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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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用意が終わったモデルガスガンを前に太蔵は大宮に少し距離をとり、笑いながらも飛んでもない事を指示した。


「そのモデルガンで私を撃って下さい」


とんでもない提案に、何を言い出すのだと大宮は目を剥く。


「…老師 たちの悪い冗談は止めて下さい」


だが太蔵は澄ました顔で 本気だと 大宮の言葉を気にしていない。

はぁー と高弟二人がため息をつきながら。


「大宮さん 構いませんので一発撃ち込んで下さい。そのままでは何の効果もない、子供のおもちゃ同然ですから…」


道場で青鬼と恐れられている 小田切が呆れた顔で頭を振る。


「うむ 最もだ、万一発射されてもへそ曲がりが一人亡くなるだけだし、これ幸いかも?」


同じく赤鬼と呼ばれている久保田は失礼な事をすました顔で会話を続けた。

そうは言っても はいそうですか と素直に引き金など引ける筈もない。


大宮は手に握っているハンドガンを再度凝視した。

先程も銃本体は良く見ていた、サバゲ用の市販されているガス式銃で目立つ改造はされていない。


…そうか 本体ではなくマガジンに何か細工されているな 当初からその点は気にかけていたが、銃本体にどうしても目が向くものだ。


「この下部の差し込みノブと上部にあった手作り部品がミソですか?」


太蔵はにっこりと頷く、 苦心作だと 笑っている。


「手作りなのでな、マガジン内の魔素の漏れ防止にな…」


三人は そうだと頻りに頷く。

ガス式銃は圧縮ガスボンベにて通常マガジン内に充填するが、この点は太蔵たちが苦労した。

手作り感があるのは仕方ないことになる。

もう少し時間があればそれなりの物が出来上がったのだが、現状ない物ねだりである。


「…裏庭をお借りしても宜しいですか」


再度皆が建物の裏手に移動する。




「表には誰もいない」


久保田が先ほどと同じように異常がないか監視していた。


 では…。 大宮はモデルガンを構えて引き金を静かに絞る。


「…確かに何も反応がないですね」


わずかに何かが微量に漏れたような気がする、あくまで気持ちではあるが。

この後どうすれば良いのかと困った顔を老師に向けた。


「下部のレバーを5・6回押し込んで欲しい、さすればマガジン内の魔素が圧縮される」


大宮は言われた通り圧縮を繰り返し、これでよいのかと振り返る。

太蔵は準備は終わったとばかりに、目標の岩盤を指さす。

大宮も頷き返し、再度構えると安全装置を解除し引き金を引いた。


微小な衝撃とともに、前方の岩盤に破裂音が響いた。


「……」 大宮が暫し沈黙する。


気を取り直し再度構えると大宮は引き金を引く。

その後更に数発発射させて呆然とする大宮だ。


「大宮さん 下部のレバーで後何回か圧縮して下さい」


それに従い大宮は5回ほど圧縮して、指示の通りもう一発撃つ。


 「うぉー!」


大宮は思わず小さく声を上げた。

先ほどより大き目な衝撃とガス銃特有の発射音、そして先程とは比べ物にならない破壊力。

大宮はどう判断してよいのか解らずに固まっていた。


「…老師これは、、」


大宮は太蔵に迫る勢いで問いかける。

最初に撃った破壊力は精々空気銃程度の威力であり、その後の撃った銃は明らかに通常の拳銃に匹敵する破壊力に変わっていたのだ。それも45口径弾に匹敵する破壊力と思える。


