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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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新型弾試験が完了後に基地内の会議室にて今後の武器に関しての打ち合わせも行われていた。

基本門外漢の太蔵達だが、各部署の高官達が色々な意見がでるのは大いに参考になる。


その中で太蔵が気になった事が何点かある。

陸自89式小銃は長い間愛用されてきたが、最近は20式小銃が完成間近であった。

89式は完成後に順に廃棄へと向かうが、この銃を再利用してガス式構造に変更する試みが出た。


ア(安全装置)タ(単発)レ(連発)3(3点発射)で有名な切り替えレバーであるが、これにイ、ロ、ハの更に切り替えレバーをつけ、現在試作機が進んでいる。


ガス圧式は当然魔素を結晶化させずに圧だけ加えていく方式で、弾倉の密閉化と機構変更が成されている。

新機能の切り替えイ、ロ、ハは順に。


イ.従来の5.5ミリ相当の威力 約百発可能

ロ.7.7ミリ相当 約80発可能

ハ.手榴弾相当 距離5百米以内にて威力15発対応可能


イロに関しては従来の30発使用より大幅に向上。弾倉に弾が無い分軽量化が可能。

ハに関しては今回の目玉になる、接近した敵に関しては威力攻撃が可能な武器になる。


機銃が一番効果的だが、持ち運びに手間がかかるし、弾薬も量が必要で重量も嵩張る。

陣地設置型には有効だが、移動しながらの制圧は荷が嵩むのだ。


1弾倉で15発相当の手榴弾攻撃は非常に使い勝手が良い。

予備の弾倉もあるし、小隊全員による連続した手榴弾攻撃は敵に対して有利に運ぶ。


但しハに関しては連射等はなく、単発発射となる。

その気になれば1秒の間で数発攻撃できる、問題なしとなる。

全ては試作品が出来てからの話ではあるが。


「一番の問題は、敵のロケット弾攻撃です」

特に空・海自より新たな高高度攻撃が可能かの打診が入る。


迎撃システムは緊急な課題として課題が上がる。

現在の迎撃武器は距離的なものと高度からの超音速落下に関してはこれと言った有効な武器が少ない。

エネルギー体の塊りに近い 魔素ならばとの期待であろう。


「...理屈上は20気圧以上に圧縮すれば秒速1500キロは可能です」


研究所長が静かに皆に説明する。


「無論様々な減衰も考えられますが、更に加圧すればロス分は問題ないと思います」


速度に関しては問題ないが、長距離となるとどれだけロスするかが現在掴めていないとの事だ。


「「何と、理論上はいけると?」」


途端に会議は色めき合ってくる。

北朝鮮の無分別なロケット発射や千発のロケットは日本に向いていると言う中国、それと敵か味方かいまいち解らぬ韓国、いつ牙を向いてくるか不明のロシアまで入れると4ヶ国の不信国家が近辺にある、そして平和ボケしている国民を守ろうと日々訓練する自衛隊には頭が下がる。


何とか有効な撃退武器の開発を是非お願いしたいものだと、太蔵は研究所の所長に自然に頭を下げて良い報告を待つしかない。




「なぁ 隣国は何やらキナ臭い国ばっかりだが、それに対応する武器が出来そうなのかな?」


久保田も会議における現在の日本の立ち位置がかなり苦しい事を認識したようだ。


「...今現在はかなり見通しが暗いが、あの所長を始め皆が頑張っている。近いうちに意外ととんでもない武器が完成するかもな」


小田切も国防のトップたちが懸命に国を憂いて、どうにかしたいと皆が懸命に考えている姿に感銘した様子である。


「出来るさ、棚ぼた といえどもあんな素材が見つかったのは、この国はまだまだ運を持っている。しっかりと国防が出来ればこの東アジア地区の流れが変わるはずだ」


太蔵もこれから5年後 10年後の日本に期待をしているし、この老骨で良ければ手を差し出す覚悟でいた。


「老師、やはり一番の手は大火器の開発が必要なのでしょうな」


「うむ、大火器が手元にあれば敵も被害が大となる認識になる、そうすると力による実行に一考する。それが結果的に互いのバランス関係を保ちえる事にもなるしな、二番目が憲法上の制約下では、迎撃システムの強化しかあるまいな」


