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本年は有難うございました。来年も宜しくお願いいたします。
寒くなってきました、風邪などをひきませぬように。
太蔵は今後どうなるか分らぬ状態で、この日本の禍根を残さぬように高弟二人に色々と今後について話し出した。
それを部屋の外にて聞いている者がいる、本部と連絡が終わった大宮であった、部屋に入ろうとした時に何やら込み入った話が流れてきた。
申し訳ないと思いながら気配を消しながら3名の話に聞き耳をたてる。
内容的には覚悟を決めた太蔵が万一の場合にと高弟二人に、今後の自分の意思を引き継ぐ覚悟があるかの確認であるようだ。
高弟二人は快くその意思を継ぐと快諾し、ならばと今後の太蔵が考えていた案件やらどうやら流派の奥義についても解説しているみたいである。
この3名については予てより3名にしか分らぬ深い繋がりがあると推測していた。
そんな3名の話し合いを少し羨ましく見える大宮がいた。
同時に高弟二人の悲しみを見たくない気持ちも沸き上がってくる、何だかんだと言いながらこの3名との付き合いも数年になろうとしていた。
中年の自分が彼等に出来る事を考えている、そしてその場を離れると部下のリーダー格の飯島二曹の元に行き彼を別室に呼び出す。
飯島は何事と姿勢を正す、静かに語り始める大宮であった。
その話を真剣な眼差しにて聞いていた彼は、最後に大宮から覚悟を聞かれて静かになれど力強く答える。
「大宮三尉 お任せください。もしその様なケースになりましたら、自分が必ず仕留めます」
「済まぬな 非情な決断をさせて、全ての責任は俺が持つからその時には任務を遂行して欲しい。絶対に老師を今の日本は失うわけにはいかん」
「お任せください この特殊任務に就いた時から最悪の事は覚悟しております。お気になさらぬように願います」
宜しく頼むと 大宮は頭を下げて二人は頷き合う。
その後 何気ない顔で部屋のノックをして3名がいる部屋の中に入る大宮である。
「中座して申し訳ありません 本部と連絡がとれて警察のほうへそれとなく情報を流すとの事です。無論異世界からの訪問者とは流石に報告できませんが・・」
「はは・・それはそうだね、それと一つ思いついたのだが、転移魔法の特性としてよく知る場所と認識していないと転移出来ないんだよ。つまりその広域暴力団と敵対している地域暴力団の近くに田川氏が転移した可能性があるんだ。その地域を調べて今から50年程昔に行方不明者がいないのか洗ってみれば可能性があるかもしれない。田川と言う名での検索になるが、、あくまで可能性だけれどもね」
・・成る程 上手くいけば身元がわかるかもな
再び席を立つと連絡に向かう大宮である。
「そうなんだ、良く知る場所でないと不可能なんですか?」
「うん それも欲を言えばかなり鮮明にが条件の一つらしい」
「老師はどこに転移したんだ?」
「ああ 俺は近所の公園だよ。幼い頃からの遊び場所だ、そして召喚に巻き込まれたいわくつきの場所でもある」
「不明確にて転移したら?」
「うーむ 確認がとれたわけではないが、どうやら上空より落下事故につながるらしい・・」
「上空より落下?それって・・・」
「ああ 久保田が考えてることで間違いないだろう」
「ひ ひどいな・・怖い魔法なんだな・・」
その状況を想像したのか久保田は露骨に顔を引きつらせていた。
「老師 報告が完了しました。それと別件で新武器のお披露目があるようです。期日は・・・」
大宮が戻るなり携帯に連絡が入った件の説明に入る。
前から噂があった歩兵銃関係かな?
