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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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最後にお知らせを記載しています。

道場に帰り着いた太蔵達の生活環境が変わり始めた。


門下生が途端に増え始めたのだ、これは一般人が弟子になったのではない。太蔵について魔素回収の技を享受すべき自衛隊内の特殊な人物たちが10名選定されたのと、万一に備えての太蔵の警備兵も兼ねていた。


彼等は修行の目的とのお題目により、道場へと住み込むことになった。

流石に手狭になり、新しく道場も国の費用にて増設となりその工事が日中音を響かせている。


それともう一つ麓の町中に新設道場も建設中となり、今後一般生徒たちは新別府流15代当主に正式になった三橋 新伍を中心に構えていく事となる。


ほぼ一月にて太蔵達の道場は突貫工事は完了され、ようやく落ち着いて預かっている自衛官達の修行が本格的に開始されていた。


「なんだかな...ずいぶん道場の様子も変わったな」


太蔵を始め小田切・久保田の3名は完成した建物をぼんやり眺めていた。


「...まぁ よい、取り立ててやる事はそうは変わらん」


修行の最中に一台の車が到着し自衛官の制服を着た人物が道場に入って来た。


「老師 お久しぶりです」


この所顔を見せていなかった大宮であった、対応に出てきた太蔵と久保田が大宮を一目見て驚きの声を上げる。


大宮本人であることには間違えないのだが、装いが変わっていた。

しや、正確には彼の階級を示す階級章が変わっていたのだ。


「大宮君 もしかしてこの度...」


「はっ、お陰様でこの度3等陸尉に昇進いたしました」


「おお やはり、おめでとう! いやまて...3等陸尉となると」


「はっ、3階級特進となりました...」


とんでもない躍進となる、流石に太蔵も驚いて目をむいた。

戦時中に戦死してもせいぜい1階級か2階級の特進しかない、陸曹長・准尉・3等尉と大宮は途中を飛ばして少尉クラスに昇級したのだ。


「これも老師を始め皆様方のお陰であります」


大宮は今回の昇進について簡単に説明してくれた。

一番の功労は老師と交わり国に対して、今後どれほどの利益を与えてくれるか解らぬほどの功績に対しての2階級特進であったが、今後大宮の業務が老師達の日夜を問わぬ連絡係及び直接警護の気の休む間のない特殊任務に特化することを承諾した事による、更にもう1階級の特進に及んだ。

裏を考えればかなりの激務が今後待っている事になる。


それと太蔵はもう一つ思いつく、前に太蔵達の連絡役として士官クラスを打診されたが、それを断って大宮一曹を指名した経緯があった。


恐らく上層部はそれに対して自分等の拘りも形にしたのでは無いかと考えた。


今日はその報告とお礼を兼ねての訪問で、さらに少し錆びてきた自分の体を任務に合わせて稽古をして鍛えなおすつもりであると大宮は頭を掻いていた。


とに角喜ばしい事である、稽古は明日からでも本格的に始め、今日は上京以来暫しお互いに色々あった事に話し合おうと太蔵は提案して奥の部屋に高弟二人と計4名にて打ち解けていた。



