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来年度の国家予算に 新武器開発の予算計上が正式に認可される。
一部の新聞にはこの兵器は何か と推測の記事が目立ち始めていた。
政府見解はあくまで専守防衛に必要な武器の開発を検討しているとの旨の応答に終始した。
これからの開発に関わることで細部に関しては現段階では公に出来ないの回答だ。
なれどある新聞社の追及は少し異常な反応で紙面を賑わしていた。
「あの A新聞社はかなり他国からの情報が入り込んでいる様ですな」
「・・はい、大陸系の裏金も動いている噂もあります」
どこの国の新聞社なんだと 太蔵と大宮が苦い顔を浮かべていた。
一時は俗にインテリ新聞と持てはやされた時期もあったが、昨今の新聞離れから始まり過去の捏造記事等の行き過ぎたモラル違反が世間に広まり、ここ何年も新聞発行数の激減が躊躇に現れた。
世間は一新聞社に操られる時代は終わったと認識すべきであろう。
このインターネット時代に直ぐにばれる捏造記事や扇動記事は通じなくなっている。
「・・無事に新武器開発が進めばよいがな」
「・・日本の新しい節目になれば良いですね」
二人は今後の我が国が変わるべく潮目に近づいていると感じていた。
「ちぇ、あの姉さんメール無視かな?」
何回となく教えられたアドレスに送信しても返事がなく、少しごねて居る久保田の姿があった。
それみた事か とそんな久保田の姿を何となく嬉しそうに観察していた小田切がいた。
「久保田、そろそろ魔素の取り込み訓練の時間だぞ」
体内に少しでも多くの魔素を貯めこむべき修行の開始時間となる。
少し気落ちしている久保田の背を押して道場に向かう二人である。
「何だと、儂を怒らせるなと? 何様だ黄色い猿め! どれほどの腕だと言うのだロシア式格闘技術を舐めておるのか・・」
ウオッカ焼けした赤ら顔の巨体の男が担当官からの報告を聞かされて息まいていた。
「ストラバスキー東アジア統括、少しあのミツハなる老人を調べましたが、かなりの猛者であった事は事実です。主に野試合ではありますが全てに勝利してその筋では高名な人物で・・」
「何年前の話だ? 報告では今年70になると聞いておる。過去の話など今更聞いてどうする?」
今までの調査票を乱暴に机に叩きつける。
「・・非公式ですが、少し前に中国の特殊班4名がそのミツハ1人により惨敗したと、、」
「ふん、老酒でも飲んで酔っ払っていた所でも襲われたのか?」
「・・いえ、未確認ですが、誘拐していた人質を輸送中の出来事とか、、」
「・・・ちっ、気に食わん。少し確かめてみるか」
赤ら顔の巨体な男は電話にて、何やら早口で指示を始め出した。
指示が終わり電話を置いた男に女が尋ねた。
「統括、もしかして今の相手は・・」
「ふん、グラナーフ兄弟だ、たまたま日本に別口で来ておったのでな」
「あの狂犬兄弟ですか、、」
女はそれ以上語ろうとはしなかった。
「老師、魔素の体内貯蔵がかなり出来るようになったのですが、、、」
高弟の二人が期待する目で太蔵を見つめた。
ふむ・・ならば、次のステップへ進むか。
太蔵は二人を自分の部屋に呼び寄せる。
「これが 魔石?ですか」
二人の掌には異世界より持ち帰った魔石が置かれた。
「現在この石の魔力は空だ、これを魔素で補充するのが次の修行となる」
「・・これを魔素で補充したら、どうなるのですか?」
「どうにもならん、なれどお前たちの体内に貯めてある魔素の数倍はこの石で代用できる」
「代用? つまりこの石に魔素が溜め込めれば体力強化のスキルが飛躍的に稼働時間が伸びる?」
その通りだ、太蔵は嬉しそうに応えた。
「えーと、老師クラスの時間延長が可能だと?」
「おっ、久保田にしては大正解だな」
何となく馬鹿にされた空気の中で久保田は笑いが引きつっていた。
「だが、恐らく苦労すると思うぞ。まぁ修行だ、頑張ってみよ」
二人は魔石を握りしめ決意の顔で魔石を睨みつける。
「そうそう、礫術はもう完成か?」
ほぼ 間違えない と二人は頷く。