「・・今回は特別に私共の基地でのテストになるようです」
説明の最後に皆が驚きと近場での開催に喜んでいる、特に太蔵はこの頃は年のせいか出不精になりつつあった。
約一週間後に大宮の運転する車にて基地に向かう太蔵達を、麓で監視している一台の車があった。
「やはり太蔵達で間違えないわ。すると情報通り今日あの基地で何やら起こりそうね。流石に基地の中は監視できないし・・」
米国情報機関のミランダーと数名の部下達である、問題は更にそんなミランダー達を監視している組織がいる事だ。
「あらあら 情報通り老師達を見張っていたけど、彼女等も嗅ぎつけたのね・・」
ロシア国情報部員のアナーシャが何杯目かのお茶を飲みながら、近くのサテンから呟いていた。
「まったく 久保田もつれないし、どうも今一情報が入らなくなってきたわ」
メールで今見た事を報告開始する彼女は、何やらぶつぶつ言いながら考え込んでいた。
やがてミランダー達が乗るセダンはその場から離れて何処ともなく去っていく。
一瞬どうするべきかと考え込んだが、相手は複数此方は1名、もしかを考えると無理は出来ぬと割り切るアナーシャだ、ならば今から山の道場へと向かうかと残りのお茶を飲み干そうとした彼女の目にある不審車が止まり、一人の男が後部座席から降りてくると何やら運転する者と話し合う姿が見えていた。
車はそのまま男を残しUターンして去り行く。
知人を送って来た 何処にでもあるような風景ではあったが、彼女は何かが気に触った。
第一に運転して来た者達が二人前席にいたが、どちらも目つきの悪い嫌なオーラに包まれた男達であった。
はっきり言えば筋者関係の雰囲気に包まれていた男達である。
そして残された男はこれまた特殊な匂いが感じられる中年男である。
・・何者なのあの男は、、そうかあのオーラは前に運んできた狂犬兄弟が漂わせていた雰囲気に近い。
なれど 彼から漏れるオーラはあの狂犬兄弟より数段上の様に感じられる。
普通の人間ではまず発する事が不可能な、、訓練を受けてきたアナーシャでさえあの男と視線が合えばおそらく汗が流れ出しとまらないだろうと感ずる程の圧倒的な制圧力と不気味な力さえ感じる男である。
その男がゆっくりと道を前に進んでいく、慌ててその行先を確認する。
もう数十m進めば正式な道はなくなる、そうそこから先は私有地の道路があるだけだ、そして更に進めばその先に見えてくるのは太蔵の道場しかないのだ。
彼女は慌てて席を立つと会計を済まし外に出ると私道がある方向を眺める、その目に映ったのは私道を上り始めている男の後ろ姿であった。
基地の射撃訓練所から沢山の人達が出てきた、今しがた終わった新型銃の実射見学にて皆が興奮したように熱い熱気で語り始めていた。
「老師 思ったより出来が良かったですね」
高弟二人も新型歩兵銃に満足している。
これからの日本を守るための新型多目的銃に皆が感心し期待しているのが手に取るように分かる。
「ああ あれだけ多目的に利用できる銃なら今後が楽しみだな」
信州の奥深い研究所から出来上がった商品だ、今後は最終検査を待って来年にも正式採用の発表があるだろう。研究所の職員達が懸命に開発してくれた多目的銃だ。
彼等に感謝するべきだと太蔵は感じていた。
よくぞここまで銃の性能を高めてくれた、どんな場所での戦闘行為にも有効に役立つ銃であると開発者も胸を張って説明してくれた。
近いうちにまた新型の武器が登場する予定らしい。
この国を守るために続々と新規に開発された武器がお披露目となる、嬉しい事だ。
「老師 倉田より少しお話があるそうです」
大宮からこの基地のトップの倉田が何か報告事項があるそうだ、例の如く防音室に案内されて待機する3名である。
「お待たせしまして申し訳ない」 汗を拭きながら倉田がようやく現れた。
推測するに今回の新型銃に興奮した各師団の責任者たちに掴まり色々と情報・・特に太蔵達についての詮索におわれていたのであろう。
「ははは、、ご推察の通りです。皆が老師に感謝しておりましたぞ」
まるで自分の事の様に喜んでくれる倉田将補である。
「所でお話とは 例の異世界からの訪問者の件なのです」
途端に空気がピーンと張り詰めだす。




