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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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その男はゆっくりと方向を変え、素行のあまり良さそうでない数人の若者に進んでいた。


その若者数人の前に近寄るとその男は何故か冷めた目で、しゃがみ込んでにやにや笑いながら男を見ている若者たちの前に静かに立ち止まる。


「・・おい おっさん、何か用か?」


口元は3名の若者たちは笑ってはいるが、目付はかなり険しい顔である。

場合によっては直ぐに噛みつく狂犬にも似たその3名だ、普通の常識人なら近寄りたくないタイプの人間であろう。


「お前たちに聞きたいが、今年は昭和・・いや西暦で何年だ?」


目の前の可笑しな服装の中年男はそんな彼等の雰囲気など気にもかけぬ様子で突然の質問を投げかけてきた。

一瞬何故に下らぬ質問をしてくるのかと若者達が相手の顔を睨みつけていた。

若者の口元からは既に笑いが消え、目だけがギラついている。


「・・おい おっさん、人に尋ねる時は何か手土産の一つでも持ってきたらどうだ?」


3名はゆっくりと立ち上がると、体からいやな雰囲気の匂いを漂わせる。


 ・・ふむ それもそうか


その男は上着のポケットから何やら探し出して3名の前にかざす。

その男の掌には何個かの宝石と思われるものが見えていた。


「・・本物か?」


本物なら貰う、偽物ならそれなりのお礼をするとばかりに目が更に険しくなる。


「そうだ、今年は西暦何年だ?」


再びその男から同質問が出てきた。


「・・201✕年だ」


その男を睨みつけながら若者の一人が用心深く答えていた。


 やはりか、、すると俺はSF小説もどきのように日本の未来に来た?!


その答えに半分予想通りと男は少し考え込んでいる様子であった。


 それにしても予測より更に年が経過していたな、、俺は此方の世界では80前の爺さんなのか?


浦島太郎の昔話ではないが、どうやら実年齢より倍の歳がこの世界では時が経過しているらしい。

やがて無理やり納得するようにその男は簡単な礼を言い、先ほどの品をポケットに仕舞いこむとその場から離れようとする。


「お おい おっさん!少し待てや」


質問の礼にその宝石?らしき物を置いて行けと片手を前に出し、掌を広げて見せた。


「うん?この品か、俺はお前たちにあげるなど一言も言っておらん」


平然と男は言い放つと歩き出しそうになる。


「待てといってるだろう、このくそ野郎!」


途端に切れた声がひびき、中年男の肩に手を置き引き戻そうとした。


 げっ・・


その中年男に手を伸ばした若者が腹を押さえ地面に崩れ落ちた。


 この野郎 よくも!


途端にそれに瞬間的に反応して残りの2名がその男に飛びかかろうとした。


「待たんかい! 暴れるんじゃない」


若者の後ろから更に雰囲気の悪そうな男が出てきて若者達を止めた。


「あ 兄貴、この野郎が約束を破り、政男を殴りやがった。


「騒ぐな 少し前から何となく様子は見ていた」


「な ならば兄貴 この野郎を・・」


「黙れと言っているだろう!」


後から出てきた男が倒れている政男を跨いでその男に近寄って来た。


「なぁ 可笑しな服のあんた、いくら対暴法が出来たからと言って少しやり過ぎだろう」


 ・・タイボウホウ? 何の事だ?


その男は不思議な言葉を聞いた様に人相の悪い男の顔を覗き込む。


「人を小馬鹿にした真似はよしてくれないか、法改正により少し動きがとりにくくはなったが、俺たちの本質はそうは変わっちゃいないんだぜ。素人が舐めているととんでもない事になるぞ」


一層の凄味にも近いオーラをまき散らし始めた男を、歯牙にもかけぬ様子で可笑しな服の男は平然と聞き入っていた。


「・・まったく 素人にしては度胸がありそうだが、そのポケットに入っている物すべて置いて立ち去ってくれ。ここでのびて居る政男の治療費だ」


有無をいわさぬ暴力的な気迫が辺りを包み始める。


「いやだ、何故渡さねばならぬ?」


それに対してその男は平然と拒否をする、あまりの当然たる態度に顔を少ししかめた兄貴分である。


「・・そうかい 分かってもらえぬようだな、、事務所の中で話し合おうじゃないか」


兄貴分の男はその男の腕をつかみ奥にある事務所へ案内しようとした。


 ぐあっ!


