60 異世界からの訪問者編
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東京近辺のある都市の山間部にて突然の光が辺りを眩しく光り出し、やがて静かに収まっていく。
突然の光が収まると一人の男がうずくまっており、やがて僅かにふらつきながらも立ち上がる。
「くっ どうやら成功したのか? それにしても不快な気分だ・・」
男はふらつきながらも辺りの景色を眺めていた。
「何だ? 実家の古い屋敷はそのままだが、、それにしても朽ち果てて現在は誰も住んでいないのか?」
ふと 高台にあるその家からくるりと振り返り麓に視線を移してみた。
「何だ?? ここは本当に日本なのか・・・」
高台の家から目の前に広がる景色は確かに地形的には見覚えのある場所だが、窪地を埋め尽くす家の街並みが綺麗に整然と並んでいる景色であった。
「・・・遠くの山は確かに俺が記憶している山並みだが、、、」
眼下に広がる家がどこまでも続いていて、良く見れば見慣れた日本家屋とは比べ物にならない綺麗な家並みが続いていく。
日本の中でこれほど似ている外景の景色は他にはないのだが、現実と記憶のギャップに違いが大きく、つい何度も確かめていた。
「あの道路の広く綺麗な道に、車が考えられない程に走っている・・・」
その中年男性はただ物珍しそうに呆然とそんな景色を見つめていた。
「可笑しい・・確かに地形は見覚えあるが、ここにある人工物の数々は一体何なんだ・・」
日本の何処かに間違えて転移されたのかと最初は男は考えていた。
なれど自分の胸に浮かぶ山々の姿は確かに自分の住んでいた地形に瓜二つである。
「絶対にここが俺の住んでいた片田舎で間違いない、だがこの景色をどう考えれば・・・」
外の景色を見れば見るほど自分の知る景色とは別物が広がっている。
たかが10年でこれほど周りの景色が変わる事に信じられなかった。
「・・・そうだ あそこは大きな池があった場所だ、何だあの工場らしき建物は、、」
自分が居なくなった10年でこうも変わるものかと、どこかに昔の面影を探す男であった。
「おう 通っていた小学校と中学校は確かにあの場所だな・・建物はかなり近代的にはなっているが」
ビルの谷間に小学校らしき空間と中学校を見つけ、少しほっとしている自分がいた。
やがて男は踵を返すと、自分が住んでいた家にと近づいてみた。
「・・一目見た時からかなり痛んでいると感じてはいたが、近寄り見てみるともうほとんど廃墟に近い存在だ」
玄関の入り口は誰か不審者が入らぬように長い板が打ち付けられていた。
なれどその男はまるで紙を剝がすように苦も無く打ち付けられた板を撤去していた。
「中はひどい荒れようだ、、」
埃の山とよどんだ空気に顔をしかめながら内部に入っていく。
「こ この品物はいったい何なんだ?」
見覚えのある台所の場所であるが、周りには自分の知らない品が並んで埃をかぶっている。
現代の者であればどれも見覚えのある、そして一昔前のシステムキッチン・電子レンジ・食器洗浄機等が整然と並べられているだけである。
「・・わからぬ、見たこともない品だ」
さらに昔居間だった場所に移動していた。
「また わからぬ品がある・・テレビなのか?」
少し大きめの液晶テレビとビデオシステムが置いてあった、そして壁には旧型のエアコンもある。
この男の知っているテレビは真空管方式からトランジスターに移行したテレビであり、かなり肉厚な外形で依然ブラウン管方式であった。
「これはカレンダーか?」
壁に貼られた薄汚れたカレンダーには 平成10年 と記載されている様だ。
「平成? 知らぬ年号が・・まてよ小さく1998年と書いてあるのか?」
これは西暦だよな? 俺は1970年ごろ召喚されたから・・・28年経過した?
いやまて、この汚れやほこりの溜まり具合から、最低この家は廃棄されて10年は経過しているはず?
そうなると現在は2008年か・・・38年経過の俺は最低64歳?!