「...近未来でも日本国民が笑って暮らせる日々が続いて欲しいですね」


「まったくだ、この数年が未来の分かれ目になるかもな...」


会議が終わり、宿に向かう車中で、太蔵達の憂いは深くなる。





宿泊先のホテルは小高い山の頂上にあり、夜景が綺麗に見える。

なれどさる二人にとっては久しぶりの歓楽街の明かりに目がくらみ、飛んでもないことを計画して実行しようとしていた。


「いいな 約束通りこの急斜面を駆け下り、どちらが先にあのネオン街にたどりつけるか勝負だ」


「うむ、負けた方が今晩の全てを支払うでいいのだな」


「へへ、 今夜は酒と女がタダになるのだな」


ホテルから麓までショートカットで斜面を駆け下りる と言う阿保らしい勝負をするようだ。

一般人では腰を落としずるずると下るしかない斜面だが、この二人は体力強化のスキルを使い一気に駆け抜けるつもりのようだ。


そんな様子を薄い水割りを飲みながら部屋から見ている太蔵だ。


「...まったく 馬鹿が二人、そんな為に教えたのではないのだが」


「いや 老師、私にはあのお二方が楽しんでいるように、どれ少し私も見学に...」


付き合い酒の大宮が興味を持ったらしく部屋から外へ出て、二人の元へ向かう。


「...これは 結構急だな、お二人共お気をつけて」


宮本は下を覗き込み、少し心配していた。

この坂で駆け出せば間違いなく転げまわる姿しか思いつかない。


「へへへ、まぁ見ていろ。行くぜ!」


久保田が声を出し、小田切がそれに応じた。


 うおおおおおー-   うりゃららららー-


けたたましい声が響き、二人は真っ逆さまに駆け下り始めた。


 な なんという体力だ、正に跳ね飛びながら駆け抜けていく...。


大宮は二人の人間離れした速度と体力にしばし見入っていた。

奇声は次第に遠ざかっていく......。



「老師、人間技とは思えませぬが、いつの間にあの御仁達は...」


大宮のなんとなく咎めるような言葉に、頬をポリポリと掻きながら太蔵がつぶやく。


 まぁ それが可能になったと理解して欲しい...。


大宮は絶対老師が何かを二人にしたと感じているようだ。


「...老師、出来ましたら吾が配下の部下達にもお願いしたいのですが」


「う うむ、まぁ 考えておくよ...」


その気がない返事にため息が出る大宮であった。


「それはそれとして、今日の新武器 いや魔素の可能性には改めて感心致しました。なにやらお偉方がえらくはしゃいでいましたな」


「うーん、思うに前の敗戦からもうすぐ70年近く、ずっと自虐史観に悩まされていたからな。少し前にあったイギリス病と根っこは一つかもな」


英国は先の大戦では戦勝国であるが、何処かの国と同じく陽の当たる歴史しか国民に教えてこず、流石に世間はあまりに都合の良い教育に疑問を持ち、隠れていた陰の部分にも教科書に乗せ始めた。


途端に隠していた非道の黒歴史が子供達に知れ渡り、若者たちは自国に対して愛国心が薄れ自堕落な若者たちが増えて、国の活力が大幅に落ち込んだ。


これと全く逆に日本は当時の進駐軍GHQによる徹底した自虐史観を教え込まれ、米国は素晴らしい 日本はだめだ と教育現場は一色となる。


かなりの徹底したGHQによる規制により勝利側の正義を押し付けていた、それは裏を返せば当時国力も身体的にも貧相で武器も劣る日本軍が散々に米国を苦しめた事も原因のひとつだろう、つまり当時の日本軍は世界でもトップクラスの実力と世界一厳しい規律のある軍であった事を恐れ、二度と米国に逆らえない方針を進めていた事には間違いないと 太蔵は思っている。


事の善悪がまだ判断できぬ子供たちの教育現場での刷り込み行為はそれなりの効果があり、戦後の日本人は自国愛に目覚めるのに今だ時間がかかっている。


なれどインターネット等により、この流れが少しずつ変化をもたらしている。

何の為に日本は大東亜戦争に突入しなければならなかったのか、学校では教えてくれない裏の情報が少しずつ知れ渡ってきたのだ。


正に戦勝国の都合の良い歴史から離れ、真の歴史への変換期になりつつある。

太蔵には幼い頃の父や祖父たちの苦労してきた歴史の生き証人から当時の事を教わってきていた。

戦争自体は褒められた事では当然ない、しかし戦勝国による他国の歴史捏造は御免だ。

良いも悪いも自国民が判断して語り伝えねばならないと思っている。

そんな世がようやく近づいてきたと感じていた。


「...老師、急に黙り込んで何かありましたか?」


「いや これは済まん、少し考え事をしてな」


大宮の言葉に我に帰り、二人して静かな晩秋の夜を味わいながら酒を酌み交わす。


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