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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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少し遅れました

道場の留守番役である飯島ニ曹からの緊急電話を路肩に止めた車中で受けている大宮である。

彼が緊張した表情で携帯電話にて指示を流していたその様子から、なにやら道場で起きているらしいと皆が聞き耳を立てる。


ようやく指示が完了して電話を切り、太蔵等に向かいその報告を行う。


「現在道場に来客があります、その本人が 田川と名乗っているそうです」


太蔵等が途端に緊迫したどよめきが流れた。


「田川だと?! してその人物の特徴は?」


小田切が緊張した声で大宮に尋ねた。


「はい 年のころは40前、中肉中背にて何とも言えぬ威圧感のある男性との事です」


高弟の二人が太蔵に田川と名乗る男の確認について問題の男に間違えないかとの視線を向ける。


「・・話通りならどうも本人と思われるな」


「本人自身が乗り込んで来ただと?ふざけた奴だ・・」


「・・それだけ自信があると言えるぞ」


小田切の言葉に太蔵も静かに頷く。


「しかし・・40前の人物だと?どう考えるべきかな?」


「老師 どういう意味なんだ?40前だと何か問題が?」


「うーん 皇女の件で儂を追いかけてきたのならもう少し若い筈なのだが・・俺が知る田川氏は当時20代の半ばであった」


「・・つまりその事件から10年以上たってから動いた?そういう事なのですか?」


大宮も太蔵が疑問を感じている事について尋ねてみる。


「・・ああ 成る程、、確かにその事件の後始末にて動いたとすれば年月が経ち過ぎていますね」


「けっ 単に捜査に時間がかかったのじゃないか? ほら 此方でも事件解決に長い時間がかかったケースは過去に何例もあるじゃないか? それに転移?だっけ、老師もそれで時間の歪みを経験したんだろう?」


久保田は太蔵がこの世界に戻って来た時に経験した実時間とのズレではないかと言う。


「確かに転移により時間の歪は経験したが、自分自身が年取ったわけではないからな。それにあの国のトップが動いて事件解決の命令が下ればもう少し手際のよい動きになりそうだが・・」


「すると別件の理由によりその世界から・・逃げてきた可能性も?」


そう考えると何となく理解できると太蔵は応える。只あれだけの地位と権力を諦めてまでの逃避行となると太蔵もその理由までは思いつかない。


「・・すべては本人に会って確かめればいいな、流石に蛇が出るか(じゃ)が出るか となるが・・まずは道場に戻るとするか」


太蔵は運転する大宮に頷く、大宮は緊張した表情でそれに答えて再度車を動かし始めた。


「そうだ お前たちに言っておく、もし彼と儂が争うことになっても手を出すな、そして特に絶対にスキルは相手に見せてはならないぞ」


「「「老師 それは・・・」」」


「よいか 勝つ可能性はあるから、儂に任せておけ」


同乗している3名は太蔵の言う可能性に賭けてみるしかなかった、渋々ながら皆が頷く。

老師は絶対に勝つとは答えていない、あくまで可能性があるとしか言っていない点は誰もそれに触れようとはしなかった。


「・・小田切 お前に渡してある()()を少し貸してくれないか?」


太蔵はそう言って微笑んだ。







4名が乗った車が太蔵を待つ道場に到着する、すると中からそれを待ちわびたかのように飯島二曹が走り込んで来た。

彼からこれまでの経緯を聞いて太蔵は頷き田川の待つ応接室へと向かいだす。


「おう 太蔵が帰ってきたようだな?」


彼の斜め前に立ち今迄彼の相手をしていたと思われるアナーシャが少しほっとした表情で頷いた。

彼の持つ威圧感や負のオーラにかなり困惑していたのだ。

太蔵が帰った来たことにより人心地がついた半面、何となくこの人物と太蔵を会わせて良いものかと不安がこみ上げてきたのも事実だ。


ロシアの情報機関に属する自分としては、この二人が会う事により何となく太蔵の秘密が漏れ伝わるのではないかと言う期待もある。


その反面全てを失い取り返しのつかない泥沼に入りそうな嫌な感触もある。

全てはこの田川と名乗る正体があまりにも不明による事からの不安だ。


こんな負のオーラに包まれた男などそうそうお目にかかれるものでは無い。

以前自分が連れてきた 狂犬兄弟が可愛く見えるほどの圧力もある。


この男は絶対殺人の経験者だ、それも一人や二人ではない、それは戦時下であれば国から何度もその武運に対して勲章を貰っているほどの、そんな底知れぬ恐ろしさに耐えている自分を褒めてもいい。

アナーシャの思いは静かに応接間のドアが開かれたことにより一旦はその重圧が解放されたのだ。


「お待たせしました・・」


太蔵の落ち着いた爽やかな静かな声にその場の空気が一旦は薄められた、なれどその声に反応して田川と名乗る男から更に強烈な負のオーラが発せられ始める。


アナーシャは途端に限度に近づき、汗が知らずに流れ始め膝が震えだし立っている事自体が困難になり始める。


太蔵自体はその空気を何食わぬ顔で受け流している、続いて入室した高弟2人は一瞬その空気に反応したが、共に直ぐに冷静に田川と名乗る男を観察し始めていた。


太蔵と田川は暫し互いを見合いながら、やがて太蔵が歩みだすとテーブルを挟み正面のソファーに静かに腰を下ろす。

続いて高弟の二人が太蔵をカバーすべき太蔵の後ろに陣取る。

その際に久保田がアナーシャに軽く頷いていた。


それはこれまでこの男に対しての対応に感謝とここから先は我等に任せろとの仕草に感じられた。

彼女はそれに頷き返し多少もつれる足にて部屋から真っ青になりながらも退室していく。


彼女が退室してからも、太蔵と田川の睨み合いは続いていた。

どす黒い怒気とも思える強烈な殺気までが含まれる田川の負圧を太蔵は浴び続けるが、太蔵は全てを受け流して二人は見つめ合い続ける。


「・・随分と年をとったな 三橋 太蔵」


「・・貴方も少し年をとられた様ですな 田川 誠さん」


太蔵の返事に少し頬がビクンと反応する。


「名は勇者グループ以外は明かしているのは少ないのだが・・そうか 調べが入ったか?」


「ええ」  太蔵は頷く。


「・・成る程此方の捜査はあの国と違い優秀だな」


「今は便利な隠しカメラがあちこちにありますからな」


「・・噂には聞いていたが、便利な世の中になったな」


「まったくですな」


会話内容と違い互いの近情報を探り合っている様子だ。

何方も油断がなく直ぐに何かあれば動けるように身構えながらの挨拶が続く。


「・・所で本題に入りませんか?本日の訪問理由をお聞きしたいのですが?」


「知れた事よ・・お前をぶち殺すのが目的よ」


一段と強い気配が二人を包み始めた。後ろにて待機している高弟二人がぎりりと体に力が入り始める。


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