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案内された場所は建物の裏手で、そこには一つだけ細長いスチール机が置いてあるだけだ。
その机の上に持参した大きな紙袋と思われる物を置いて、突然太蔵は上着を脱ぎだし上半身を裸になる。
何をしている 裸になんぞなって、、ほう 歳の割に鍛え上げられた体だ、感心する。
太蔵の思わぬ行動に戸惑う大宮であった、自分は技術指導官の名ばかりでこの何年も指導に関しては部下任せの生活であった、残念ながら少しムダ肉が付き始めた自分の体を恥じる。
思わずそう感じるほどの確か67歳になる道場主の上半身に見とれていた。
「申し訳ない見苦しい物をお見せして、これからお見せする事に関してイカサマと呼ばれる可能性を少しでも低くしたいと思いまして」
うむ 何をこれから見せられるのかは不明だか、そこまでの心意気は良しとしよう。
依然として太蔵の目的が分からずに戸惑っていたが、何かを行いたい事は理解していた。
ただ上半身が裸にしてまで見せたいものとは何か不明は続く。
「久保田 見張りは頼むぞ」
太蔵は軽く後ろを振り返り久保田に確認する。
「老師 任せろ」
久保田はそれに答えて建物の陰より少し出て敷地内に誰か来ないか監視体勢に入っている。
もう一人の小田切と呼ばれている偉丈夫はやや前方よりこちらに向けてスマートフォーンの録画体勢に入っいるようだ。
「どうぞ もう少し此方に、良く見て頂きたいので」
太蔵は後方にいる大宮を自分の横1m程に寄るように指摘した。
それに反応して太蔵の横に移動して見入った。
「では 始めます 火魔法 火球!」
あん? 今何と言った?! 火魔法?!
太蔵の言葉に混乱する大宮は、突然何を言い出すのかと太蔵を疑う。
だが現実はそれよりも衝撃が大きかった、太蔵の掌にソフトボール大の火の塊が出現してメラメラと燃え上がっていた。
空いた口が塞がらぬとはこの事であろうと、後でその様子を捉えた録画に映し出された自分の顔が物語っていた。
只驚いて口を開けて太蔵の掌を凝視していた大宮の顔が記録に残っていたのだ。
放つ!
掛け声と共に離された火球は前方10米程度の岩盤がむき出しの場所に投げ捨てられて、火炎が踊りまくりやがて静かに消えていった。
………言葉にならない沈黙が辺りに広がる。
現実に起きた事に理解が追いつかずに大宮はただ火炎が広がった岩盤を見つめていた。
な 何が起きたのですか?
ようやくに絞り出した声から発せられた一声であった。
「老師 もう一度お願いできませんか?」
小田切が位置を変えて太蔵の斜め後ろに場所を変えた。
どうやら太蔵の放った火球が速度が早く火球を追いきれずに録画がボケてしまった様だ。
そ そうだ、是非とも私からもお願いします
大宮は小田切の言葉に我を取り戻し、同じくもう一度とお願いしていた。
太蔵は笑いながら 無造作に掌を広げて 火球 と声を発した。
先ほどと同じ火の塊が無から出現する。
それを岩盤に投げつけようとした太蔵を大宮は声を大きくして制した。
待って下さい それを良く見せてもらいたい。
動作を止めた太蔵の掌に自分の掌を近づけた大宮は火球が放つ熱量に思わず自分の掌を引き戻す。
本物だ…かなりの熱源だ、何故に老師は熱くないのだ?!
もういいかなと 太蔵は再び火球を放つ 岩盤に命中して再度炎の乱舞があり消えていった。
またしても燃え上がった岩盤を見つめて呆然とする大宮がいた。
「済まんが これからが本番なのだが…」
いつまでも呆然と岩盤を見つめている大宮に声をかける。
な なんだと? これはまだ前座なのか?!何が始まるのだ!
