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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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薄暗いダンジョン内に慣れた太蔵の目に何やら魔物の姿を認識する。


なんだ?やけに丸っこくて巨大な影が動いているが…。


「いかん ギガスライムだ、要注意だ」


アレックス氏が大声で皆に伝える。


 …スライム?あの小さいやつの親玉?


「全員火魔法をつかえ、可能な限りぶつけろ。さすれば柔らかい皮膚が固くなり剣が通る。それと酸液を吹きかけてくるので注意だ!」


良くは分からぬが取り敢えず火魔法だな。

太蔵達は一斉に詠唱を始め、完了した者から魔法を発動する。


近づいて来たスライムは高さが4米近く1米程の手?触手に近いものが数本蠢いている。

岡田氏が最初の一撃をスライムに投げつける。


物凄い閃光と熱が辺りに広がる。

続いて田嶋氏次に遅れて太蔵も火の塊を投げつけた。


通常の魔物ならひとたまりもなく退治出来る攻撃を、スライムは多少動きは鈍くなったものの依然として前に進んでくる。


次だ もう一度だ! アレックス氏が再び声を上げる。


再度詠唱に入り火魔法を打とうとした時に、


「避けろ 酸攻撃だ」


悲鳴に近い声でアレックスが叫ぶ。

はっと太蔵は反応して飛び退いた、先程まで太蔵がいた場所から白煙が立ち上り、酸特有の匂いが辺りに漂う。


「怪我はないか?続けて火魔法を打て!」


それに応えて岡田氏・田嶋氏が魔法を発動した。

先ほどと同じく辺りを明るく照らし熱風が舞い散る。


今度は何かスライムが嫌がる動作をしている。


「今だ 剣での攻撃開始!」


太蔵と田嶋氏が両脇に分かれてスライムに襲いかかる。

岡田氏が念の為か再度詠唱を開始している。


右脇から太蔵が左脇から田嶋がそれぞれ渾身の力を込めて切り下ろした…。



「ふう なんだこいつの弾力性は?」


切り裂かれた皮膚から体液を流しながら縮んでいく。

倒し終えた後に田嶋氏が火魔法が届かなかった皮膚に剣を突き刺してみるが、途轍もない弾力性で剣が入っていかない。


「こいつは通常の剣攻撃はほとんど通用しない。火魔法で炙って皮膚を硬化させて初めて剣が通る」


アレックスの言葉に頷く3人であった。


上級ダンジョンの怖さを最初から認識させられた3人であった。




一日が終わりダンジョンの入口近くに戻り野営準備に入った3名はほとんど口をきくのも億劫な程に疲れ切っていた。


「ふう 野営の準備はこれで完了だな…」


続いて食事の準備があるが、はっきり言って直様疲れた体を休ませるのを優先したい程だった。

そうはいっても食べなければ明日に影響する。

無理やり食事を摂ると暫しの仮眠にて3名は体力の回復に努める。


数時間後に目を覚ました太蔵は、先に目を覚まし焚き火にて白湯を飲んでいる田嶋の近くに向かう。


「おう 目を覚ましたか、いいんだぞ交代時間まで寝ていて」


「いえ お陰様でかなりすっきりしましたので」


「はは 若いからな それ」


そう言って白湯を入れたコップを渡してくれた。


「有難うございます 頂きます」


コップを受け取り白湯を美味そうに飲み干した。


「上級ダンジョンは疲れるな 最初にアレックスからアドバイスがなければ、あれで詰んでいた可能性があったな 助かったよ」


確かに 3名だけで初見のギガスライムに向かっていたらかなりヤバい結果になっていた。


「…その件で少しお聞きしたいことが」


声をひそめ辺りに誰も起きていない事を太蔵は確認してから話し始めた。


「田嶋さん達はアレックスさんとかなり親しいように感じられますが、何処まで彼を信用してもよいのでしょうか?」


太蔵には親身になって色々手助けしてくれる彼の存在を有り難いと思う反面、所詮この世界の住人であり、ましてはあの()の配下である、会話に置いて話せる限度を尋ねているのだ。


「ふむ その件だが…」


そう言って田嶋も改めて周りの確認をすると小声で語りだした。


 原則あの()に関してはタブーだ、当然彼もこの世界の住人だ。彼としても立場があるからな、他に関しては比較的好意的だ。彼も勝手に異世界人を召喚している事に関しては疑問があるみたいだ。無論彼から明確な言葉はないが、それなりの空気は感じられるので、君も親しくなれば今以上の情報を仕入れることは可能だと思う。


 なる程 あの()に関しては要注意だが、後は今後の展開次第だな


太蔵は今後の帰還に関して不明点の多い事が気がかりであった。

召喚を嫌い協力を拒否した者が過去に居た事は事実らしい、問題はその者が果たして無事に元の世界に戻れたかと言う事だ。


この世界の情報を断片的に入手出来た事は、魔王と呼ばれる存在は退治しても60年ほどでまた復活し活動を開始するとの事だ。


つまり結構な昔から繰り返しこの行事?は発生している事になる、そうなればかなりの人数が過去から現在まで召喚されている事にもなる。


その間に何人もの魔王退治に成功した者や拒否した者が元の世界に帰る事が出来たのだろうか。

全員がこの世界に留まったとは考えられない、こんな世界から無事に祖国に帰還できたなら恐らくそんな言い伝えが全国の地にて広まっている筈だ。


調べ方が悪いのかも知れないが、自分は聞いたことがない。

それは田嶋氏等も同じだとこの前の雑談で聞いた覚えがある。

この点が一番太蔵が気になっている点だ。


何故広まらない?普通に考えて不思議だ。

と なると考えられる事は数点浮かんでくる。


① 例えば記憶を操られて帰還した

② 帰還後体力が尽きて死亡した

③ 他の知らぬ異世界に転移された

④ そもそも帰還に関しての魔法はない 


①はかなり可能性がありそうだ、話にも突然記憶喪失になった者が発見されたと昔話にもある

②も考えたが当初の体力状態ではありえるが、魔王を退治した程の地力をつけた者が帰還時の体力消耗に耐えられぬ訳がない

③奇想天外だが可能性はありえる、証拠も残らないな

④一方通行の魔法?これは現段階では不明だな


田嶋氏も私の考えに唸りだす。

そこまで考えた事がないと正直に応えてくれた。

彼と岡田氏には特別な事情があると話しだした。


一人は戦争孤児で一人は捨て子だという、天涯孤独で基本祖国に帰っても親・親戚の類はいない。

全てが終わった後に再度考えるが、こちらの待遇が良ければ残る事も考えているとの事だ。


戦争孤児や貧しさによる捨て子は太蔵にも聞き覚えのある単語であった。

終戦前後のゴタゴタ時には決して珍しい事ではなかった。


太蔵が小学生の頃、近所の一角のあばら家に子供達だけで共同生活していた少年達がいた。

いつからかその家も解体されてそこに住んでいた少年たちがどうなったのかは記憶にはない。


時代の波があの少年達をどの様に変えたのか、ふいに記憶を思い出した太蔵は暫し黙り込んだ。


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