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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
59/235

59  【第三部完】

お待たせしています。


第4部『異世界からの訪問者編』を12/1投稿再開予定になります。


もう少しお待ちください。

その男はメールで呼び出された場所へと浮ついた心を隠しながら向かっていた。


「お客さん このホテルでいいのですね」


タクシーの運転手に心ばかりのチップもはずみ、広々としたホールの一角にあるバーに入り込む。

まだ 約束の人物は到着していないようだ、隅のカウンター席に座り込むとまずはビールにて喉の渇きを潤す。


一息ついて落ち着いたころに待ち人が現れた。

その女性は落ち着いた服を今日は着ているが、基本的に目立つ存在だ。

つまり男性視線ではいい女の分類となる。


彼女は男を見つけると近寄り奥の目立たぬボックスへ移動しようと提案した。

二人してその席に座り込む。


「遅れて済まないわね クボタ」


「なに、たいした遅刻じゃなかったぜ」


女はロシア国の情報機関に属するアナーシャであり、その彼女の姿に鼻の下を伸ばしているのは太蔵の弟子である久保田であった。

女もビールにて軽く喉を潤して徐に本題に入る。


「・・少しヤバい情報なの」


彼女は声を潜め周りの様子を伺いながら語り始める。


「やばい? どんな話なんだ」


久保田は何となく予想した甘い雰囲気とは違うことに内心がっかりしていたが、心を切り替え彼女の報告を聞くことにした。


「うちのボスが逆切れしてね・・・」


「逆切れ?」


アナーシャによると、例の狂犬兄弟はボスのお気に入りであったこと、そしてボス自体が旧ソ連邦の体質を色濃く引いていて少し偏見がある事を説明された。


「・・つまりこのまま黙ってはいないという事か?」


「ふう、、何故あんな旧の遺物が今だ上のポストにいるか疑問なんだけどね」


そんな話を聞かされていた久保田は前に大宮三尉が話していた事を思い出した。

ソ連邦が崩壊して暫くたつが、体制の中には依然として旧の体質から脱却できない人物が何人か存在しているのは事実だと教えられた。


「・・昔の栄光が忘れられないとか?」


「そう考えてもらえばいいわ・・」


そんな人物は時折鬱憤を爆発するかのように、とんでもない事を仕出かすことがあると。


「今回はそのケースだと?誰か止める者はいねぇのか?」


彼女は情報部と言う特殊な存在組織の為、なかなか表立っての意見採用が困難だと言う。


「・・ただ、現在自分に心当たりの人物に働きかけているの」


 ほう、 それは助かるな・・。


「でも 直ぐに結果が出るわけには、、わかるでしょう?」


 おう、何となくだけどな。


「それで、おたくのボスは実際に何をしようと?」


 ・・どうも拉致・監禁に絡んでいそうなの。 声が更に小さくなる。


「そ それは穏やかじゃないな、で誰が実際にマークされてるんだ?」


「その肝心な事が不明なの」


彼女は交渉班に属し、荒事の実行班とは組織として別物だと言う。


 ああ、、そんな別の組織を何グループも抱えてのトップが噂のボスか?


「まぁ そう考えてもらえれば・・」


彼女も組織の人間だ、何から何まで話せるわけではない。


「可能性として高いのは、やはりあなた達3人の親族関係かな?」


 身内狙いか・・久保田は唸りだす。


彼女によるとボスは性格は旧体質だが頭自体は決して悪くない、太蔵等3名は今回の件でそれなりに懲りている節があるので、直接3名を狙う確率は薄い。

彼等3名を引きずりだす餌として身内関係が狙われそうだと・・。


「ちっ、嫌な事を聞いたな・・だが、なぜこんな話を話す気になったんだ?」


彼女の説明によると、今回の件を含めてボスは予てから行き過ぎだと感じていたのと、あの上司の存在自体の嫌悪感並びにアナーシャはこの極東の小国配属して3年が経過して意外とこの島国での生活が肌にあっている事を話し出した。


