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「田川さん こちら依頼の換金をお持ちしました」
組織の若い衆が田川に頼まれて異世界より持ち込んだ宝石を現金に換金して届けたのだ。
束になった何個かの札束が田川の目の前に置かれていた。
「手間をかけたな。これは駄賃だ」
束の中から数枚を抜き出して手渡す。
「頂戴いたします それと専務がお話があるとの事でした」
捜査の結果かそれとも汚れ仕事かな?
「おう 田川さん、まぁ 座ってくれ」
専務が上機嫌にて対応してくれる。
これまで数回頼まれて汚れ仕事に着手していた。
田川からしたらつまらぬ仕事で、他組織進入にて幹部クラスへの嫌がらせにも似た恫喝仕事であった。
実際には監視カメラで人相が分らぬように夜間変装して侵入して、幹部クラスの手足の一本でも叩き折っていつでも寝首を取れるぞと恐怖を植え付けて、ついでに金庫から金目を回収する。
または他組織のやばい取引に乱入しての横取り等の仕事であった。
はっきり言って田川にとって片手間仕事にてこなすだけで良かった。
一度まどろっこい事をするより組を潰すかと提案したが、対暴法のからみによりあまり目立つ事は出来ないと苦笑いをしていた。
昔と違い、今は直ぐに警察が動き出す。それによる弊害の方が大きく、世間に知られぬように動くしかないと専務もため息をつく。
無論相手次第で腹を決める事もあるが、今はその時期ではないと言う事になる。
まぁ 田川としても殺人に対しては抵抗はないが、万一身元がばれると面倒は自覚していた。
他の組織と警察の両方から狙われるのは面倒な事である。
「・・実はご依頼の件がようやく一段落して報告出来る状態になりましたので、、」
ほう 流石組織の力だな と田川は微笑む。
当初 田川から入手できた内容は正直情報が少なく、組織としてそれなりの手を尽くして人物確認を継続していた。
名がミツバ タイゾウ としか分からず、どんな字を当てはめるかでもめた。
さらに東京かその周辺での出身で どうやら武術に優れている。
召喚当時高校生であったので、昭和26年から28年生まれであろうとしか探す材料がなく、体も170~175前後であったとの情報しかなかった。
組織が探し始めた時には、太蔵は東京近辺にはとうにおらず、そして三橋 の名を探しても太蔵の関係者は一人で実姉が結婚にて苗字が変わっており、しかも道場はかなり前に閉鎖してあったのでそこにたどり着くまでにかなりの時間が必要な状態であった。
今迄中間報告によりなかなか捗らずにいたが、その調べは思わぬ方角から判明した。
さる他組織にいる者が自分の師匠が若い頃達人と闘い敗れたが、確かその名に記憶があると連絡が入り、その師匠の元に尋ねて詳しく事情を確認に出かける。
すると 確かにその名に間違えはなく、当時その男の名は関係者の中では結構有名な存在であったようだ。
現在は知らぬが、当時は中部地区の某県の山中にて居住を構えていたと判明する。
「今もそこにいるかどうか知り合いの組織に依頼しましたので、もう少しお時間を欲しい」
専務はそう田川に説明をした、田川の目が途端に険しくなり静かに頷いた。
「老師、何か不思議な事件が多発しているのだな?」
テレビを見ていた久保田がニュースに流れてきた、暴力団による抗争と思われる案件に疑問が沸いたように呟いた。
「うん? 儂はあまりテレビは興味がないのだが、何か変わった事件があったのか?」
「ああ 久保田が言っているのは東京近辺の某県にて地域の暴力団と広域暴力団の衝突と思われる事件がこのひと月で数回発生しているらしいのです。それが広域暴力団の方がどうやら一方的に攻められている気配があると・・・」
