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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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その監視カメラは廃棄工場より約百メートルばかり離れた古びたビルの一角にあった。


警察は当初の予想を外れ、チンピラや不良による騒ぎではなく。予てより警察がマークしていた広域暴力団の一員が写し出されていた。


突然に警察内は雰囲気が一変する、元々覚醒剤の密取引が密かに行われているとの情報があったのだが、なかなか彼等はその現場を押さえることが出来ずに探索中にて苦労していた時に今回の事件が発生した。


住民達の聞き込みにより、大よその流れが掴めてきた。

覚醒剤の密取引中に部外者による横取りが発生した様子なのだ。

それは最初に映っていた変装した黒い服の男が立ち去る時に品物が入ったケースらしきものを片手で抱え込んでいた事と、かなり遅れて4・5名の男たちが追いかけてくる映像からの判断だ。


男達はかなり走りづかれて立ち止まる者達もいた、その後少ししてその男達がまたとぼとぼと歩きながら廃棄工場方面に戻る映像が映り込んでいた。


映像の拡大鮮明化により、予てより調査中の広域暴力団の一員である事が判明する。

なれどそれ以上に捜査官達が驚愕の思いで見ていた人物がいた。

最初にカメラに入り込んだ覆面スタイルの男である。


その男は信じられないような速度でカメラの前を走り去っていたのだ。

その速度は後から追いかけてくる組織の男達の速度と比べれば、まるで兎と亀の走り程に違っている。あまりの速度にその男の容姿特定に関して不確実な判定が下る。


なんとか拡大鮮明化により顔は覆面スタイルにて詳細が不明、身長は推定165~170前後の男らしいとしか判断材料がない事である。

おまけに推定移動速度が時速50キロ~55キロ近いと言う速度での判定が出る。

百メートルを10秒で走れば時速36キロになる、工場の敷地内からカメラまで推定150メートルはある。


それを走り込んで尚且つこの速度である、おまけに何となくまだ余裕のある速度での移動であるように捜査官達はその男の走りっぷりから感じていた。

それでなくとも世界記録以上のタイムで走り込んでいるこの男は何者だと皆が騒ぎ出した。


そして余裕の走りからこの男が本気を出せばどの様な記録がでるのか、皆は絶句して黙り込む。

出来れば計測の間違いであってくれと考えていたが、それは監視カメラを分析していた担当者達も当初そう感じて何度も分析を繰り返し、最終的には間違いないと匙を投げていた。


