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今後週に数回の投稿予定になります。
魔素回収の訓練も佳境に入っていた、嬉々として訓練に弾む二人も成果が見え始めていた。
太蔵が回り道をしながらようやく50年費やして覚えたコツを惜しみなく二人に教え込んでいる。
二週間後の午後一番に軍服姿の大宮一曹の運転する車が太蔵たちを迎えに来た。
三名は乗り込むと基地に向けて移動していく、途中で今日の予定を簡単に説明を受ける。
はっきりとは言わぬがそれなりの制服組と背広組の重鎮が集合しているようだ。
久保田が何が気に入ったのか、にやにやとその話を聞いている。
隣の小田切は恐らく魔素回収のお披露目が出来ると喜んでいるのだろうとチラリと彼を見ている。
基地の守衛に短く対応すると大宮は基地内に入り込み、離れた場所の一角に到着する。
ここは... 質問に答えて 射撃訓練所になります と短く答える大宮であった。
その入り口には2名の兵が姿勢を正して待機していた、その兵達に一言 二言話しかけ徐に扉が開かれその中へと進む太蔵達。
暗所に近い建物の中は明るい電灯が灯され、見るからに高官らしき7.8名の人が時間つぶしの談笑をしていたが、太蔵たちの到着が分かると ビリっとした空気が流れる。
彼等の前に進む太蔵達を品定めするかのような視線も感じられた。
「おお 老師 お久しぶりです」
一番に近づいてきたのは前回面識のある飯島一佐であり、簡単な挨拶の後に後方に控える各個人の紹介に入った。
最初にこの基地のトップでもある 倉田将補 で、にこにこと何故かとらえどころのない人物であり 本日楽しみにしていましたと気さくに語り掛けてくる。
他に陸・海・航空幕僚クラスが3名 背広組の中から事務次官と事務書記官との2名。
と紹介されたがよくは分からん。
確か自衛隊のトップは総合幕僚長と記憶しているが、その下だとしても昔の少将・中将クラスと考えればよいのか?
まぁ これだけのメンバーはそうは一斉に集まることは少なそうだ。
怪訝な顔している太蔵に飯島一佐が苦笑いしながら本日の意図を説明してくれた。
ここにいる各自には先に老師の起こした奇跡的な現象を全て記憶媒体を通して把握している。
なれど今日の話し合いになる前に是非とも一度自分の目で確認したいと要望が上がり、誠に申し訳ないが再度皆の前で自分が見たことを再現して頂きたい。
改めてメンバーを見直してみる太蔵だ、興味半分 猜疑半分 と言う波長だな。
うん? この人は...確かこの基地のトップの将補だよな、一人だけわくわくと純粋な目で太蔵に接している人物を確認する。
ふーむ この人はもしかして途轍もない大器量の持ち主かもしれん...?
老師? 飯島一佐が不審そうに尋ねる。
おっと 失礼、少し考え事をしていたもので、、、
改めて気を取り直すと、その場にて上半身を裸になり前方にある標的を睨みつける。
火魔法 火球! 太蔵の呼びかけに答えて彼の片手に赤々と燃え上がる火球が出現する。
うおおー-
一斉に驚きのどよめきが沸き上がった。
放つ!
火球はかなりの勢いで標的にぶつかり、紅蓮の炎に包まれ やがて消えていく。
狙った標的は当然の事で燃え失せていた。
辺りが水を打ったように静まり返る、と 突然。
パチパチパチと一人の興奮した様子の将補がユウゾーに向けて拍手をする。
場違いのような姿に他の者はしばし困惑していたが、次に飯島一佐も拍手に加わると次第にその波が全員に伝わりだした。
「素晴らしい まさかこの日まで魔法など見ることが出来るとは考えもなかった」
将補は素直な意見と感動を太蔵に伝える。
思わず太蔵もそれに答えて一礼を返す。
火球のリクエストはその後も数回にわたり依頼があり、最後は 魔素 そのものを掌に浮かべ皆に確認してもらう。
真っ先に近寄って来たのは予想通りこの基地のトップである陸将補であった。
何度も太蔵の掌に浮かぶ 魔素 を不思議そうに触っていた。
極めつけはテーブルの上に置かれた箱から取り出されたモデルガンであった。
これは? その問いに飯島一佐が答える。
はい 以前お借りしていた品です、失礼ながらこの品をある機関で調べさせていただきました、当然何の問題もないと正式回答が届いております。
周りの関係者にも理解できるように話だす飯島だ。
この銃を使って魔素を放出して欲しいと。
ふむ つまり魔素の威力を見せろと...