「魔素は圧縮圧により威力が変わる事が理解できましたかな?詳しくは部屋の中で…」


再び一行は室内へと移動する。




「…老師 そもそも魔素とは?」


堰を切った勢いで大宮の質問が開始された。

太蔵は少し困った顔で返答をする。


「魔素が何かと言われても私自身答えに窮してしまう。便宜上そう呼んでいるだけで、正直その正体については知らぬ。国の然るべき機関にて調べたほうが早いのでは」


事実太蔵は異世界にて経験した魔素に比べ、この世界の魔素もどきは何か別物の予感がしていた。


「…なぜに この様な物を見つけられたのですか?」


「…偶然としか言いようがない」


長年の修行の過程で見つけたものだが。

正か異世界での魔法が恋しくて、何十年も努力してきたとは言えない。

言えば直様に病院へ隔離されるのが落ちであろう。


「この魔素を利用して兵器の大改革も可能ではと思いますが、どれほどの量を集めることが実際に可能なのですか」


もっともだ、如何に優れた物質でも量が微量であれば兵器として継続に問題が生じる。


「そうよな…ドラム缶1本程度なら10秒程度かな?」


「…そのドラム缶1本でどの程度の武器換算になるのですか」


太蔵はこれまでの経験から、おおよその目安で最後にテストした威力程度なら 弾数は最低でも数千発程度は見込めるのではないかと 考えながら答える。


「仔細はそちらで判断してほしい、飽くまでも推定でそれ以上とも以下とも断言できぬ」


最もだ、大宮も当初見たドッチボール大の魔素もどきを思い出し、マガジン内に溜め込むにはかなりの量が無駄になっていたことを感じていた。


その後も大宮による疑問解消が続いたが、答えられる件には全て答えたが隠すべきは隠す。

事が事だけに全てを正直に答える必要もないだろう。



「最後の質問になりますが、この魔素を作り出せるのは老師お一人ですか?それとも…」


やはりその点が気がかりかと 太蔵も納得した。

太蔵一人での製造ならば如何に効率の良い素材も、当初の必要量に達するのに時間がかかりすぎる、まして太蔵は見かけは若いがこれから先場合によっては供給の時間が限られる可能性もある。


「現在は確かに自分だけだ、なれど今この高弟二人に特訓の最中なのでな、近い将来に結果が…」


「…つまり、場合によっては他者でも可能なケースが?」


互いに思惑のある笑顔が交わされていく。


 おいおい…狐と狸の化かし合いか  久保田は呆れた顔で二人を見ている。


その日 すっかり日が落ちた山道を大宮は興奮しながら帰っていた。

助手席には小田切が写した動画のコピーをもらい、久しぶりに国士としての血が騒いでいた。

若いころに感じていた感情が年と共にあきらめの感情に移っていたが、一気に昔へ戻った気がした。


何としても基地のナンバー2の飯島一佐に面談して相談せねばと、その思いで包まれていた。

そうは言っても下士官と上級幹部、そうは基地内で接点はない。

馴染みの事務官にお追従しながら、住所と自宅電話番号を調べだす。


馴染みの事務官には、近い将来の転職に有利なように今から年賀状やお歳暮等の付け届け先だと同情を買うセリフを吐き、何人かの関係ない上司も序に聞きだしていた。



そんなある晩に、大宮は飯島が自宅にて寛いでいる時間帯に電話をかけて、個別に相談したい要件があると 飯島の都合の良い日にとある飲み屋の個室にて二人だけでの会談アポに成功した。


何か並々ならぬ決意が語尾に感じられ飯島は後日約束の場所へと向かい大宮と合流した。



「申し訳ありません この様な場所にお呼び致しまして…」


しきりに謝る大宮に飯島は気軽に 気にするな と何度も詫びる大宮に機嫌の良い顔で答える。

特戦群 に互いにいた仲だと飯島は言いたいのであろう。


「…で 相談事とは?」


店の仲居も退席して、頼んだ酒や料理もあらまし届いている、当分この席は二人以外は居ない。

店の中の騒がしい客の声も少し流れてくるが、ある意味小声で喋る分にも支障ないし、他の客による声でこの室内にての話し声が逆に聞き取りにくい状態であろう。

尚も周りの様子を気にしながら、大宮は要件に入る。


当面一週間に一回程の投稿予定になります


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