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[お知らせ]
本日午前中に新連載予定の [我が特殊スキルは 精力善用] を投稿します。
朝の6時から1時間ごとに5部連続投稿の予定となります。
是非一読及び感想をお聞かせ下さい。
男が訪問目的を話し出し、女がそれを通訳していく。
「正式には後日互いの政府間において報告されると思いますが、今回は事前に親善訪問と可能ならばそちらの希望内容の確認に訪問しました」
「...希望内容とは?」
「無論 貴方が見つけたという 物質 の情報開示に関しての褒賞金額等の打ち合わせです。当国としましてはそれなりの対価を準備できる用意があります。可能なら条件をお聞かせください」
やはりそうかと少し疲れてきた太蔵である、いくらスパイ天国の日本と言えども、余りにも漏れる時間が短かすぎる。
やれやれ どうするべきかと少し考えると。
「...ちなみにですが、貴国の年間防衛費はどの程度の年間予算があります?」
「?...そうですね、およそ7400億ドルと思いますが」
すると...約90兆円になるか、、世界の軍事費の約4割を米国一国にて消費している計算だ。
「...流石に超大国の軍事費ですな」
「...恐れ入ります、それが何か?」
「その 年間軍事費を希望と言ったらどうなります?」
一瞬その意味が理解できずに固まっていた通訳だが、隣の男から何か尋ねられ慌てて二人が話し合っている。
「...ミスター三橋、それはジョークですよね」
男が呆れたように三橋に確認した。
「はい 無論です、でも半分本気かな」
どうとでもとれる反応に二人は不自然な笑いを浮かべている。
太蔵とてそれがいかに無謀な要求か理解している、ただ何となく相手の反応に興味が湧いてそんな要求をしてみたのだ。
「...つまり それなりの自信のある 品物 と理解しても?」
おっ、この女性突っ込みが凄いな。
「その件は横に置いて、貴方たちは何処までその 品物 をご存じなのですか」
「...それなりの情報は入手しているつもりです」
ふむふむ 何とでも理解できる受け答えだな。
「具体的には?」
「...かなりの いや、通常爆薬としては並外れていると理解しています」
なるほど...しばし互いに静かな緊張した無言状態が続いていた。
「...ミスター三橋、是非とも希望金額をお聞かせ下さい」
そんな重苦しい空気の中、男が再度尋ねてきた。
「お断りします、現在私の手を離れてプロジェクトは進んでいます。私の出る幕ではありません」
二人から軽い落胆の様子が浮かぶ。
その後も何とか と相手側からの説得は続いたが、太蔵は首を縦にはふらなかった。
「老師、何かとんでもないような話が出た気が...」
高弟達が呆れ共つかぬ表情で疲れた顔で太蔵に尋ねた。
米国の二人が希望する対談には遠く及ばなかったようだ、一旦は空しく引き上げていった。
「そうだな まずは前哨戦が終わった所かな?そうだ、あの通訳の女性どう思った?」
「あん? あの女か、そうだないい女だ。俺の女に加えてもいいと思うぞ」
「...馬鹿、絶対一度は死んで来い。老師の尋ねている質問とは...」
「なんだ、お前はあの女は好みではないのか?なかなかの珠だぞ?」
「黙れ、お前の色キチに付き合っている暇はない」
太蔵の質問に的外れな回答をする久保田に小田切は切れかかった。
そんな不毛な言い合いを続ける二人を楽し気に太蔵と大宮は眺めている。
「老師、先ほどの質問の続きですが、あの美人通訳の女性が何か気にかかるのですか?」
大宮が言い合いをしている二人を無視して太蔵に尋ねた。
「うむ、これは儂の推測だが、どうも主が彼女で、男は飾りの様な気がしたのだ」
「...何故にその様な真似を、、、」
「それは本人に聞いてみなければ不明だが、何点か考えられる」
まずはその➀・・・表に出たくない理由がある。
彼女はその仕事柄あまり前面に出る事を嫌っている節がある。
その➁・・・通訳にしては頭が切れすぎる。
通常の通訳は相手の言葉を正確に伝える事のみに集中するが、彼女は単に言葉を伝えるだけに終わらずに自分の意見を混ぜて伝えている様子があり、疑問にも鋭い質問をしてくる。
