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大宮は飯島一佐ととある居酒屋の個室にて話し合いがもたれていた。
「ふむ 詳細はその動画を見てから話すと?」
「もったいをつけて申し訳ありません。場合によっては国防計画にも関与する可能性が...」
何をいいだすかと思えば、ずいぶん大きく出た。
位的には確かに下士官であるが、大宮の若いころを見ている飯島はそんな大言壮語にも思える大宮の言葉にもそれほど違和感も覚えずに、まずはその動画を見るかと納得する。
つまらぬものならそれはそれ、指摘をして帰ればよいと割り切った。
なんだ、この老人は...上半身裸で何をするのだ? 魔法!? 何を言ってる うん? どんなトリックか画像処理なのか... だが隣にいるのは大宮に間違えないな うん? 改造銃か...
音が漏れぬようにイヤホンからの画像に飯島は少し困惑していた。
大宮はこの老人と何をしたいのだろうか?
よく動画としては出来ているが、この作り物を見せる理由がいまいち理解できない...。
途中のきりが良い画面にていったん停止をすると、大宮に語り掛ける。
「大宮一曹 君は一体私に何を言いたいのかね?」
動画を見つめている態度から、やはり予測通り本気にはしていないと感じていた大宮は静かに話し出す。
「...この動画が良くできた作り物とお考えだと思いますが、これが現実に起ったことだとしたら、どうお考えになりますか」
大宮は出来るだけ冷静に語るべきと考えていた。
「現実に? そんな世迷言には付き合ってはいられ... 大宮本気か?」
そこまで言って飯島は大宮の体より溢れるばかりの熱気と真剣な眼差しに直視した。
最後まで言わずに 代わりに飯島は大宮を睨みつけた。
「はい...これは全て真実です」
大宮も飯島の視線を受け、堂々と真剣に睨み返す。
長い互いの沈黙が続く、突然飯島は片膝を立てて退席しようとする気配が感じられる。
「お待ちください 貴方は日本の国防の未来を潰すお考えですか? それに動画は後半がありますし、最後にこの老師よりのメッセージもあります。僅かな早とちりの為にこの日本を守る国士の一員としての判断を誤るのは一生の不覚になります」
大宮は全身で飯島の短気を諫める。
立ち上がった飯島と大宮の間でさらに激しい睨み合いが続いた。
やがてふと気を抜いた飯島はまた静かに座に座りなおして。
「大宮 これが作り物と判明した時の処分は考えておるか」
「当然であります ご希望であればこの詰め腹を切り裂きます」
そう言って大宮は自分の腹を切り裂く仕草を見せる。
ふう 大きく息を吐いて飯島はその覚悟があるのならと 再びイヤホンに手を伸ばす。
むろん現実にそこまでの処分など考えてもいないが、大宮の覚悟を垣間見た気がした。
画面は今度は主役が大宮に変わっていた、彼が操作するモデルガンと思われる銃からの連射動画と、何やら操作した後の威力が別物に変わった様子がながれた。
最後に先ほどの老人からのメッセージがあり、ぜひとも一度自分の目で確認してもらいたいと そして国防の一環として出来るだけの協力をしたい旨の報告があり動画は終わる。
再び二人は沈黙の時間が流れる。
先ほどと違うのは、飯島は座椅子に姿勢を正して座り両腕を組んで目を閉じて考え込んでいる。
それを邪魔しないように大宮も姿勢を正して飯島を見ていた。
「なぁ 大宮、お前はこの現場を見たのだろう、その感想を聞かせてくれ。正直俺にはこの動画をまだ信用していないのだ」
突然語り始めた飯島は大宮の意見を求めた。
「当然であります 自分も当初は信用しておりませんでした。されど何度もあの銃や内部を確認して何も隠し事がないことを確認しております。それにあの銃は市売品のサバゲに使用される銃です。材質は硬質プラと思われます、そんな銃で最後に見てもらった威力を再現すれば通常は銃身は破壊されます」
