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田川による襲撃事件よりひと月近くが過ぎたが、その後は田川から何も動きがない。
太蔵等は田川からの襲撃後に彼の隠れていると思われる地域暴力団の情報を密かに、自衛隊経由にて彼等に協力してくれる警察官へと田川に関しての情報も流していた。
当然管轄署内にてこの情報を受け入れ極秘に調査が進んでいたが、警察内に於いても残念ながら暴力組織と繋がっている者がおり、強制捜査が入る前日に田川はその所在が不明となり彼の逮捕には至らない結果となった。
なれど組織の関係者達はトップを筆頭に主だった者達が逮捕され、一時的にせよ彼等の行動自体がかなり制約されたものにはなり、当面は田川の逮捕に向けて警察組織が動き出していた。
「田川さん どうにもいけません。暫くは動きが取れませんよ」
彼に同行している若い者が繋ぎ役及び身の回り等の任務にて、彼の愛人宅に田川を匿いいつ一週間が過ぎようとしていた。
この間彼は頻繁に残る組織に残る同僚たちに連絡を入れながら現状を憂いていた。
「・・加藤、そんなに気を使う必要はない。例え警察が踏み込んで来ても俺は不本意だが逃げおおせる事が可能だからな」
「はい それは良く存じ上げていますが、親父からは田川さんの面倒を頼まれております。くれぐれも無茶だけは・・」
「いや この一週間世話になった、幸い金もある。今夜夜中にでもこの地から俺は離れようと思う」
「・・私も同行します、親父からの命令を破るわけにはいきません。連れて行って下さい、最悪私が逃亡への時間稼ぎになりますのでお願いします」
20代前半の加藤であるが、あの組長が直々に田川に付けただけの事があり、若手内では頭が一つ飛びぬけており、その度胸と実行力は問題ないレベルである。
「・・ならば車を手配してくれ、俺は免許を持っていないしな。用意できるか?」
「はい お任せください、今から至急に手配いたします」
その夜二人は警察の手薄な裏道や間道を狙い夜の闇に紛れて移動し、県外へと逃走を開始した。
「なぁ 大宮さん。昨夜は中国人と思われる者達からの襲撃だったが、しつこいよなぁ・・」
久保田が少し眠そうな顔でコーヒーを飲みながら昨夜遅くに起きた襲撃事件に呆れかえっていた。
「そうですね、このひと月で数回各国からの夜間訪問ですね」
中国人と思われる襲撃事件はこれで3回目になる。
その度に高弟二人による対応にて敵は一発の弾も発射出来ぬ間に制圧されていた。
もしかに備えて待機していた自衛隊の特殊隊員達からも称賛の声が上がっている。
「しかしお二人にはほとほと感心します。手際が良すぎますよ」
「うーん 老師からのスキルに頼ってはいるが、、あれは確かにヤバイな」
体力増強の魔方陣によるスキルは正に特殊訓練を受けてきた者達にも畏怖の動きによる働きに映る。
正に大人と子供の戦いレベルにまで相手を追い込んでしまう。
「・・あれ 私どもの訓練に何とか利用できないでしょうかね?」
「ははは 俺達には無理だな、老師に掛け合ってくれ」
小田切も苦笑いを浮かべて答える。
大宮は予てよりあのスキルによる行動には注目していた、何とかスキルの真似事でも出来れば、世界に日本特殊部隊の名が冠たるものになる。
是非とも欲しいスキルだが、何となく発動するにはそれなりの弛まぬ努力が必要となにより太蔵による指導が必要であるのは理解していた。
付け焼刃での習得では決して成せぬ事は分かっていたが、これからの日本の事を思うと無い物ねだりではないが必要だと大宮は少し考える事があった。
「・・実は皆さんも承知していると思いますが、アフリカのC国にて内乱が発生し、国連軍の投入が正式に決定しましたよね・・・」
アフリカのC国において独裁政治による弊害はかなり前から問題視されてきた。
この国は砂漠と山に囲まれており、長い間最貧国のレッテルが貼られていたが、この国の大統領が就任後の初仕事が山岳部における鉱物資源の確認調査であった。
これがこの国に奇跡を呼ぶことになる、鉄鉱石や銀・金も見つかりあれよと言う間に大統領中心による一大鉱物の産出国となる。
なれど大統領が主体による開発によりその巨大な富が全て自分の為に集められる。
大統領としては自分が進めたプロジェクトによる結果であり、全ての富は自分の為にあると勘違いを起こして肝心の国民の為に富を分け与える意識に欠けていた。
雀の涙ほどの分け前を国民に与えただけで、後は自分の一族とそれに群がるゴマすり高官にしかその利益を供与していない。
無論首都に関してはそこそこの近代化を発展させることにはなったが、全ては自分が住みやすい環境への対応にお金を使用しただけであり、膨大な利益は全て自分の欲の為にただ集められた。
そんな生活は実に15年近くに渡り繰り返される。
国民による選挙などは名ばかりであり、自分の保身の為に都合よく法律も変え、一部のゴマすり高官による悪政は一部の利益を受ける者により都合の良い体制作りに追われて、国民は最貧国の生活を強いられてきた。
流石に底辺からの不満が爆発して、火の手が上がり始める。
当初は国軍による特権階級による弾圧で一旦はその火が消えていくが、この騒ぎを見逃さずに内乱へと導いた国があった。
ロシアと中国による利権獲得に端を発して反乱軍への武器供与が始められ、再び国内に於いて内乱の火の粉が飛び散り泥沼へと発展していった。
欧州諸国も利権確保に国や反乱軍に後押しが開始されて、もはや一国だけの問題には収まらずにこの5年間は各国の思惑が複雑に絡みついてもつれ合っていたが、国連による何度目かの仲裁による案も全て何の意味も持たずに戦乱だけが続いていた。
とうとうおっとり刀の国連も正式に国連軍の介入に舵を取り実行されようとしていた。
ここで我が国である日本も動かざるを得ずに、国連より正式に依頼が届くこととなった。
ここで日本国首相である大鐘は大英断に舵を取った。
彼は憲法改革により制約付きとは言え従来よりかなり自衛隊の行動が自由になった事を背景に、それまでのインフラ等の後方支援から一歩進み地域紛争への見張り役を実施することを閣僚会議にて発表した。
当然この決断に対して党内でもかなりの議論が持ち上がったが、戦後の完全終了を目指す大鐘は反対する意見を丁寧に潰していった。
その結果各閣僚は渋々承諾をして大鐘の提案を受け入れる事になる。
この内幕は当然日本単独では決定した事ではない、友好国と言われる国からの後押しがあった事は事実だ。
無論 友好国だけではない、小さなことを大きく騒ぎ出す数か国の隣国や野党から非難する声明が当然上がったが日本独自の動きではなく、国連からの正式依頼による錦の御旗を利用して乗り越える事になった。
待ちに待った完全独立への一ステップが実施された記念する決断でもある。
「確かにこの話題は連日新聞やテレビでも報道されているな。これとスキルがどのように関連していくのかな?」
久保田は大宮が言う自衛隊の派遣とスキルとの関係が掴みかねていた。
「要は気持ちの問題が大なのですが・・・」
大宮は今回の派遣に関してこの駐屯地からも百名の希望者を内定したとの事だ。
決して強制ではなく、自主的に手を上げた者が更に選別されてしかるべき日に向けての過酷な訓練が開始されたようだ。
この一週間で技官としての立場で大宮は選ばれた百名を遠くから見てきた。
それにより少し不安な事柄が大宮の胸に浮かび上がって来たと高弟二人にその理由を述べ始めた。




