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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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一通り 魔素の今後の展開を語った倉田陸将補はようやく本命の話へと移っていく。


「それでは当初のとおり、この魔素の利用料は得られる利益の5%にて良いと、、、」


「ああ その代わり税抜きでお願いする」


前々から報酬に関しては少し揉めていた、国からはそれなりの報酬を打診されたが、太蔵はそんな大金はいらぬと断っていた。


従来の火薬や燃料費等から 魔素に変わった事により浮いた利益金額のその5%が太蔵達の取り分と正式に合意予定となった。


太蔵からの最終回答を一応上に伝える事でほぼ決着となるだろう。

太蔵は大まかに計算して年間数億、一人当たり1億円はもらい過ぎかな と遠慮していた。


魔素により浮いた金額は少しでも自衛隊内で訓練に活用して欲しい。

当初からその予定で動いていたのだから、倉田は太蔵の欲の無さにため息をつく。


確かに計算通りにて 一人年1億の報酬金額自体は一般市民では大きく感じるが、第二のノーベルとも言える発明だ、将来世界に武器輸出となればどれだけの大金が稼げるか...おそらく天文学的な金額が太蔵に入る可能性すらあろう。


それをあっさりと断り、自衛隊内の訓練に使ってくれと涼しい顔で答える。

隣に座っている高弟二人が、何故か苦笑いをしていた。


「立って半畳 寝て一畳だ、地獄迄金は運べないしな」


この欲の無さに何とか応えようと倉田は頭を捻りながら基地へ戻る。




「なぁ 老師、本当にあんな金額で良いのか?」


久保田は思ったより金額が少ないと太蔵に何か訴える目をしている。


「黙りなさい 年一人1億円以上はあると思っている。それも税抜き金額だぞ、これ以上の金額は強欲と世間様から笑われるぞ」


確かに現在この高弟二人はほぼ収入は0である、それから考えれば欲をかくのが間違いの元となる。

そのあたりは二人共理解している、だが動く金額が大きくてつい欲が出るのだろう。



「さて、そんな事より以前約束した事を覚えているか?」


二人はさて 何の事だと互いの顔を見合わせる。


「...老師 もしかして体力強化の件ですか?」


小田切が思いついたように太蔵に尋ねる。

にっこりと笑いながら懐から二枚の掌に収まる用紙を取り出した、それは汚れや水対策であろうかカード用ラミネーターで包装されていた。


「何だ これ?」


裏返してカード大に書かれている現物を確認する。


「おお、魔方陣か!」

「もしかすると体力強化の?」


昨夜ほぼ魔力を使い果たして1枚の魔法陣を作り出した。

それをコピー機を利用して縮小してパウチしたのだ。


「...こんなに小さくて効果あるのか?」


久保田が心配そうに太蔵に問う。


「魔方陣は答えを導く公式と考えればよい、最終的にはそれに当てはめて計算せねば答えは出ない。つまり後は二人の努力にかかっておるが、まず問題は無いと見ておる。二人は魔素を循環して貯めこむ事も覚えておる。なんの憂いもあるまい、さぁ それに魔素を流し込んで見よ」


二人はゆっくりと頷き、それぞれのカードに魔力を注ぎ込み始めた。


「「うおおー-」」


途端に二人は体内の奥から溢れるばかりの力が沸き上がってくるのを感じられた。


 この力は何だ? どれだけ暴れても疲労など感じないと......