馬鹿な 俺は10年程しかあの世界で過ごしていないぞ。
それに俺はまだ36だ。どうなっているのだ・・・
くそぅ 街に出て正確な年号調べから始めねば・・・。
その男は軽いパニックを引き起こしながらも街の中へと方向を向けていく。
・・まてよ、このくらいの崖なら飛び降りても。
目の前には段差5メートル程の崖がある。
この高台に来るには昔ながらの狭い道を大きく曲がった道しかない。
真っすぐ飛び降りる事が可能ならかなりの短縮距離で下の道路まで行く事が出来る。
・・体はあの世界と同じく軽く動かすことが可能だな、確かめてみるか。
少し考えていたが直に決心すると男は無造作に下に向けて飛び降りた。
落差5メートルあれば最悪足の骨折もこの男の歳なら考えられるが、結果的に何の憂いもなく軽やかに下へと着地した。
「ふむ 体はあの世界にいた当時と変わらぬか・・魔法は、、、流石に駄目か・・」
男は少し悔しそうに呟いていた。
・・なれど この肉体があればこの世界でなら何とでも生きていけるな。
何やら思いついたらしく男は不吉な笑い顔で頷いていた。
おい 今時 あんなファッションはやっているのかい?
なに あれ?あんな古風な服なんて映画の中でしか見た事ないわね。
なんだ あのおっさん? 昔に聞いたチンドン屋スタイルなのか?
・・ 何だこいつ等の俺を見る目は?
男は町中に入り始めると、反対側から歩いてくる者や遠くから自分を眺めている者達によりかなり異質な者を見る視線を感じていた。
そうか、俺の服がこの世代では合わぬか、、もっともだな。
男の着ている服はあの世界では権威のある服ではあったが、この世界では周りからかなり浮いた服である事を感じていた。
ふん、お貴族様だぞ。お前等平民とは違う。
何となく負け惜しみに近い言葉を呟いていたが、自分自身この服は場違いと感じていた。
さて この服の件は後で解決するとして、誰かを捕まえて聞いてみる事が・・・
「へっ? 見てみろあの変なおっさん、笑えるぜ!」
右手奥のビルに続く小さな横道の一角の前で座り込んでいた数人の若者が、この男をあざ笑うかのような笑い声が大きく聞こえてきた。
ふむ? 何だ、ああ 何時の世にも半端な男はいるもんだな。
よし、これは丁度いいかもな。
男はゆっくりと方向をビルの奥でたむろしている若者達に向けて歩き出す。
「おい アナーシャ、俺の女にならんか?」
「ふふ いいわよ、その代わり秘密の情報教えてくれる?」
「けっ 見損なうなよ、それは無理だ」
「あら クボタ、それは残念ねこんなにいい女なのに・・」
アナーシャと呼ばれた女は自慢の自分の胸を両手にて持ち上げて身をよじる。
「お前な・・女としての慎みがないぞ」
アナーシャの妖艶なポーズに呆れながらも、久保田の目はその豊かな胸に釘づけになっていた。
「・・あの二人随分仲がよくなってきたな」
「はい 傍目にはそれなりの関係に見えますね」
太蔵と大宮は半分二人に呆れながらも口元は微笑んでいた。
「なれどうっかり彼女の手に乗ると大変ですよ」
太蔵の後ろに控えている小田切は苦虫を潰したような顔で見ていた。
「うん 流石に久保田も其処ら辺は理解している様だな」
「・・どうですかね あの女好きは、、」
「どうした小田切?アナーシャに久保田を取られて寂しいのか?」
太蔵は可笑しそうに小田切に尋ねた。
「・・老師 言っていい事の判断は出来ますよね?」
「おお これは怖い 怖い・・」
おどけた口調の太蔵に隣にいる大宮もつい笑いを嚙み殺している。
「おい 久保田! 稽古を開始するぞ」
憮然として小田切が久保田に 稽古開始を告げた。
「おお 了解だ、アナーシャ じゃあ また来週な」
小田切に答えてアナーシャに別れを告げて久保田は此方に向かって来た。
何となく上機嫌な久保田に小田切は少しイラついた顔をしていた。
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