腕をつかんだ瞬間にその兄貴分の男は崩れ落ちていった。


「あ 兄貴!  おーい誰かいないか・・・」


後ろに控えていた若者たちがこの状況に慌てて大声で仲間を呼ぼうとしたが、二人共最後まで応援の言葉を発することが出来なかった。


いつの間にかその男が二人に近寄り何かをしたらしく、二人は意識を失い倒れていく。


「ふん 口ほどにもない,かえって手加減の程が難しいわ」


一瞬で4名が倒れている地面を見ながら立ち去ろうとした男だが、ふと足を止めて振り返る。


 ・・うん そうだなこの世界で利用できそうな組織の一つかな?


何かを少し考えていたが、立ち去るのではなく奥にある一般人は近寄りたくない構えのビルへとこの男は足を進めていった。






「老師、明日総幕僚長が基地の方に来られて、老師と面談希望でありますが、ご予定のほうは?」


大宮が携帯に入った連絡を太蔵に伝え、明日の老師の予定を確認していた。


「ほう お久しぶりですな、希望時間は?」


太蔵は久しく会っていない大滝の名を聞いて微笑んでいた。

何か相談かこれまでの武器開発の経過が聞けるものと感じていたのだ。


翌日 大宮の運転にて太蔵と弟子たちの4名が麓にある自衛隊基地へと向かう。

基地の受付で隊員が太蔵達を挙式で出迎え、基地内部へと入っていく。


「なんか 俺達は少しは有名人になったのかな?」


久保田が衛兵の対応を見ながら感心したように呟くが、他の者達は苦笑いをしているだけだ。

大宮の案内にて例の防音室へと向かい待機していると、やがて大滝と倉田の二人が現れる。


「「老師 お久しぶりです、お元気でしたか?」」


半年ぶりの再開になる、互いに挨拶を終えて話し合いが始まる。


「老師 まずはこれまでの武器開発の経緯をご説明します」


この基地のトップである倉田が老眼鏡の眼鏡をかけて書類に書かれている武器の進捗状況を丁寧に説明し始める。


「・・成る程、思ったより順調で安心しました。少し気になる点は新武器開発において公に現在できない武器があるとの事でしたが・・・」


倉田が大滝の承認を取るように大滝の顔を横目で見た。

それに対して大滝は静かに頷く。倉田が少し声を落とし気味に続けて話し出す。


「・・実は対ロケット及び大陸弾道弾の破壊武器に着手しております」


 ほう・・太蔵達は嬉しそうに微笑む。


「米国製の防空システムであるイージス・アショア導入を政府が考えていましたが、今回新兵器システムの開発によりそれに代わる防空武器と首相も判断してくれました」


「それは・・是非ともこのまま開発への努力を期待いたします」


「はい 必ずしやこの日本を防衛する為の努力は続けていきます が・・・」


突然歯切れが悪くなってくる、何か問題が?


「は・・い、この開発に関して米国が動き出しましてね、つまりこの兵器の内容を知りたがっている訳ですな、最悪共同開発の働きがけが水面下にて進んでおります」


米国の横槍か・・あの国は都合の良い時は共同開発、自国の大事な秘密には拒否と対応する。

いつもながら呆れるご都合主義の塊と言える。


「・・流れは共同開発ですか?」


「いえ 当然政府は拒否しておりますが、在日米軍の一部引き上げ等の切り札もチラつかせておりまして、正直どこまで米国のごり押しに対抗できるのか不明です」


「・・・私が矢面に立ちましょう、開発者の断固たる拒否の為に調整に困難していると米国へ出来るだけ時間を稼いで下さい。正味どれほどの時間でシステムは作り上げられますか?」


「一年・・いや急かして何とかこの半年で目処をつけられるようにしてみせます」


システム自体ある程度完成すれば、米国もそれ以上は入ってこれなくなる。

後はシステム一式購入して自国にて研究開発するしかない。


「老師には多大のご配慮申し訳ありません、誠に不甲斐なくてご心配をおかけします」


制服組のトップである大滝が政府の弱腰に変わり頭を下げて詫びを入れる。


「大滝さん どうぞ頭を上げてください、首相も苦しんでいると思います。あの方も腹の中は煮えたぎっている事と思われます。ここは民間人の私で良ければいくらでも矢面に立ちますので」


日本政府としてはこの開発者とも言える太蔵の許可なくては勝手に共同開発は出来ぬ、と米国へ宣言しながら開発の早期達成に努力してもらう二枚腰外交のスタイルとなる。


当然そう宣言すれば、米国の目は太蔵への取り込み及び説得に全力が注がれる事になる。

どんな手が打たれるのか予測が出来ない、最悪非合法な事に及ぶ可能性もある。

つまり太蔵を初めとしての関係者の安全に一層注意の目が必要となる。


大滝との話し合いが終わり帰宅する太蔵は、大宮の運転する車中にて今後の対応を皆で話し合いながら相手の動きを見ていく事になった。


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