「なれば よし。しかし定期的に訓練は怠るな。肝心な時に失敗すれば全て無駄な努力となるぞ」
承知! 応! 二人から頼もしい返事が返ってくる。
「なぁ 老師から今まで色々と教わっているが、まだあの老師は隠している事があるかな?」
「なんだ 久保田 急に?」
道場の片隅で座り込んで二人は話し合っていた。
「分からんが、まだあると思っている」
「その根拠は?」
「勘だ!」 「・・・・・」
「何だ その顔は?」
「・・異世界て 何か凄いな。俺も行けないかな?」
これには何とも答えられぬ小田切であった、無論99%以上の確率で無理だと思う。なれど何となくあの老師なら行く手だてを思いついているのかも とつい感じてしまう。
「まぁ その件は後日だ、今はこの石への挑戦だ」
「そうだな、、でもな、老師はどんな手段でこの世界に戻って来たんだ?」
「それは・・・」
良く考えれば、異世界の話が出た時はとにかく理解することに追われていたが、帰還の方法については簡単な説明しか聞いていなかったな そう小田切は思い出していた。
「まぁ それも後日の楽しみに残しておこう。始めるぞ」
「応!!」
二人は長い修行のスタートが始まる。
「何なんだ こいつらは?」
突然の訪問者の対応に少し気分を害している久保田がいた。
二人の大柄な西洋系外国人が道場に入り込んでいた。
前回訪問した女、ナターシャと名乗った者が通訳として同行している。
どうみてもこの二人組は正式な訪問者としては品がない。
久保田がそれを言うと少し皆から反発があるかもしれないが、、。
兎に角それほどに異質な二人組である。
二人は共に2m近い偉丈夫な体格だ。
背の高い筋肉質の男とやや隣より低いが体重がありそうな二人組。
共ににやにやと下品な笑いを浮かべ早口に何かを喋っている。
何が言いたいのかと 後ろにいるナターシャを見つめる。
少し困った表情で彼女が通訳する。
「・・・つまり、勉強の為に日本の古武道と手合わせしたいと?」
そうだと 彼女は答えた。
・・嘘だな、どう見ても喧嘩をふきかけている。
久保田はそう判断した、小さい頃から喧嘩自慢の久保田だ。
独特の修羅場には慣れ親しんでいた、その久保田が違うと判断した。
恐らく通訳役の彼女が言葉を選んで話していると理解する。
「ふーん それにしては態度がなってないが?」
久保田は警報が体内で鳴り響いていた。
用心しろと 喧嘩前の相手の力を互いに見分ける感覚が相手に要注意だと訴えていた。
「どうした 久保田」
奥から小田切が現れてきた、その小田切に向かって何やら喋る。
その口調は言葉はわかなくとも決して友好的な言葉を発しているとは思えない。
「ほう 何か面白そうな二人組だな」
入って来た小田切の雰囲気が瞬間に変わっていた。
彼も何やら不穏な空気を感じたのだろう。
二人組は小田切等に盛んに煽る口調で醜い笑いと共に大声を出す。
「泣かすぞ お前等」
久保田は反応して小さく呟いていた。
久保田の隣に小田切も並び、盛んに喋る二人組を睨みつける。
ナターシャが何か喋っているが、肝心の四人にはほとんど聞こえていない。
共に目の前にいる相手に集中し始めていた。
「騒がしい」
遅れて太蔵が道場に入ってくる。
途端に二人組の視線が太蔵に移り、いっそう大きな声で怒鳴り声に近い言葉を発し始めた。
「うるさいの、何者なんだ」
太蔵は彼等の後ろにいるナターシャに向かい尋ねる。
「申し訳ないです 老師。どうしてもこの二人が立ち合いを希望してまして・・」
ほう。 何故か嬉しそうに老師は少し微笑んでいた。
それを言葉は分からずとも太蔵の笑いから侮辱されたと感じたらしく、一人の男がつかつかと太蔵に歩み寄り片手で掴もうと無造作に手を伸ばしてきた。
何が起きたのか投げ飛ばされた本人も気づかなかったはずだ。
大きく弧を描いて大きな体が軽々と空を飛び、数mは巨体は投げ捨てられていた。
なれどその男は道場に大きな音を立てずに受け身にて直ぐに立ち上がる、しかしその顔は鬼の様な顔と敵意で太蔵を睨みつけている。
「ほほう 少しは腕に自信があるようだな」
再び太蔵は微笑む。