その➂・・・男が何となく彼女に必要以上に気をつかう。
それは彼女からのアドバイスをもらっている、または指示を待っている節が見られた。
「...お得意の心の中を読まれたのですか?」
「いや、今回はまずは相手の出方を見てみるつもりだったのでな」
裏を返せば交渉事に深く入り込む気持ちが最初からなかった事にもなる。
相手に喋らせるのが目的となり何処まで内容的に掴んでいるのか知りたかった。
当然、相手も全てを明かすまいと太蔵自体期待していなかった。
「老師、それは単なる大使館の職員と言うより...」
いつの間にか泥仕合から脱却して、太蔵の話に入り込む小田切だ。
「うむ 大使館職員は単なる隠れ蓑で、恐らく情報機関が専門の部署の人間ではないのかな」
「つまり、CIAとか言う、そんな組織か?」
久保田も興味深々に尋ねてきた。
「さて、儂は単なる格闘家の端くれだ。スパイごっこはあまり良くは知らんからな」
「・・・老師のお考えでまず、間違えないと思います」
大宮が情報機関の人間で決まりだろうと頷く、一応上司に今回の接触について報告を上げておくと言う。
「へへへ、女スパイか・・・ますます興味が湧いてきた」
何故か久保田は違う方向に一人向いていた。
この男は少し痛い目にあわぬと分からぬな・・・太蔵はげんなりとして久保田を見ていた。
「ミランダー上級捜査官、なかなか手強そうな爺さんでしたね」
車のハンドルを握る男が隣に座っている女性に尋ねた。
「ああ そうだな、武道のマスターだと聞いていたが・・まぁ初回は顔見せが出来ただけで成功としよう。今後の対応は持ち帰り検討する事になるな」
「はい、それと他国の動きが気にかかりますが・・・」
「・・まったく、この国はどうなっているのか。大手を振って他国の情報機関の人間が入り混じっている始末だな」
「・・まったくです。ここまで開けっぴろげだと何となく裏があるのかと疑いますな」
「ふう、他国とはいえ心配になるな・・・」
信じられん危機管理のなさだと二人は何度もため息を吐く。
「間違えない、米国東アジア地区の副統括を任されているミランダー マクレガムだ」
山を下り二人の乗る車が路肩停車をしている黒塗りの車の横を過ぎ去っていく と同時にその停車中の車の中の人物が電話連絡を始めた。
「・・・了解、ならば此方も当初の予定通り行動を行う」
綺麗な金髪と豊かな胸を持つその人物はミランダー達が過ぎ去り車の後塵がなくなると、ゆっくり自分の車を動かしミランダーとは逆に山へ向かうべき進みだした。
「なんだ? また外国の訪問者だと、、、」
道場に警備を兼ねて修行中の隊員からの連絡を受け、太蔵は少し嫌な顔を浮かべていた。
「はい、先ほどと同じく応接室に待機しています」
「・・了解、ご苦労様」
「「「老師・・・」」」
「やれやれ だな、仕方ないこんな日もあるものだ」
続けざまの外国人による訪問など過去経験はないが、それだけ外国に情報が筒抜けの状態なのであろう。
それにしてもこんな正々堂々と乗り込んでくるのも、呆れると言うか我が国を舐めているのかと太蔵は頭を軽く振りながら応接室もどきの部屋に向かい始める。
「お待たせしましたな。お初にお目にかかる、三橋 太蔵です」
「此方こそ急な訪問の面談有難うございます。アナーシャ グランマーレと申します」
先のミランダーに比べれば少しぎこちない日本語ではあるが、充分意思疎通に関しては問題はなさそうだ。
それにしても安全な日本とは言え、こんな山へ女単独での訪問とは恐れ入る。
女としての魅力を十分意識しての前面に出しての度胸にも感心する。
こんな男だらけの場所に場違いの姿にもしかを考えぬのだろうかと つい年寄り的発想をしてしまう太蔵である。
「・・・随分と魅力的なお方と見えるが、本日のご訪問の目的は?」
「はい 私どものボスより伝言をお伝えに」
「聞かせてもらいましょう・・」
「我がロシア国は太蔵殿と特別な取引を求めています」
長く美しい脚を綺麗に組みながら彼女は濃艶な微笑みを浮かべて話し出した。
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