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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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当面一週間に一回の投稿予定です。


城壁の北門から太蔵一行は初級ダンジョンを目指し出て行く。


太蔵にとって初めての異世界の風景となる。

城の東西そして南側は田園地帯が広がっているようだ。


北門からは数百米進むと 川?堀? に短い橋があり其の先は森に入っていく。

田嶋氏が森の中からは魔物が出現するので注意して進むんだ と忠告がある。


そうは言ってもこの地区は魔物と会う可能性は極めて少ない、只用意はしとけとの事だ。

田嶋が先頭に次が太蔵、そして岡田が続き最後はアレックスとなる。


森の中はそこそこに明るく過去に人が何人も歩いた形跡がある。

見通しもさほど悪くはない、魔物がどの様な姿をしているかは知らねど接近してくるのは余程ぼんやりしていない限り発見できそうだ。


二時間近く歩いただろうか、森も少し茂みが深くなった状況で田嶋が立ち止まる。

左手奥の茂みを指差し警告を発した。


「ふむ 定番のゴブリンだ。太蔵くんは見学しておきなさい」


そう言い残し剣を引き抜きゆっくりと左手に進み出して奥へと歩む。


 さて どのような魔物が と太蔵は田嶋の後ろ姿を凝視する。


突然に前方の茂みから何やら緑色の物体が飛び出し、田嶋の前に現れた。

と 同時に田嶋も動き出し剣を横に振り切った。


肉を断ち切る音と魔物の悲鳴が上がり、草むらに何かが倒れ込む音が聞こえた。


「太蔵くん こちらに来たまえ」


その声に皆が反応する。

太蔵は田嶋の横に立ち足元の緑色した小柄な体格をした死骸に見つめる。


「・・これが」


 そうだ ゴブリンだ。


田嶋の言葉を聞きながら死骸を観察する。

一目で人族とは違う様子が判断出来る、これは何だ? 元の世界で言うなら地獄の小鬼?


 いや あれはあくまで想像上の事で現実にこんなのは見たことがない。


「・・知能はどうなんですか?」


田嶋は先程から太蔵の表情をじっと観察しているような目で見ていた。


「ふむ 死骸を怖がったり躊躇う様子はなさそうだね」


にこっと急に微笑み問とは違う返答をした。


 えっ? 太蔵は何を急に言い出すのだと田嶋の顔を見つめ返す。


「練習の場では強くとも、いざ実践になると尻込みする者を何人も見てきたからね」


田嶋の横に居たアレックスが言葉を続けた。

異形の者とは言え人型に近い魔物に嫌悪感を示し、戸惑うことは生死に直結する事にもなる。

太蔵がまだ戦う事に躊躇している素振りがあるなら対応を考えなくてはいけないと思っていたのだ。


「君はまだ高校生だ、無理矢理に生死の場に連れてこられて、さぁ戦えと言われ素直に行動に移せる方が可怪しいんだよ」


岡田も補足するように太蔵に語る。


 ああ そう云う意味か・・。


太蔵とて通常であればこんな真似はお断りだ。

魔物とは云えそれなりの心づもりが出来ていなければ生死をかけたくはない。

だが心づもりとは言え、幼い頃より父や祖父に戦いの場に置いての特殊な教育を受けていた太蔵は意外と気分を切り替えるのは早かった。


「このゴブリンは知能自体は左程高くはない、独特な容姿に恐れなければ君ほどの腕を持っているならば油断しなければ問題ない筈だ」


田嶋はそう言って ぽんと 太蔵の肩を軽く手で叩いた。


確かに地獄の小鬼のような形相に断末魔の顔にて血みどろの姿を初見して平気な者は少ないだろう。

太蔵は再度軽く息を吐き気合を入れ直す。


「体力もたいして際立ってない、敏捷性も左程問題ないがこいつの厄介なのは、、」


そう言って辺りを見渡す田嶋は先の草むらを指差した。


「一体で行動する事は少ないと云う事だ」


ガサガサと何かが何体か動き回る気配がある。


「来るぞ 太蔵くん油断するな」


反射的に剣を抜き放した太蔵であった。

草むらから突然何体もの小鬼が躍り出てきた。


一体の小鬼が太蔵目がけ突進してきた、手には錆が浮いた剣を持ち物凄い形相にて迫ってきた。


 ふむ 確かに動きに機敏さはなさそうだ  


相手を出来る限り冷静に観察する。

切り込んできた相手を躱し上段から剣を振り下ろす。

手に肉を切り裂いた感触が伝わり、目の前の小鬼がブルっと震えるように倒れ込んだ。


しばしそのまま倒れた相手を確認する。

迂闊に近づいての一撃を防止する為だ、残心と呼ばれる。


無論目の端は他の小鬼を用心してそれとなく視野に入れている。

他の二体も田嶋とアレックスに問題なく倒されている模様だ。


相手の死亡を確認してようやく辺りを用心深く見渡す。

他には小鬼はいないようだ。




「ふむ 無事に倒したようだな」


田嶋氏が倒した小鬼を眺めている。


「ええ アドバイス頂きましたから」


「一刀両断だな…斬った感触はどうだった?」


「うーん あまり良いものではないですね」


「それは仕方ないな、直ぐに慣れてくるよ」


 慣れるか、、あまり慣れたくもないが。


この世界で生き延び再び日本に帰れるまでは余計な事は考えまい。

太蔵はレベル上げに集中することにした、今更引き返せぬ選択をしたならそれに従うまで。


再び隊列を組んで森の奥深くに踏み込んでいく。

ダンジョン到着までに更にもう一回魔物の襲撃があり、2体の小鬼を倒した太蔵であった。





「これがダンジョンですか、、」


森の岩陰に大きめの洞穴があり地下に向い道が傾斜している。


「ああ これが魔物が住むダンジョンだ。本日はこの入口近くで野宿になる。明日からが本番だ、食事が済んだら早めに休んで体力を回復してくれ」


持参した簡易テントを広げる、ツェルトに似た作りで頭と足の部分は視界を邪魔せぬよう切り取られており、雨を防ぐだけの簡単な作りだ。


そのテントを各方面に死角が出ないように並べていく。


 なる程 出来るだけ死角を防ぐ目的か、よく考えている。


軽減袋から水の容器と干し肉を取り出し、これまた簡単な夕食となる。


「うーん この食事は慣れないな・・」


思わず愚痴をこぼしてしまう。

皆が笑いながら頷いている、食事が終わる頃には森の中は薄暗くなってきた。

焚き火をしながら辺りの警戒を忘れない。


「夜は魔物が活発化するんだ、今夜は太蔵君以外の者にて交代で見張りをするから安心して休んでくれ」


そうは言っても流石にこんな時間から寝るには早いが…。

だがアレックスと岡田氏はテントに移動して寝る準備に入っている、夜中の交代に備えているのかな。


「どうした? まだ眠くないかな、テントで体を横にしているだけでも疲れが取れるぞ」


「良ければ一緒に暫し夜番のコツなど教えてもらえませんか?」


「おっ あまり最初から意気込まなくてもいいぞ」


それでも話し相手が出来て嬉しそうに色々教えてくれる。

太蔵にとってこれから生き抜く為の基礎知識は多ければ多いほどよい。


二人で数時間ほど小声で必要な知識を話し合う。

特にレベルアップに関して疑問だらけだし、ダンジョン内にいる魔物情報も助かる。

一通り思いつくことを確認しようやく太蔵も自分のテントに戻り、毛布を体に巻き付けるようにして眠りについていく。



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