「うむ 今のところ死者は出ていないようだが、どうやら決まって地下組織の取引現場が襲われたり、それなりの幹部の自宅に夜間誰も気づかれずに侵入して脅しまがいの騒ぎが発生しているらしいんだ・・これは其処にいる大宮さんからの情報なんだがな、、」
大宮が少し困った顔で頷いている。
「どういうことだ? 大宮さん」
小田切が大宮が何故に警察なみの情報を入手しているのか不思議そうな顔で尋ねる。
何故に自衛官である大宮氏が警察内部の情報に関して入手出来ているのか、小田切にはその点がどうにも納得する事が出来なかった。
「情報網の拡大に今密かに注力しています。警察内部にも協力者が居ると言う事です」
警察組織自体かなり縦割り方式で、一握りのエリートに下部は掌握されて、実態はかなり澱んだ組織に陥っているらしい。
無論 その組織として内没するならそれなりの甘い組織にて、身内の不祥事は徹底して隠す体質は明治以降の流れの中に組み込まれている。
つまり一長一短には改革できない組織となっているのだ、当然前時代的な風習に嫌気がさして退職する者もいるが、内部にて温湯に浸かってしまえばある意味心地よい生活を過ごすことが可能な組織でもある。
当然警察組織だけではなく、民間企業なども最近まではその様な風潮を漂わす企業も多かったが、何年も続く不景気において民間企業は少しづつその流れを断ち切る努力が続いている。
なれど潰れる恐れの無い特殊法人や警察等の組織改革は依然遅々として進まずに今日に続いている。
どうにかしたくても親方日の丸体質はおいそれと変革できずに、それに憂いを持つ人物は我慢して耐えるか退職への道を選ぶしかない。
自衛隊内部に於いてもその流れはある、それなりの地位にいる者は亡国の憂いを感じて必死に動くものがいるし、自衛隊を単なる給与の支払われる一般会社と見て流されている者もいるのだ。
もしかの時に備えるのが自衛官達の仕事内容ではあるが、現実は思っているほどピリっとはしていないのである、すわ一大事に備えて自衛隊内部のある組織は独自の命令を受けて各機関の情報収取にやっきとなっていた。
どの組織が円滑に動けるか、どの組織がつまらぬ縄張り意識に走り結果的に国民に被害が及ぶ危険性があるのか、この所そんな分析が専門部署として立ち上がっていた。
各組織の情報を入手する一環に、暴力団組織についても触手が動いていたのだ。
広域系は内部分裂や闘争が静かに続いてはいるが、何かあった時は意外に纏まり易く、全てとは言えないが大惨事の時にはその組織を使い困っている地域民にフォローをする事に動いた組織もある。
だからと言って非合法な組織を認めると言う事とは別の問題になる。
なれど すわ一大事の時にはある意味頼りになる組織である事も事実である。
情報部員はそんな組織を密かにマークする仕事も兼ねていたのだ。
つまりそんな内部事情があり、普段からアンテナを広く広げていた結果、今回さる地域組織と広域組織との動きも掴んでいたらしい。
ただ 大宮によると今回はたまたまと言うレベルであると頭を掻いていた。
警察組織内の分析中に情報者からもたらされた結果なのだと、、
ならば何故にそんな情報が入って来たかと、確信の部分が少し異常な事によるものだ。
さる廃棄工場にてどうやら広域系による密取引があった模様なのだ。
それは近くに住む住民からの通報が事の始まりであった。
深夜に突然と簡素な住宅街に男たちの争う声が響き渡り、ガラスの割れる音と共に誰かが走り去る音が聞こえてきた、その後に何人もの男たちの怒声が響き渡り複数の足跡と先に逃げ去った男へと向けられて大声が聞こえてきたのだ。
なれど直ぐに諦めた様に数人の男たちはまた廃棄工場へと帰ると、暫くして何台もの車が走り去っていったとの一報であった。
当初警察は不良たちによるいざこざであろうと動いていたのだが、たまたま近くにあった監視カメラはその異常性を写し込んでいた。