結論はとても人間の走りとは思えない と備考の欄に書き込まれている。

そうは言っても確かに顔は変装しているが人による走りである事は事実として認識していたのだ。




太蔵を始め皆が黙り込んで大宮が入手した情報を険しい顔で聞いていた。

あくまで移り込んでいた映像の分析結果ではあるが、推定時速50キロ前後にて走る事が出来るのは今のところ数名しか記憶がない。


つまり今ここにいる太蔵老師と弟子の二人 計3名である。

弟子の二人はスキルを解放して百米を約7秒。

太蔵は若い頃には約6秒にて走り込んだと聞いている。

共に時速換算で約52~60キロであろう。


彼等3名ならある意味可能な走りである、なれど映像に映る姿はまだ余裕のある走りであるとの事だ。

常識では考えられない人間技であろう。


「・・我等を疑っていると?」


静かに太蔵は大宮に問いかけた。


「とんでもありません、実はこの事件があった当日は御3人方は丁度裏山から襲撃事件があったその日の出来事何です」


 ああ・・そんな時にこの事件が起きたのか、、、。


もう半月近い日数が過ぎ去っていたあの襲撃事件を3名はそれぞれに思い出していた。


「へへ、、あの襲撃事件が無ければ俺達が容疑者リストのトップに上がっていた事になるな」


久保田の感想に3名が苦笑いをして顔を見つめ合う。


「・・なれど老師、これはもしかすると、、」


小田切は言葉を濁す、太蔵の秘密に関する事になる。迂闊な言葉は吐けないのだ。

太蔵は少し考え込み大宮に顔を向ける。


「・・少し思いつくことがあるが、これは私の秘密にも関わる」


太蔵はそれを聞きたいかと大宮に問いかけたのだ。


「いえいえ 老師の秘密に関することを私如きが知る必要もありません。そのまま秘密にしていただいた方が今後の為にも・・」


大宮は瞬間的に判断をして、その件に関しては今まで通り秘密にしてもらえばと答えた。


「・・いや 大宮さんなら話しても良かろう。今現在があるのは君のお陰だと言っても差し支えない」


しきりに恐縮する大宮に対して、太蔵は重い口を開いていく。




「・・えーと その話は事実で?! いえ 失礼しました、嘘など話されても・・・」


その通り 何を好き好んで創作話をこの場にて話さなければならないと 大宮は理解した。

なれど思わず口から出てしまうほどの信じられない太蔵の過去話である。

と 同時にそれならばこれほどまでの秘密を自分に打ち明けてくれた事に大宮は身が震えるような感激に包まれている自分に気づいていた。

この話は直ぐに忘れ去り、秘密に関しては完全に黙秘する決意を心に誓う大宮であった。


「はは そんなに悲壮感に浸る話ではないぞ、気楽に今まで通り接してもらえば良いのだ。今後何かあれば・・・例えば不謹慎ながら家族等の身の安全と引き換えの交渉等に巻き込まれたら、その時は遠慮なく話してもらっても良いからな」


大宮には高校生になる娘さんが居ると聞いている、妻や子にもしかの時は話せと太蔵は笑いながら頷いていた。


「いえ 例え家族がその様な事に巻き込まれても自分はこの国の為に身を捧げている者ですから、絶対にそんな脅しには屈しません」


大宮は太蔵の心遣いに感謝しながらも、この国を少しでも後世の人達に自国の誇りと住みやすい国として良くしていこうとの思いに溢れていた。

其の為には最悪愛する家族たちも断ち切る強い覚悟に包まれている様に感じられた。


太蔵は更に大宮を説得しようとしたが、これ以上は無理と判断して大宮に軽く頭を下げる。

それに答えて大宮も太蔵にさらに深く静かに頭を下げ返した。


「なぁ 老師、最悪その世界からの訪問者が考えられるのか?」


久保田がふいに太蔵達の間に割り込んでくる。

太蔵は しばし中空を睨みながら考えを纏めていた。

それを他の三名が静か太蔵の回答を待ち受けていた。


「・・儂が帰ってこれたのだ、その気になれば そう何人かの思いつく人物が居る」


突然の爆弾発言に三名の顔色が変わり出す。

太蔵と同じレベルかそれ以上の人間が突然現れる可能性があると、老師は認めたのだ。


・・なれど 田嶋氏や岡田氏は此方の世界には興味が無かった筈だしな。勇者本人は遠くから見ただけだが結構身長が高かった記憶がある。すると他の勇者グループの一員となると・・・。


突然に忘れていた顔を思い出す、城から出ていく最後の日に突然岡田氏の部屋に訪問して来たあの人物・・・。


 うーむ 名が思い出せない、何か自分の琴線に触れる人物・・。

 あの何か暗い陰険にも感じられた人物の名は・・そうだ、田川氏だな!


ふと 彼がこの世界に戻って来たと何故か太蔵は確信していた。

なれど何故に戻って来たのだ? 確か子爵の位を授与して楽しく暮らしている筈だ・・。

その彼が何故に戻って来た? その理由が分らぬが彼以外には思いつかない。


いや そもそも移動に関しては時間のずれが発生している。戻ったとしてもこの世界の時間軸と奇跡的に一致したのか? それさえ自分には理解できない事だな。

その他の勇者パーティに関しては良く知らないが、皆嬉しそうに微笑んでいた。

皆が此方の世界に戻るような雰囲気には感じられなかったな・・・。


当時勇者パーティのお披露目に沢山の人々が一目見ようと広場に集まっていた、それを太蔵は群衆の中の一人に紛れ込み見つめていた事を昨日の様に思い出していた。


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