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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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新工場見学の騒動から道場に帰り着き、ほぼ二ヶ月太蔵は派遣された自衛隊員に魔素回収に必要な基礎を教え込んでいた。


普段肉体を錬上げるのが主な行動の者達にとって、精神的な方面の訓練はかなり戸惑っていた、勝手が違うためかなかなか目に見える成果が伴わない。


 ふむ 少し方針をずらして教え込むかな  チラリと隣にいる久保田を見た。


 うーん この久保田でも覚えた事だし、切っ掛けがつかめれば後は早いと思うが...。


隣で久保田が 何やら感じたのか 少し怪訝そうな顔をしている。

自衛隊員の為に太蔵は一つ考えている事を実施するために自室に籠り何やら始めていた。


あまり使った事がなかった 劣化版 創造魔法 を練り込んでいるのだ。

初期の頃 この魔法を使い兵士用のソードを1本作っただけで、当時の太蔵の魔力をほぼ全部を使い切り、かなり効率の悪い魔法で往生した記憶がある。


あれ以来 この魔法は使用しておらず、封印に近い状態であったが今回久々に使用してみようと思い立つ。

これにはもしかして小田切達二人の体力強化に使えないかと前に考えていたので、まずは手始めとして隊員の為に試し結果が良ければ次のステップに進む予定にしてある。


懸命に太蔵は頭の中で創造の為の具体イメージを組み立てていた。


 ...どうだ こんなイメージで。


汗が流れ出す程にイメージを作り上げ、魔力を叩き込む。

かなりの魔力と引き換えにそれは出現した。


 ふう 半分以上の魔力を吸い込まれた気がするな...。


この世界では異世界と違い時間経過と共に魔力は回復してくれない。

常に使用した分は自分で補充する必要がある、自分の体に蓄えることの術は、この50年の修行にて覚え込んでいる。


出来上がった品は、異世界では馴染みのあった符魔紙 であった。

これを用いて効率の良い魔素回収の手助けに利用してみる。

あくまでも手助けの為に作成したので、これがあれば誰でも立ちどころに魔素回収 の技が出来る物ではない、恐らくそれが可能なのは現在の太蔵の数人分の魔力消費が必要と思われる。


 さて、確かめてみるか。



 な なんですか この魔方陣のような物は...。


集まった隊員達が興味深く符魔紙を見ていた。


 事実 魔方陣なのだか。


彼等は体内にて魔素を感じる事までは覚え込んでいた。

この先は言葉で尽くしても限界がある、感性の問題もあるがどう具体的に魔素を出現させるかは各自の個性にも関わる事になる。


「飽くまでこれは手助けと思って欲しい、これに魔素を流し込むイメージで魔素の体外出現の補助として利用してもらいたい」


隊員が交代でまずは符魔紙に魔素を流し込むコツを覚えていく。

これに関しては皆がすぐにそのやり方を習得する。


 あっ、 何か体内で激しく動き回っています。


今までのぼんやりとした魔素認識から、存在がはっきりと感じられる段階には進んだようだ。


 うん これならもしかして...


何人かの隊員は早くも次のステップに向けての切っ掛けが掴めてきたようだ。


 頑張れ 若者たち、間違いなく完成までは近い筈だ。




「なぁ 老師、あんな便利な物が出来るなら、早くから欲しかったのだが」


案の定 久保田が少しごねていた。


「間違えるな、お前たちは元々の修行の中で基礎は教え込んでいたが、彼等は違うだろう」


それに対して思いついたようで、自分の膝を叩いて合点する。


「ああ あのチャクラ(車輪)を回す修行を...」


「そうだ、あれだけでかなりの手間がかかった筈だな」


 うん あれは苦労した...