「「老師!!」」


「うむ 二人共成功したようだな、おめでとう。ちなみに素の状態より4倍のパワーが出るようにしてみた。残念だがそれ以上は儂の魔力では足りなかったわい」


老師の魔力をして限界だったと言う、なれど素の4倍となればとてつもないパワーとなる。

元々二人は体力自慢、それが太蔵の元で何年も修行を積んでいる。


この二人はベンチプレスで150キロは楽々と上げられる、それが4倍の力となれば...走力も百米を12秒前後で走れるなら、今後は6秒台が狙える。


「...問題はその状態がどれほど持続可能かだが」


持続時間は体内にどれだけ魔素を蓄えられているかで決まる。

蓄えている魔素量が多ければ持続時間も伸びていく。


「「少し外で動いてきます...」」


二人は大人しく出来ずに外へ飛び出していく。

外では二人の楽し気な声が響き渡っていた。



「老師、魔力が切れたみたいだ...」


暫くして久保田が道場に帰って来た。

チラリと太蔵は道場に掛かっていた時計をみる。


 ふむ...約15分かな。


その後小田切も残念そうに戻って来た。


 小田切は20分と言う所だな...。


これからの修行は体内にどれだけ魔素を貯めこませる事が出来るかの修行になる。

太蔵も試しに魔法陣を利用してみたが、最低1時間は持続が可能であった。




次の日の早朝、高弟二人の依頼により太蔵は立ち合いに応じていた。

泊まり込みの隊員達の目覚める前に庭でと始めたのだが、異様な雰囲気を感じたのか何人かの隊員が起き出していつの間にか見学していた。


これまでは高弟二人を同時に相手していたが、流石に今回は無理であろうと一人一人と組み手稽古となる、小田切にしても久保田にしても 体力強化によりとんでもない動きを可能にしていた。


うかうかすると強烈な一撃を喰らう事になる。

それでも一日の長により、二人の攻撃を何とか凌ぎつつ撃破する事が出来た。


周りで見ていた隊員達が呆然とそんな稽古をただ眺めていた。

彼等にすれば目で追う事で精一杯の状態で、どのような攻防戦があったのかは正確には認識できず、言葉もなく太蔵達の稽古を見つめる。


「...くそう これでも老師に届かぬか」


悔しそうに久保田は荒い息を繰り返していた。

小田切も短時間のうちに流れ出る汗を拭う事なく項垂れている。


「儂の動きについてきて、かつ攻防できるのはある意味凄い事だぞ」


太蔵も久しぶりに息が弾んでいた。

今までの様に二人同時での稽古はこれから無理があるなと呟く。

最終手段の 体力強化のスキルを使えば可能であるがそれは人外に値する、最後の奥の手として持っていればいいと思っていた。


この所世界は何か不穏な動きが多い、本来なら高弟達の力など不用なものだが、太蔵は何かが今後この先起りそうな気がしていた、もしかに備えるのは何時の世でも変わらぬ必要事だ。




数か月後。大滝総合幕僚長の招待により富士の総合演習場の一角にひっそりと太蔵一行は姿を現した。

他には自衛隊の高官達と次官そして研究所の所長等数名が参加している。


これから始まるのは迫撃弾に結晶魔素を5%従来の火薬に混入した新型弾のテストになる、その他に何種類かの配合された弾が用意されていた。


「では 始めてくれ」


大滝の掛け声にて2名の隊員が用意してあった、60ミリ迫撃砲に今まさに弾丸を落とし込む。


ドオーン と腹に響く音が鳴り、砲弾が山なりに落下し遠くに着弾する。


「今のが通常弾です、あの着弾時の威力を覚えていて下さい。次に改造弾1です」


同じ音と同じ距離に着弾するが、威力は桁違いであった。


「うおっ、先ほどとはまるで違う!」


久保田が着弾時の破裂音や砂煙の上がり方が別物だと驚いていた。

爆風による砂塵が舞い上がる。


「ほう これは81ミリに匹敵、いやそれ以上の威力だな」


高官達も皆が感心してその威力に驚く。

60ミリは個人用に携帯に便利な面、弾の届く距離や威力に現代戦では少し難がある。

それが威力に関しては改造弾1においてクリアされた。


「次の 改造弾2 準備」


続けて発射された 改造弾2は発射からその違いが判明した。

発射音が大きく弾の飛ぶ勢いがまるで違う。はるか遠くに着弾爆発。


「弾の推進火薬に3パーセントの魔素を混入しました。それにより60ミリ弾の欠点の飛行距離が大幅に改善されています」


ほぼ正規品の倍近い距離を稼ぎ、欠点がかなりカバーされる。


「当然混入する魔素を増量すれば81ミリ砲に匹敵する距離は出せますが、60ミリ発射筒は軽量で肉薄ですので耐えられないと思います」


60ミリ砲は一人一つを背負って移動できるが、81ミリ砲は数倍の重さがあり、小隊で分解して一つを皆で運ぶことになる。


弾の重さも数倍、飛距離や威力はあるが運べる数と弾に制限が多い。

陣地設置型であれば問題はないが、小隊移動時には難がある。


「魔素の量を多くすればさらに小型弾が可能で、運べる弾数も威力も増えます」


「最後に改造弾3になります...」


改造弾2に匹敵する飛行距離であったが、更に大きな着弾爆発が響き渡る。


「これは...ほぼ100ミリ弾の威力だな」


呆然と皆が見つめていた。

太蔵達は素人であるので細かな判断は出来ないが、改造弾3は魔素量をさらに増やした様子だと理解した。

それぞれの思惑が込められた当日の新型弾試験模様である。


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