飯島の申し入れを承諾して、太蔵はマガジンに魔素を注入していく、その様子を興味深くみている倉田将補がいた、少年の様に目を輝かせている。
マガジンをセットして加圧レバーを何回か押し込み圧をあげていく。
前方にある標的を狙い静かにトリガーを絞る。
勢いよく魔素が飛び出したが、僅かに標的を外した。
それでも皆がその威力に驚いていた。
太蔵は頭を搔きながら隣にいる将補にガンを手渡した。
いいのか? 目で確認してくる、それに頷くと将補は的を狙いだす。
横で飯島一佐が苦笑いをしている。
将補の狙いも当初的の上部に命中する、なれどそれを補正しながらさらに数発撃つ。
ほぼ的の中央付近に集まりだした。
少し得意げに太蔵に振り向く、流石と太蔵は褒め称えた。
今度は更に何回か圧を上げさせて、試し撃ちは続く。
先ほどとは格段の違いの威力が的に吸い込まれた。
うおー なんだあの威力は?
うーむ 圧を上げると威力が変わる?
何だと? ならば圧を変えれば色々な兵器に応用できるのか?
これは、かなり適用範囲が広がりそうだな...
途端にこの場にいる者たちが色めきだす。
倉田将補は更に計5発ほどの試し打ちを終えて上機嫌のようだ。
この後は別室の会議室にて今回のデモスト の質疑応答に入るが、太蔵はその席にて試してみたい事がある。
勝手に行うわけにもいかずに、そっと倉田将補に 本会議が始まる前に少し相談がある と申し入れを行ってみた。
何かを感じたのか、ちょうど休憩も挟むが短時間であれば問題ないと承諾された。
「なんですと? 他人の心が読める...」
流石に唖然として太蔵の本意を見極めようとする。
いや 流石に実際に心の中が読めるのではなく、気のオーラの色の変化により感情が伝わってくると説明するも、余計に混乱を招いているようだ。
大事な話だとの説明に二人だけの密談にも平気で対応してくれた将補であったが、これはどうやって対処すべきか迷っている様子だ。
時間もないので ここでそれを証明したいと 提案する太蔵に頷く。
外に待機している太田一尉が呼ばれて応接間に入ってくる。
太蔵が彼に説明をする、質問をするそれに対しイエスとだけ答えてほしい、絶対に口調や表情は変化させてはいけないとだけお願いする。
...了解しました 何が始まるのか不安げな彼だか、太蔵からの指摘を思い出し無表情に繕う。
そうそう 念を入れてそのカーテン内に隠れてもらえるかな?
これで顔の表情から判断は困難になる、更に敷居を高くする太蔵である。
太田がカーテン内に隠れて暫く神経を集中している太蔵であったが、これならいける と小さく一人で頷いていた、太蔵は薄いカーテンから漏れてくるオーラに納得していたのだ。
質問自体は取り留めの無い事であった、太蔵は予め用意してあったのか、懐から用紙を取り出す。
その紙には質問内容が書き込まれていた、年をとると次から次に質問を探すのも面倒でな...苦笑いをしながら語る太蔵だ。
内容は実にどうでも良い事のオンパレードである、 貴男は一人っ子か 今日の朝食は今一であった等
そんな質問が20問ほどある、唯太田の返事を聞きながら 用意した紙に〇か✕を書き込んでいく。
ものの数分もかからず質問は完了した。
カーテン内から出てきた太田に質問が書いてあった項目に書き込まれた〇✕があっているか確認してもらう...。
太田は唸っていた、全て声の質も態度にも表さずに回答に イエス とだけ返事をした記憶がある。
まして表情に関してはカーテンの裏に隠れ顔による動揺など判別できぬはずなのだ。
なれど太蔵が書き込んだ心の中の回答はすべて正解であったのだ。
これをどうとらえれば良いのか太田は動揺している。
そんな太田の姿から将補は静かに頷いていた、太田を退室させ本題に移る太蔵だ。
「なんと...スパイ狩り ですか」
そんな人物など今回の参加者に含まれていないと思うが、万一の防止です と太蔵は語る。
今回の議案は可決すれば他国に対してとんでもない案件になる。
豊富な実弾訓練 今より数倍効率的な武器開発 それも低コストにて行えると説明する。
どれだけ隣国が嫌がるかは説明など必要ないであろう。
申し訳ないが今の日本人は本当に平和ボケをしている、それは自衛隊内の高級幹部にも言えると。
金の前で心を売る ハニートラにはまる 外国の勢力は虎視眈々と我が国の弱体化を狙っている状態だ、せめてこの計画が軌道にのるまでは他国に秘密にしておきたいと太蔵は語りだす。
流石の将補も唸りだして考え込むが、決断を下し開き直るように頷く。
方法はお任せします、只もし該当者が判明したら私に最初に報告して頂きたい。
互いに頷き合い 少し時間が超過したことを詫びて皆の待つ会議室に入る。
今後週に数回の投稿予定になります。