「この老人が言っている 魔素? は無尽蔵にあるらしいと説明しておるが、その正体は?」
「自分もその点は尋ねましたが、修行中の副産物で正体は不明だそうです。国で解析したほうが良いとの返事でした」
「国でか...それが一番だろうが、万一インチキなら俺も同罪だな...」
「それはつまり...」
「ああ お前の見たことに関しては否定しない、会う前に機関に連絡してその老人一行を一度身元確認した方が良いな」
自衛隊内の機関もしくは民間の力を借りて身辺調査をすると飯島は言い出した。
これに関しては大宮も反対しない、どうせいつかは正式に動き出すのが目に見えている。
大宮は持ってきた紙袋を飯島に手渡す。
「これは!? 」
中身を確認した飯島は絶句する、その中身は改造銃らしき物が入っていた。
「動画で見たモデルガンです、私の使った品で途中ですり替わったりはしていません」
老師が何かの手助けになるだろうから、動画のメモリーと一緒に持って帰れと手渡された品だ。
「これが 動画の中の...」
包みを開けて興味深くそのサバゲー用ガンを手に取る。
「...マガジンには手が入っているな」
魔素の閉じ込め方に一苦労したらしい。自衛隊内の然るべき機関に確認してもらうか 飯島は再度包み込み紙袋にしまい込む。
「大宮 お前の知ってる情報を全て話してくれないか」
飯島は自ら大宮に酌をして酒を勧めた。
「老師 少し気になる入門者が...」
今度師範代になる小田切から太蔵にそっと耳打ちする。
「おう 十日程前に入った大村だな、あの男隠しておるが自衛官であろう」
大宮と最後に会ってからひと月近くたつ、一度上司と連絡をとりあったと簡単な報告があっただけだ。
この月に数名の入門希望者があり、太蔵は何かを感じていた。
こう言っては何だが、こんな辺鄙な道場に短期間に数名の入門希望者が不思議な事だ。
「やはり老師はお気づきですか、あの目配せはそれなりの訓練を受けた者と思います」
「面倒だ 少し痛めるか?」
久保田がそれが手っ取り早いと 提言する。
「ばーか お前は単純でいいな」
調査員は一人とは限らない、一人が目立ち注意を向けて他の者がこっそりと言うこともある。
久保田が不満げにぶつぶつ呟く。
太蔵は放って置けと笑い出す、先方が動いた証であろうと一言説明する。
「おっ 依頼した中間報告が届いたのか。なになに 道場主の三橋 太蔵は今から40年ほど前から現場所に住み込み……うむ 左程変った交遊も特記事項はなさそうか、武術の腕は確かなものと噂され暇があれば自己修行に打ち込んでいる、挑まれた他流派との試合も全て勝利か、、、。
特定の宗教関係や過激な思想も考えにくい、、、。
うん? これは… 東京時代の高三の時に突然5年ほど行方不明になっている? その間の所在を調査中ではあるが、追跡が困難な状況か...。50年も前の話か現状に関係はあるまい...」
その他の高弟の二人は太蔵と違い、過去に遡るのは楽であった。
その内の一人が昔大相撲の出身で未来の横綱とも噂されていたが相次ぐ膝の故障で引退し、かなり自堕落な生活を送り飲み屋にてトラブル時に太蔵に取り押さえられ、その後彼を師と仰ぎ現在に至る。
もう一人も地回りと揉め、かなり危ない状態時に同じく太蔵により救われ、現在に至る。
「なかなか面白い三人組のようだな、今現在において左程目立った懸案はなさそうか...。 あの人里離れた私有地では正直何かあったとして把握するのは困難だな。最終報告を待つまでもなさそうか」
飯島一佐は調査がひと月近く経過するも、思ったほどの成果を上げられぬことを歯がゆく思っていた。
こうなれば直に会いその人柄を確認するしかないと判断をする。
ここまでの報告書を持ってこの基地のボスである、倉田将補の執務室に訪問した。
当面一週間に一回の投稿予定になります




