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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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そうか 百聞は一見に如かず だったな。


実際に見せた事によりここにいる全員の雰囲気がガラリと変化した。

今迄の説明による説得は何だったのかと 田川は呆れていた。

実際に見ると言う事がこれ程までの効果を発揮するとは・・


特に若い者達は当初のギラギラした目付から、完全に田川に対しての尊敬共見える視線に変化した。

それは社長や専務と呼ばれている上も同じである。

流石に若い者達と同等の視線を田川に送ってはこないが、当初に比べれば運泥の差である。


「では 田川()()はある人物を追ってこの世界へ?」


いつの間にか田川に さん 付けしていた専務である。


基本はあの世界からの逃避ではあるが、その原因を作った人物はこのままではおかん。

田川の目が怒りに燃えている、詳細は話したがらないが余程の因縁があると推測される。

彼の怒りに若い者が少し怯えた様子をしていた。


「・・成る程 因縁ですな、すると私どもに協力依頼を?」


「そうだ その代わり其方の汚れ仕事に協力しよう」


「・・共にメリットありですな、して探す相手の名は?」


 ミツハ タイゾウ と言う名を初めて明かし始める。






「老師、あの女・・まるで受付嬢ですな」


ロシアの情報機関である彼女は、上司の許可をとっていると毎朝早くから近くのホテルよりこの道場に通い始めた。

何を考えているのかと、小田切を始め彼女を疑惑の顔で見ていたが、少しづつその存在に慣れつつあった。

それを感じていたのか、近頃は訪問客に対して彼女が一番に出ていき対応を始めている。


料理はあまり得意そうではないが、お茶くみや雑用にも顔を出し始めていた。

料理に関してはたまに郷土料理のボルシチを作ってくれる。


「おう なかなか良く動いていい子じゃねぇか」


そんな彼女に目を細めて喜んでいるのは久保田であった。

そんな彼を周りの人間は冷めた目で見ていたが、久保田は暇があれば嬉々としてアナーシャの手伝いをして笑い声が絶えない毎日である。


「もうひと月ですな、いつまで通うつもりなのか・・」


大宮も呆れた視線を時折彼女へ向ける。

だが 太蔵は少しこんな変わった変化を 楽しんでいる様子だ。



無論 アナーシャも伊達や酔狂でこの道場に通っているのではない、当初はこの道場に現れる各国の情報員の監視目的であったが、元は交渉班の彼女は監視任務はあまり得意ではない。


最初は辛抱強く麓にて山へ登っていく車を監視していたが、ひょんなことから太蔵にバレてからは居直り始めた。

次の日からは直接道場に上がり込む毎日に変化した。


本人曰く、下手な監視より道場で瞑想しながら各国の情報員の監視の方が楽だと・・・。

それには呆れかえった太蔵達であったが、まぁ いいかと太蔵は放置する事にした。

だが 定期的には彼女の帰った後で,おかしな器具の設置が無いかと大宮達が念入りに探し、安全面の確保には抜かりなかった。



「あなた 何処かで見た顔だわね?」


いつもの来客対応にて出てきた アナーシャに疑惑の顔を浮かべて尋ねる訪問客がいた。


「あら そう?何処にでもいる受付嬢よ?」


それに対して しれっと答えるアナーシャであった。


「・・いつロシア機関から転職したの?」


「さて?もうひと月近くじゃないかな?」


「・・よく覚えておくわ、老師はいるの?」


「此方にどうぞ、ミランダー上級捜査官様」


アナーシャは名乗ってもいない相手の名を告げて応接室に案内し、太蔵の元に向かい来客を知らせる。


「ミランダー? 確か昔に男の通訳にて同席していた・・」


「はい、おそらくそのミランダー上級捜査官と思われます」


 ・・つまりあの当時は身分を隠していた と?