「ふぅーん、それは男を含めての事か?」


彼女はにっこりと笑う。 ちぇ、ひも付きか・・、久保田は少し落ち込む。


「取り急ぎ今日はここまでよ、老師にこの件伝えておいてね」


彼女は別の任務にこれから向かうと言う。

残された久保田も少し時間をずらして立ち上がる。


 どれ・・若干この状況が不満だが、道場に帰るか。




皆が集まり、仕入れてきた情報を伝える久保田だ。


「・・そんな手をこの現代でかんがえているとは、、」


大宮三尉が頭を捻っていた。


「まぁ、一番手っ取り早いかな?」


前回の中国の件もあり、小田切も苦い顔をしていた。


「・・大宮さん、済まないがこの件の報告と、、」


皆が考えられる身内のマークをお願いする事になった。


「承知しました、連絡を今から入れておきます」


記載した親族のリストを片手に彼は席を外した。


「老師、やっかいなことになりましたね、、」


小田切がどうしたもんだろう と考え込む。


「うむ、身内狙いは辛いな、、だが どうしてもあの国は儂を怒らせたいようだな」


太蔵の顔が怒りに満ちてきたように皆が感じられた。

こんな怒りの顔はめったに見る事はない、





皆が緊張しながらの日々が10日近く過ぎた時に、突然に久保田の携帯にメールが入る。

アナーシャからの連絡であった、前回と同じ場所での待ち合わせになり、流石に久保田も少し用心しながら約束の場所に向かう。


万一に備えて前もって大宮の依頼で専門の人間が何人かホテルのロビー内で監視となる。

今回は先に彼女の方が到着していた。


「よう、ここに座っていいのかい?」


場違いな挨拶をしながらの理由は彼女は一人では無かったからだ。

それなりの訓練を受けたと思われる、久保田と同年代の軍人上がりと推測される中年男と同行していた。


彼女はとなりの男を紹介した。

アンドロノフと名乗り基本彼女と同じ組織の上司らしい、なぜに上司と一緒なのかと彼女からの説明を聞くことになる。


その前にと、()()()の処分が決まり、東アジア地区の責任者から外されたらしい。


 ほう 随分と手際が良いが、それに関しては時間が必要なのではなかったのか?


たまたま別件の事でも報告があり、前から上部組織にマークされていたらしい。

そこに彼女からの報告も重なり、急遽彼は呼び出しを受けた。

だがそのまま彼は戻ってこないそうだ、、。


 別件? ああそんな男ならほかにも過去に何か仕出かしていたのだな、、。

 しかし そのまま戻ってこないとは?もしかしてシベリア送り?、、、。


彼女によるとまさに太蔵達に向けての作戦が実施される直前の事だったらしい。

間一髪間に合ったとの事だ。


久保田も何となく納得すると、彼がにこやかに笑いながら何か喋りだす。

彼女の通訳によると、今回の件に関しては迷惑をかけてしまった 我が国としては改めて君たちに接触させてほしい。今日はその報告を兼ねて彼女に同行している。

ミスター三橋には改めて再訪問したいので、その旨を伝えて欲しい と。


とりとめのない話を暫く交わし、男は別件があるので私はここで中座したいと席から立ち上がり出口の方に歩き出す。

途端に店内から何人かの男が立ち上がり、彼の後を追いかけていく。


 ・・・おい、彼単なる上司じゃないんだろう?


彼女は軽く目をさらに開き、笑いながら語る。


「ご推察のとおりよ」


彼女が言う事には、先に別件の報告を上部組織に報告したのは彼だと言う。

そしてそれによりあの()()()の代わりに東アジア地区の統括代理として任命されたと。


 ・・・俺に話していいのかい?