二人は太蔵から教え込まれた技の一つに精神安定の為に、第一チャクラを回す修行があった。

あの修行が 魔素回収 にかなり役立った筈だと太蔵は説明する。


本来は第二・第三チャクラの解放が進めば更に良かったのだが、修行僧にはなりたくないと言う二人の訴えでその後は中止になっていた。

今回の符魔紙にはその第一チャクラを回す補助が組み込まれていたのだ。





その後更に数か月がたち、10名の隊員たちは無事に巣立ち、研究所の方へ移動となる。

正直言って彼等10名揃っても太蔵一人が作り出す魔素量には追い付かなかったが、危険な魔素の陸送からは解放され、研究所内での供給が安定する方が色々と便利であった。


実地で魔素製造に関われば自然にレベルも上がっていくだろう。

やれやれこれで一安心と思う間もなく、新たに10名の隊員が派遣されてきた。


少し国は欲張りではないかと、不満が皆から出たが国より隊員たちの育成のお礼として1億円の現ナマの前にはいつの間にか黙り込む3名であった。



更に数か月経過したある日、突然の電話アポと共に、基地のトップが訪問してきた。

いつにも増して真剣な倉田将補から、太蔵達はとんでもない情報が飛び込んで来たのだ。


「...魔素の結晶化に成功ですか?」


当初何がここまで倉田を興奮させられている内容か不思議そうに聞いていた3名であったが、遅まきながら言わんとする事が理解できた。


「「...そうか ノーベルか、、、」」


太蔵と小田切は唸りながら はたと膝を叩く。


「...ノーベル?」


久保田はまだ事の重大さに気づいていない。


「久保田、何故にノーベル氏はここまで後世に名が残ったか分かるか」


「...確か 何かを発見して、大金持ちになったと習った記憶がある」


当時爆発物として有名なニトログリセリンは取扱いに難があり、その威力の為に死傷事故が多発した。

彼は液体のニトロから持ち運びや安定供給に便利な粘土状の安定化した事により、多大の富を得た。


「...つまり気体の状態から粉末化になった事で、、、」


とてつもない利便性が開発された事になる。

第二のダイナマイト発見と呼んでもいい程の事だと陸将補は説明した。


「その結晶化はどのようにして開発されたのですか?」


太蔵には今後の金儲けより、開発工程に興味が移った。


「それが、まったくの偶然から見つかりました...」


倉田の説明によると 魔素 の加圧試験を行って、エネルギー効果の検証を行っていた時に50気圧を越した所で結晶化が始まったようだ。


慌てて試験が中止になり減圧するも、魔素の結晶化はそのまま残り元の気体には変化しなかった。

これは何だと その結晶体を懸命に分析し活用方法を模索する。


まずそのエネルギー体の威力はTNT火薬との重量比が5千倍の高値を示した。

そしてその結晶体は水やガソリン等に綺麗に溶け出す性質がある。


「待ってくれ、TNT火薬の5千倍の威力とは...つまり」


「...私の聞き間違えでなければ、広島の原爆投下型は約15キロトンと推測されていますので、約30キロの結晶体があれば同威力を発揮するものと、、、」


「30キロで広島型と同威力...」


「はい、只今の核兵器はその時代より遥かに威力は上がっていますが...」


放射能に関しては発生しないようだが、一般兵器としては突起した威力となる。


「うーむ 開発には十分なご配慮をお願いしたい」


「当然です、それに一番の利点は武器の小型化が可能になります」


例えばと 少し大型の手榴弾1発で、場合によっては戦車の120ミリ砲の威力に匹敵するだろうと将補が話し出す。


簡易型のバズーカ砲を開発すれば持ち運びに有利になり、尚弾の持ち運びも多くなれば小隊毎の戦闘力は桁違いに向上する。


ましてや簡易自動小銃のガス化によりどれだけの威力やコスト削減が各武器に可能か...将補は熱く語り始めた。


その勢いに3名は迂闊な言葉をかけられずに、只聞き役に徹していた。



「...これはつい 年甲斐もなく熱くなりました、なれどもうひとつ 燃料系に混ぜる事により高オクタン価が実現し、特に空自における戦闘機 陸自の戦車等の車両燃費向上と最高速の大幅な.......」


将補の説明は止まりそうにない、つまりそれ程 魔素の粉末化は劇的に自衛隊内の装備強化に役立つ事になるのだろう。


もう暫くの辛抱だと、太蔵等3名は互いの顔を横目で見ながら頷き合う。



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