そのようですね とにっこり彼女は微笑む。

太蔵等は顔を見合わせて ため息を吐いた。

しかし、蛇の道は蛇とはよくぞ言ったものだ・・・。


国内にいる主だった情報機関にいる者は大概記憶していると、豊かな胸をはる。


 ・・意外とこの女 使えるのかも、、、


大宮と小田切は少し見直したと考えていた。

久保田は何故か嬉しそうに彼女の顔を見てしきりに頷いていた。




「お久しぶり と言えばいいのかな?通訳さん、、」


応接間のソファーに座るなり太蔵はにこやかに話し出す。


「あの節は失礼しました。色々と身分を公に出来ない職ですので・・」


太蔵の言葉に悪びれずに答える彼女だ。


「・・もっともですな、いつもの男性ではなく貴女が来たのにはそれなりの事だと?」


「はい それなりの権限とお約束に関しての取り決めが可能ですから・・」


つまり腹を割って交渉したいと、そして可能な限りの権限で決定する事が出来る立場だと理解して欲しいと言いたいのだろう。


「・・前の男性にも伝えたが、私個人は貴女の国とは共同開発など望んでないのだが?」


「それは前の担当者から引き継いでいます。その上での再度のお願いに参りました。」


「何度来られても同じ言葉を繰り返すだけですぞ」


「そこを曲げて・・米日関係のこれからもより良い関係を続ける為にも是非とも・・」


「互いの良い関係に関しては異論はない、ただしどちらか一方の意見が異様に強い関係はお断りしたいのでな」


「米国は世界の安全に寄与する為に必要な物は手に入れたいのですが・・」


「世界の安全? それは表向きであり、自国の利益がまず一番の間違えでは?」


「当然一番は我が国であります、そして次が世界の為にが・・」


しばしの二人による論争が始まる。


 

「ふぅ なかなかご理解いただけないようで・・」


「残念ながら 貴国の方針と私では少し方向性が違うと理解しております」


「・・ロシアとまさか手を組むとか・・・」


彼女はそろりと吐き出すように尋ねる。


「まさか・・あの国は私個人は信用しておりませんので」


「・・ならば 何故あの女がこの道場に?」


「ふむ 少し込み入った事情がありましてね、まぁ泳がしていると理解して下さい」


「泳がしている・・?」


「ええ ご安心ください、彼女個人的な付き合いで国は絡みません」


「・・それでもかなり老師から信頼されているように見えますが?」


そんな関係から秘密が漏れることが過去に何度も見てきたミランダーには安心できない事であると認識しているようだ。


「何かあれば 追い出す事も考えています、ご安心を」


それに対して太蔵は下衆の勘繰りだと苦笑いを浮かべていた。



「お茶よ」


ドアがノックされてアナーシャが入ってきて、ミランダーの前に持ってきたお茶を置く。

そんな彼女を横目で見ながら置かれたお茶を一口飲み干すミランダーだ。


「・・ねぇ 知ってる?日本の古いしきたり?でお茶を勧められたら、もう帰ってくれないかの合図もあるって事を?」


「・・それは 初耳だわね、覚えておきましょう」


 ・・アナーシャ それは少し違うぞ、確か古都京都のローカル風習で相手からお茶を出そうと()()られたら、会話はこれ以上したくないから帰ってくれとの意思表示だった筈だ。現物のお茶を出しての話ではない筈だ。


「・・了解よ、ならば今日はここまでにしましょう。老師またお邪魔しますが、我々も急ぐ話なのでこの先時間がないのをお忘れなく」


「・・お急ぎなら、このままお国に戻られても宜しいのでは?」


しばし彼女が睨んでいたが、立ち上がり また来ますと座を外した。


 ・・お構いもせずに 申し訳ない。


そう言いながら見送る太蔵であった。



「おい アナーシャ お前凄いな、、日本人の俺さえ知らぬ事を知っていたのか! 感心するぜ」


久保田は先ほどアナーシャがミランダーに説明した事に 単純に驚いていたが、ふと 考えると、、、


 待てよ・・俺 あちこちで嫌われていたのかな?


何故か少し凹み始めた久保田であった。

アナーシャはそれに反して得意そうに喜んでいた。


太蔵等はそんな二人に苦笑いと溜息を吐き、後で彼女に正確な事を教えねばと考えていた。



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