まじまじと太蔵を見つめる大宮がいた。
「今お見せしたのは、これからお見せする物に関わる為に必要な事でしたので」
そう太蔵は前書きをしながら手元にある紙袋をガサガサと引き寄せ、中にある物を大宮の前に置く。
それはクッション材に包まれており中身がある程度判別出来る。
こ これは拳銃?! いや…
一瞬緊張した彼であるが、瞬時に偽物であると判断した。
「…これはサバゲなどで使われるハンドガンですか?」
冷静に目の前にある拳銃を分析して太蔵に問う。
「そのとおりです、流石本職です。包装の上から瞬時に見抜くとは。本来は本物が欲しかったのですが、流石に無理でした」
恐ろしいことをサラッと話す太蔵であった。
その気になれば暴力団幹部の一人や二人は伝手があるが、そこまでしての恩を借りたくはなかった。
無造作に包装を外しハンドガンを取り出して大宮に手渡す。
確認をしろ との意味であろうと彼は理解してその手に受取ハンドガンを検証する。
思った通リの偽物である、手触りも材質も重量も全て偽物であると語っていた。
大宮が確認をしている間に老師が紙袋から次の品を取り出していた。
先程の拳銃よりかなり小さな品が数個包まれている。
マガジン?! まさか改造銃?
いやそれはないと改め手の掌にハンドガンを再度確認してみる。
硬質プラでの実弾発射は暴発につながる、そうは思っても老師が手にしたマガジンは銃本体と違い、かなり改造された形跡が見られたのだ。
「どうかな? 何か不審な点が」
老師は片手を差し出し問題ないなら返せと催促している。
慌てて老師の手にハンドガンを戻す。
「老師…そのマガジンはかなり手が入っているように、、」
疑念を尋ねてみる、すると愉快そうに笑いながら。
「はは そのとおりだ、素人3人では四苦八苦状態だった」
大宮は少し顔を曇らせた、やはり本体よりそのマガジンが何か重要か?
そんな大宮の心配顔を察して老師は続けた。
「推察のとおりこの中身が問題だ、まずは見ていてくれ その後説明する」
そう言ってマガジンをセットして銃を構える。
見るからに素人的な構えに見える、散々訓練を受けてきた大宮には銃を撃ち慣れていないと判断した。
「そうだ小田切、マガジン内のエアー抜きは完璧かな?」
軽く後ろを向き後方にいる小田切に声をかける。
「完璧のつもりですが、一発目はミスる可能性もあります」
鷹揚に頷いた老師は突如天空にむけ一発発射する。
パスン なんとも言えぬ音が出て何かエアーらしきものが抜けた音がする。
ではと 再度いくとするか…老師は呟いて前方の岩盤に狙いをつけ引き金を引いた。
スパーン
先ほどとは違う音がして発射される。
同時に岩盤に破裂に寄る衝撃音が響く、途端に大宮は慌てだす。
岩盤に当たった破壊衝撃は通常の訓練で用いられる実弾には劣るものの殺傷能力ありと理解したのだ。
「ま 待って下さい、 今のは…」
瞬時に大宮はこれは不味いと判断して止めようとした、なれど老師は立て続けに5発発射していた。
ようやく人心地付いたのか老師はマガジンを外して机の上にハンドガンを置いた。
「…老師 これは大問題です。事によると…」
警察介入もあり得ると大宮は伝えたかったのだろう。
「警察かね?それも良いが、その前に暴発も跳弾もなく無事にモデルガンにて、あのような威力が再現できるのか軍人として興味はないかな?」
老師は自分の事を軍人と認めているようだが、肝心の大宮は国家公務員に毛が生えた程度の意識しか持ち合わせてはいない、いや現在の自分はである。
自衛官になった当時は熱い国防の意識が確かにあった、だが世間との現実との差があまりにも大きく、何時しか小さくまとまっている自分がいた。
一応この年で職業軍人としての道を選んだもののこの先10年程で向かえる定年退職を待っている自分が後ろめたい気持ちとして心の中では確かにあった。
なれど今回この場での出来事は到底見逃すことなど出来ぬ事態である、警察に連絡せねばの思いと裏腹に老師の問いかけたことにも当然興味は湧く。
どっちつかずのジレンマに陥る大宮である。
「…私に何をさせたいのですか?」
やっとの思いで出た言葉は老師に尋ねる質問であった。
当面一週間に一回の投稿予定になります




