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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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太蔵はその重い口を開いて久保田の質問に答え始めた。


「・・そうよなぁ、正直あんな理不尽で生活環境の厳しい世界には帰りたくはないが、その反面自由に生きられて好きな魔法を覚えられる世界が広がっているのには憧れもある。そして勇者として召喚された他の日本人がその後どう暮らしているのか興味もある。・・また その、、であるから・・つまり」


聞いている3名が突然饒舌が悪くなった老師を不思議そうに見ていた。


「・・老師 何か言いにくい事があるのでしょうか?」


大宮はそんな老師に気遣い言葉をかけた。


「・・いや まぁ少し心配事というか、、気がかりと言うべきか・・」


益々言葉を選び始めた老師に3名は不思議そうに互いの顔を見つめ合う。


「なぁ 老師、しっかりせい。はっきりと話してくれ!」


そんな老師に思わず声を荒げた久保田であった。

その後も何故か言いたがらない老師を何とか説得して事の次第を聞き出す3名である。



「「「なっ 何だと!異世界に子供を残してきた?!それも二人?!」」」


確か老師は異世界生活は半年強しか経験していない筈だ。

それがその短い期間に於いて二人の子供を宿したと聞かされて皆は呆然として、やがて呆れ返った口調で太蔵を久保田は責め始めた。


「人としてどうなんだ?このヤリ〇ン男! 情けない、これが俺の師と思うと情けないわ!」


「はい もうしわけない」


ペコリと老師は頭を下げた。

突然の素直な老師の姿に皆は一瞬毒気を抜かれた様に沈黙する。

呆れる久保田を制しながら小田切が詳細を求めて、それにぼつぼつとそうなった事情の説明を話していく太蔵であった。



「・・なるほど、一人は強制的に日本人との混血による異能力狙いで、一人は転移魔法の交換条件と言うことになるのですね、、しかしそれだけ日本人との混血にメリットがあると認識されている訳ですか」


正しくは恐らく転移者が持つ能力であろう と太蔵は考えていた。


「ふん、、いい思いをしたのは間違えないだろう。・・うらやましい」


久保田はまだ納得している様子ではない。


「ああ それが例の天下御免の許可書へと繋がるんだな・・」


小田切と大宮はようやく例の許可書の意味の真の狙いが判明したようだ。


「なぁ 本当にその二人だけか?他にも覚えがあるのでは?きりきりと白状せい!」


久保田からの追及はまだ止まらない。

実はと・・今まで隠していた裏の話を聞き出していた。


「何と 女性冒険者の3名とも行為が?」


「・・すると 最大5名の子孫の可能性が?」


「いや 冒険者の3名は可能性が低い・・」


話によると女性冒険者はやはり身の危険の可能性が高い為に、冒険者ギルドなどで避妊の魔法を施してもらっている可能性が高いとの事だ、効果としては半年ほど続くらしい。

そんな話を彼女等の寝物語で聞いていた。


「・・ふーん そんな便利な魔法があるのか」


久保田は何やら良からぬ事を考えているみたいだ。


「最低二人の子孫が居ると考えていいのですね、、すると少しは未練があっても不思議ではないですね」


「うむ だが向こうに渡る手段は無いからな・・」


「だが それからもう50年だろう?とうに孫の年代だろう?」


「うーん どうも此方とは時間の流れが違うようでな・・」


その言葉に3名は異世界からの訪問者を思い立った、あの田川は40歳手前の姿で師の元に現れた。

話によると師より7 8歳年上で戦中派であったようだが、あの世界では10年程しか経過していないようであったのだ。


「うーん 良く分からぬな、此方に来たら師よりはるかに若い容姿だったですよね・・」


「何でそんなことが可能なんだ?」


考え込む小田切に久保田も同意する。


「それは分からんな、可能性としては転移による時間軸のねじれ が発生したとしか・・」


 そんなSF小説まがいの事が・・と久保田は半分呆れていたが、現実にそんな現象が起きている事は誰も否定できない事である。


「兎に角ですが もし転移が可能なら老師は一度は戻ってみたいのですか?」


突然に大宮が老師に尋ねた。


「・・そうさなぁ 未練が無いと言うなら嘘になるな、但し殺伐とした都市部ではなく、そうだな田舎の都市に・・・」


ふと そんな太蔵に魔導師のばぁさんが店を構えていた、のどかな森の中の風景が頭に浮かんできた。


 おう、、あんな環境での生活はたのしかろうに・・。


太蔵はもうあのぱぁさんも亡くなっているかもしれんと思い出す、でもあの近くに5夜にわたり契りを交わした女性とその子が住んでいるのかもしれん。二人を引き取ってのんびり生活もいいのかもと妄想が頭に浮かび始める。


「おい老師・・急に何を一人でニヤついているんだ?」


気味悪そうに久保田がかけた言葉に現実に戻された太蔵は軽い咳払いで誤魔化していた。


「・・ごほん うむ、儂も歳の性か懐かしくあの異世界を想う事も確かにあるな」


「まだ そんな物思いに老ける歳じゃないだろう?しっかりしてくれ」


「分かっておるわ、異世界の話など始めるからつい思い出しただけよ」


そんな二人の会話を苦笑しながら聞いていた小田切と大宮であった。


「・・老師 異世界の話をした理由は、もしかして戻れる可能性があるのかな と考えまして」


突然何を言うのかと太蔵は大宮の本意を知ろうとした。

体内にあの世界で言う魔素を蓄えられる修行は完成したが、あの世界に戻るには別に大量の魔石の力が必要になる。


太蔵は此方の世界に戻る為に500キロの魔石を懸命に集めたのだ、この世界では決して集めることが出来ぬ魔石である。今更あの世界に行くのは再度召喚による事以外は無理であろうと感じていた。


「・・可能性は無くもないが、現実的には二つの事が問題となる」


ひとつは転移に必要な大量の魔石であり、もう一つは転移を行うための符魔紙に書かれた魔方陣である。

少し前に太蔵は転移の魔方陣作成が出来ぬかと確かめた事がある、通常の火魔法と違い転移魔法は選ばれた者だけが利用できる魔法であり、その才能がない太蔵ではどうやっても再現は不可能であった。


「大量の魔石の件は後で考えるとして、一つお聞きしますが田川は何故に転移できたのですか?彼にはその選ばれたと言う才能があったのですか?」


いや そんな話は聞いた事がない、確か前回会った時に太蔵が置き忘れていた符魔紙を彼が後日見つけたと・・あっ そうか!


「うむ 理解した、田川氏が儂の置き忘れた符魔紙を持っている可能性があると?!」


「そうです それか全く新しいその符魔紙を抱えている可能性がありますね」


「うむうむ 当然今現在も抱えている可能性が大だな、、」


ならば彼を倒してその符魔紙を入手すればいい、シンプルに太蔵はそう思いつく。


「・・そして 大量の魔石の件ですが、開発した結晶魔素にて代用が可能ではないかと?」


太蔵の顔が急に輝きだした、異世界転移がどうのこうのより現実にこの世界で転移魔法が出来る事の可能性が見つかったからだ。

出来ればそのメリットは計り知れない事になる。


「うむうむ 大宮さん、一気に可能性が高まったかもしれん」


実際に結晶魔素で可能かは確かめてみなければならないが、可能性はあると太蔵は判断した。




「えーと、、何か二人で盛り上がっているな」


「うむ とんでもない話が交わされている様だな」


蚊帳の外に置かれた小田切と久保田は二人して顔をあわせて事の次第を把握しようとしていた。


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