそごそ自国の連絡の種は無いかと嗅ぎ回っている筈だが?」


「おう 言われてみれば今日は何か野暮用ができたのかな・・あの女の姿は見かけてないな」


「何か この頃はいつもいるように思えてならないので、居ないとなると少し違和感がありますね」


いつの間にかこの道場に自ら通ってくるようになり、もうみ月は過ぎていた。

すっかりいつの間にかここに馴染んでいた彼女が何故か居ない事に太蔵は少し気にかけていた。

そんな折に久保田の携帯がマナーモードにて着信がある事を知らせてきた。


「誰だ? 肉親以外はめったに連絡など・・おっと、噂をすれば影だぜ。アナーシャからの連絡です、少し席を外しますよ」


なんとなく嬉しそうに久保田は部屋から出ていく。


「おやおや 小田切、あの二人の仲はどんなものなのかな?」


「うーん 正直に彼女の方が役者は上ですね。どうも久保田は彼女から掻きまわされているようにしか思え・・・」


そこまで話していた時に突然廊下から大きな怒鳴り声が響き渡った。



「誰だお前は! アナーシャを電話口に出せ!!」


久保田が携帯に向かって声を荒げている気配が道場中に響き渡っている。

その声に反応して警備隊員の何人かが、ただ事ではない久保田の剣幕を感じて廊下に飛び出す音がした。


当然その様子に今までにこやかに会話していた老師と小田切も、部屋の外で携帯と話している久保田に反射的に注意を集中し始めた。


「何だと?! 田川の使いだと! ふざけるな、側に田川が居るんだろう? 本人を出せ!」


そんな怒鳴り声を出しながら久保田は非常事態と察して、再び太蔵等が居る部屋へと入って来た。

片手で受話器を押さえて、早口で太蔵等に向けて「アナーシャの身に何かあったらしい」 そう早口で伝えると再び携帯口へ  彼女を出せ! と連呼した。


部屋の外は隊員達が集まり、血相を変えて怒鳴り散らす久保田の電話内容を確認すべき聞き耳を立てている。


「うん? お前田川か? 返事をしろ! アナーシャは無事か? 怪我一つ負わせたらお前を殺すぞ!」


その後も何度か怒鳴り合っていた久保田が、携帯の受話器を押さえながら太蔵に差し出す。


「田川です 彼がアナーシャを誘拐した模様だ。老師に代われと言っている」


携帯に出るかどうするかと久保田が目で太蔵に確認する。

太蔵は頷くと久保田の携帯を受け取り田川に話しかけた。


「もしもし三橋です、田川さんですか?」


「おう 俺だ。久しぶりだな、元気にしていたか?どうでもいいが、お前のところの若いもんはうるさい程元気だな。まぁ いい、本題を伝えるぞ。再戦を希望だ、場所と日時は追って知らせる。それまでは女は預かっておく、危害は加える予定はない。俺はお前だけが目的だ。後でまた連絡する、じゃな」


田川は言うだけ言って一方的に連絡を切った・・・。


「おい もしもし・・切れたな」


いつの間にか部屋中に全員が集まり、アナーシャが誘拐されたと全員が感じて心配して集まって来たのだ。

太蔵は田川からの電話内容を全員に話した、当面は彼女に危害の心配は無いだろうと伝えると、少し安堵感が全員から漏れ伝わってくる。


あくまで口約束ではあるが、今現在ではそれに関して確認の方法がない事は誰も理解していた。

打ち合わせをしたいので、太蔵等3名と大宮三尉を入れて4名にて暫く話したいと 心配する隊員達には申し訳ないが一旦席を外してもらう事にする。


「くそっ、正かあのアナーシャを誘拐するとは・・」


「・・ふつうは無理だろうが、相手が田川なら単独でも可能だろうな」


彼女はそれなりの訓練を受けている情報機関の出身だ、通常の誘拐犯が数名にて襲ってきてもまず掴まるような事は無いが、今回はあの田川が相手では・・。


「どうしますか? 警察または我が特殊部隊に連絡しますか?」


「いや、彼の目的は私だ。当面次の連絡次第としたい。だが一報だけは倉田さんに入れて欲しい。それと・・彼女の上司の方にも入れた方がいいな。だが、どちらにもまだ動いてくれるなと念を押してくれ。出来れば此方で解決する予定だと伝えて欲しい」


大宮は頷いて各方面に連絡を開始する。


「くそぅ 彼女に手をだしたらただでは済ませんぞ・・」


久保田の体内からぎりぎりと内圧が膨れ始めていた。


「落ち着け 久保田、田川の目的は老師だ。彼女はたんなるおびき寄せる餌の役目に・・」


「分かっている!だが100%安全の保証はないのだろう?」


苛立ちから久保田が少しナーバスになっている。



アターシャが誘拐されたとの報告はすぐさま関係者に知れ渡っていた。

太蔵の携帯に倉田陸将補からすぐさま連絡が入って来た、丁寧に事の次第を連絡して次の田川からの要求次第では本格的に参入してもらう打ち合わせとなる。

その連絡が終わったと同時に太蔵の携帯に不審な電話連絡が入って来た。


「・・ふむ こんな番号は登録した事がないな、、」


もしかして犯人からの仲間による連絡かと思いながら太蔵はその電話に出る。



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