 直ぐに知れるわよ、彼は日本の高官達とも認識があるから。


「そうか・・要は 裏の組織は裏の組織が知る と言う事かな?」


 あら、クボタにしては頭が回るのね。


久保田が露骨に嫌な顔をして彼女を睨む。


「・・ねぇ それより私明日の朝まで暇なんだけど、どうする?」


何とも言えない視線を久保田に向けて流す。


「・・ちっ、男として応じたいが俺にも()()がついているんだよ。タイミングが悪いぜ、、」


「あら、、でもこの状況で一人でのそのそ来るようでは危機管理が余りにもお粗末だからね」


彼女は小さく笑い声をあげる。


 ・・うるせい、本来は一人で来たかったんだよ。


久保田は心の中で反論していた。





日本国中にて情報活動をしている者たちにとって、今や太蔵達の噂話が飛び交う。

互いの各国が虚実を混ぜながら互いを出し抜こうとしていた。


表から裏から交渉を試みていたがどの国にも太蔵は頑として応じなかった。

特にしつこいのが米国とロシアであった、その情報部のアナーシャは交渉がてらに道場にて隊員に交じり瞑想の練習をしだしていた。


これには太蔵は勿論他の者達も半分呆れても次第にその存在を認め始めていた。


「おい・・お前少し図々しくないのか?」


久保田は瞑想が終わった彼女に問い詰めるように尋ねる。


「あら いいじゃない、元々こんなのに興味があったのよ。それに交渉事に精神統一は意外と有効なのよ」


「・・・それは分かる気がするが、何もこの道場でなくとも・・」


「ふふ・・もしかしていい情報も入るかも知れないでしょう?」


 入るか! なんで悲しくてお前に情報を流さねばならんのか。


 じゃあ 帰るわね。 この調子で週に2度ばかり訪問していた。



「老師、あの女どんな魂胆でしょうかね」


「さぁて? ただ瞑想中は確かに邪念はないようだぞ」


それとなく太蔵はスキルを発動しては、彼女の行動をチェックはしたようだ。

周りの雑音にぶれずに彼女の瞑想訪問は定期的に及んでいた。


「あの女に瞑想は似合わない・・」 久保田の愚痴とも思える呟きは続く。


「いや、あの女の本音は意外と優しいのでは?」 小田切が笑いながら話す。


「馬鹿か! 海千山千の情報部員がそんな事あるものか」


 ほう、久保田がそんな事を言うとは、成長したなと太蔵は微笑む。


「それより 彼女が来る日は隊員が少し浮ついている様だぞ」


 あ あいつらは・・ 太蔵の指摘に大宮は頭を抱える。




各国の情報員が暗躍している中、信州のM重工の工場では次々に試作品が完成し始めていた。

従来と同じ威力を求めるなら、かなりの小型化の武器が可能で、それはつまり持ち運びと製造コストが安くなることになる。


兵士の持ち運べる武器関連は特に重宝して、小隊毎ひいては部隊における威力攻撃が従来の数倍にも上がる事が確認された。


少子化により毎年自衛官の定数割れが続いている現在、従来より少ない人数にて従来の攻撃能力より上がる事は喜ばしい事になる。

後は速やかに新武器への移行がどの程度進むのかが検討課題になりつつあった。


「「是非 陸さん中心ではなく、海自 空自への新開発武器を・・・」」


お偉方の定期会議は毎回この話題で占められている状況になっていた。

どの部署も人数割れに伴う補充と、国防力の大幅アップを見据えて真剣であった。


無論 陸自中心の開発ではなく全ての武器見直しに動いているのだが、予算の関係がある。

そして陸自の人数が一番多い事により火薬量調整だけで済む武器がまずターゲットになり、第一段階が進んでいる。

陸自で使用する量は人数の関係上かなりのコスト削減にも役立つためだ。


新武器開発は特に大型武器に関しての見直しが求められていた。

空自は迎撃用に機関砲から魔素による圧縮砲やミサイル変更、海自においても同等品の変更。

特に世界に名高い沈黙艦の潜水艦攻撃武器の変更。


ひいては全自衛隊共通の使用艦・機・車における燃費向上と恐らくは最高速に関する改良と・・これでもかとの変更項目の嵐に包まれていた。


出来ることから進めるしかない、速やかな変更が求められるが、国防の認識が足りなし国会議員や国民の手前、小出しにするしかない現状に置かれている。


歯がゆい思いを抱きながら自衛隊上層部の各高級幹部達は必死に考えを組み立てていた。



「そうだ これをチャンスに各武器共用化を進めていくべきでは?」


どうしても各部署に合わせた、特に小火器関連はなかなか統一が出来ていない。

大幅な武器向上が望めるなら横での共通武器も更に求められる事項となる。


どちらにせよようやく日本はようやく長い負の歴史から脱却しようとしていた。


【三部完】

【第1部完】とします。


少し休息を入れて第2部『異世界からの訪問者編』を投稿予定になります。


追伸: 【右手にサイコガンを持つ男】を11/1日午前0時に再開します。

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