「成る程、来月にもM重工の新施設見学が予定されているのだね」


「はい 今後は老師の 魔素 はこの会社の新工場にて隔離生産が起ちあがります。その施設の落成記念及び施設見学が主目的になります」


「かなり厳重な体制になりそうだね...」


「...はい、流れてくる噂では徹底的な秘密保持がもたされ、組織人も厳選された者が選ばれたようです」


「この道場にも軍の特殊車両が週2回ほど来ては、魔素を詰め込んだ車両が往復しているからね」


特殊な小型タンクローリー車に化けた車両に太蔵達が 魔素 を注入していく。

最初は太蔵が主として注入していたが、この所高弟達の腕も上がり、太蔵一人では時間のかかる仕事が3名にてかなり短縮でき始めていた。


今いる10名の隊員たちがそれなりの腕前になれば、その秘密工場へと派遣されるらしい。

その日までは当面ひっそりとこの道場から 魔素 が運ばれることになる。


小型タンクローリー車に魔素を注ぎ込む事により月に1千万の報酬が約束されている。

当面の小遣い稼ぎで申し訳ないと基地の将補からも電話口にて詫びを入れてくる。


つまり月に8回ほどの作業にてコンスタントに月に1千万の臨時収益がある事になる、それを太蔵は4等分にする。

基本税のかからぬ金であり、それ故に口座には収める事はしない。


分配は太蔵等3名と三橋 新伍への取り分としている。

当初 新伍は得体の知れない金は と拒んでいたが、当面の間だけの報酬として無理やりに近い形で納得させて受け取っている。


月に一人250万円、こんな山の中では使いようもなく、酒屋に連絡して高級酒を運ばせるのが精々だ。

只道場には若い衆が10名いる、夜番以外は飲みすぎないように注意を与えて好きにさせている。

よく飲みよく稽古すれば良い、弛緩は頂けないが緊張も続かない。

何事もほどほどである。




「ほう こんな山の中で...」


信州の街から外れた片田舎の山中にその建物はあった。

途中の道路は私有地であり、一般車の通行は禁止になっている。


高い壁の上には赤外線カメラと思える監視カメラが数台設置されていた、ゲートにはガードマンに扮した自衛隊員が常に数名配備されている。

入口の近くに警備室があるが、恐らくその中には銃火器が隠されているものと思われる。


大宮三尉が身分証明書とこの施設内の立ち入り許可書の二つを提示してようやく一行は中へと入りこむ。

玄関の入り口まで数百米程あろうか、広い敷地のその玄関に車を横づけする。

連絡が届いていたのか迎えの者が2名待機していた。


年配の御仁がこの施設の副所長とベテランの主任技師と名乗る者との二人であった。

ここの所長は本社へ緊急の打ち合わせにて不在で、代わりに副所長の飯田が一行を出迎えてくれる。


互いに挨拶が終わり、太蔵等は案内と共にこの施設の内部を見せてもらう。

正式な落成記念は一週間前に終わっている。


太蔵は敢えて日にちをずらして訪問することにした。

一番の理由は目立ちたくなかった事に尽きる。


当日の盛大なセレモニーや人波を警戒していたのだ。

この先何処で太蔵等の姿形を部外者に覚えられたくなかった。

ある程度落ち着いた後に訪問をしてみる事になったのだ。


各施設の説明を聞きながら太蔵はゆっくり思念の発動を開始していく。

それぞれの部屋にいる研究者や技師 それに警備の者にも注意深くスキルをぶつけていた。


それは4Fの研究室に立ち寄った時に起った。

研究員一人一人に挨拶とこれからの苦労を労わる言葉をかけていた時に一人の女性に反応した。

横にいた案内役の主任技師にそれとなく彼女の名前を確認してみた。

さらに雑用にて働いていた男性にも名前の確認を行う。


その後一通りの見学を終わらせ、会議室にて一休みをしている間に太蔵は大宮経由にて基地の倉田将補に電話相談を行い、全ての一任をとりつけ2名の者を会議室に呼びつけた。


もうすぐ退社時間も近い、突然の行為に副所長等も困惑していた。

呼び出された二人は不安げな顔で何事かと態度に出ている。


目の前に居る二人に 太蔵はにこやかに対応していく。

雑談形式にて始まったが、少しづつ深く会話が入り込んでいた。


「...そうですか、所でお二人は最近何かお困りになっている事とか、心配事などはないのでしょうか?」


その言葉に反応して僅かではあるが二人とも動揺のオーラが現れる。


 やはりか......


太蔵は間違いなさそうだと確信に変わっていく。


「そうですね...例えば何処かの出身国の者が接近してきたとか、実際に身内の方に危害が及びそうとか...」


途端に更に黒いオーラ-が二人に浮かび上がる。


「「...いえ  そんな事実は 」」


「...北の元赤い国とか、大陸のC国とかが接触してきたかと言う話なんですが、、」


必死に感情を隠し二人とも否定するも、オーラ-は黒々と駄々洩れ状態になる。


「...あのう もう退社時間が近く、子供の迎えに遅れるわけにはいかない......」

「私も 今日は早めに帰らねば,妻との約束があるので...」


同時に会話を何とか中断して立ち上がろうとするが、高弟の二人がその肩を後ろから押さえつけ、動きが止まる。


「「な なにをするのですか!!」」


慌てて抗議口調の声が会議室に響きだす。


「それは...お忙しい所を申し訳ないが、少し帰りが遅くなりそうですな、、」


太蔵は顔をしかめてまだ終わっていないと二人に語りだす。

何の事か状況が判断できずに突然の展開に、副所長と主任技師の二人は完全に困惑して戸惑っていた。


短編を投稿してみました。


「小林 健一郎  怪奇談(妖狐編)」 短編と言いながら少し長めの文章で、1話完結をテーマにしていますが場合によってはシリーズ物にしようかなとも考えています。


一度検索して頂ければ幸いです。

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