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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
35/235

35 近現代編

パソコン何とか復帰しました。

10年物ですので、そろそろ本格的に買い替え検討します。

近現代編に突入します。

今後共宜しくです。


201X年1月1日 元旦


正に初日の出が後1時間後に迫っていた。

さるG県のとある山頂に近い古武術道場にて数名の者がかなり緊張しながら、老師が繰り返し行っているある儀式にも似た行為をしっかりとその両目に焼き付けようと凝視していた。


その老師は今年67歳になるのだか、現実的には62歳の年となる。

この男は若い頃に異世界召喚に巻き込まれ、何とか自力にてこの世界に戻ってきたが、この世界と異世界での時間に関するズレが発生していた。


向こうでの生活は精々半年ちょい、正確には9ヶ月にも満たない異世界生活であったのに、この世界に戻って来た時には何と行方不明の期間は5年経過していのだ。


それ以来常に5年のギャップを抱えながら、現実世界に生きてきた。

若い時には5年の差に酷く戸惑う時もあったが、この年になると誤差?になっていた。

多少の違いはどうでも良い歳になっていたのだ。


この男の名は 三橋 太蔵。 古流新別府流第14代当主でもある。

近々第15代当主の 三橋 新伍 が誕生する予定である。


本人曰く ようやく楽隠居が出来ると笑っていた。

なれど若いうちより人並み外れた体力を異世界により授かってしまった事がこの男を不幸にしている。


彼は異世界より帰還した当時は、非公式ではあるが百米を6秒以内で走破する能力を授かっていた。

そして67になった今でも9秒以内は当たり前という韋駄天ぶりである。


無論人並み以上に日々体を鍛えてきた歴史がある。

なれどこの男はその気になれば若い頃の記録、百米6秒以内より早い記録を叩き出すことがつい最近可能となっていた。

その件については後日また述べたい。


そして今正に彼がやろうとしている事は、恐らく人として今だ誰もなし得ていなかった、いや昔話や物語の中では書かれて入るが、現在の人の中では唯一人にしか出来ない事である。


魔法を用いて火魔法を再現して見せると言う非常識な事に挑戦していた。

彼が異世界にて覚えた得意魔法の一つである。


無論見物している他の3名はそれが出来るものと信じている。

彼の並外れた体力や反射速度そして人の心が読めると言う、他人が聞いたら頭の中を疑われる程の事も実際にその行いを見てきたからだ。


彼は静かに深い深呼吸を繰り返していた、彼自身が開発した魔法を現実に行う為の呼吸法である。

それを理論的に説明しろと求められても、彼は苦笑いをするだけであろう。


この今の世界ならもしかしてそれなりの特別施設にて不思議な事への解読も可能であるかも知れない。

ただそんな事が判明すれば、恐らく残りの一生は施設暮らしの監視付きと言う現実が待っているであろう。

流石に残り少ない人生でも、それはお断りと拒否するだろう。

そして次の瞬間には誰も追いつけない速度で目の前より逃避して隠遁生活を送っていく事になる。


唯この所少し迷っていた、彼の好きな我が国日本の行末が少し心配になってきていた。

色々と難癖をつけ始める赤い隣国達にこの先はどう向かうのか、この国の方針が見えていなかった。


政治的にも国家としても敗戦と言う重荷から脱しきれずに、今だもがきながら苦しんでいる我が国に何か残り少ない人生にて恩返しをしたいと思うようになってきた。


だからと言って人体実験のモルモットは御免だ、もう少し違う面から向き合えたらと考えていた。

その種になりそうなのが今から実施する魔法にかかっていた。


これが見事成功すれば、国に対等の交渉をする気でいた。

当然そんな思いでいる事は他の3名は知らぬ事であった。

全てはこの魔法の成功にかかっていたのだ。


夜明けが、新年の初日の出が刻一刻と迫ってきていた。


 後 30分後か、、


後ろより高弟の二人が声をかけて時を知らせてくれる。

わずかに東の空が赤くなりつつあった。

新年の日の出と共に魔法を打つつもりである。


次第に夜の闇から開放される気配が感じられる。

まだ夜空には星が瞬いているのが確認出来る。

なれど東の空は次第に明かりが輝き出す。


 後 15分


またもや高弟が一声掛けてくれた。

深くしずかな呼吸に切り替える。

少しづつ自我を体内に封じ込める、無への挑戦が始まる。

自分の心臓の音だけが聞こえ始め、他の音が消えつつあった。


 あ… 5分


その声が太蔵に伝わっているのか弟子達は少し不安になりつつあった。

先程から老師の気配が消えかかっていた、いや正確には確かにそこにはいるのだが、全身が何か透明感に包まれて気配が消え失せていた。

さらに東の空が赤々と燃え始めていた。

いつ太陽の陽が大地を照らしても不思議ではない様子になっていた。


 あ… 1…


突然に光が海の彼方より眩しく大地を照らしてきた。

わずかに陽の形も判別出来る様子になる。

まだ完全な日の出ではない、だが太蔵の体内にはすでに満ち足りた力に溢れている。

それを御し切れずに、早く魔法を打てと体がうねっていた。


右手がそれに対応するべき静かに上がりだす。


 火魔法 火球!


静かに言葉を発すると同時に体内より魔力と思われる未確認物質が右の手のひらに集まりだす。

と 同時に赤々とソフトボール級の火球が燃え上がりだした。

後ろに控えて見ていた3名は皆思わず息を吸う事を忘れその景色に見入っている。


 放つ!


短い掛け声と共に右手が動く、途端に火球がものすごい速度にて前方の岩に向かい放たれ、衝撃と共に炎の舞と大音響に包まれ辺りを激しく照らしてやがて消え去っていく。

静かな沈黙が辺りを包み込む。


「出来た… 苦節50年とうとう完成した」



「お見事 老師」


「うむ 凄いぞ老師」

  

二人の高弟が思わず称賛の声を上げる。


「…これは どう考えれば、、」


次期当主 三橋 新伍 はただ唸っていた。



「…さて 新年の初日の出だ、まず拝もうか」


老師の発する言葉に他の三人も改めて新年の祈りを念じ始めた。


「色々聞きたいことがあろうが、まず道場に帰ろう…」


4名は揃って山頂から降り始め、途中にある道場へと帰っていく。

辺りはすっかり明るくなり、新年の朝日を浴びながら今年一年はどの様な年になるかと全員が考え、何方にしても大変な年になりそうだと感じていた。


太蔵による魔法の実現が大きく我が国を動かすのは間違いないだろう。

ただ 老師は詳しくは語らないが、魔法自体を見世物的?にする気はなさそうだ。

魔法という小道具を利用して何かを推し進めようとしている。


それに関しては他の三名には見当がつかない。

実際には何がしたいのか、どう進めたいのかは太蔵老師の考え方次第となる。




正月気分も半月が過ぎれば街も落ち着いてくる。

今年一年をどう過ごしていくのかと考えるのが一般的な気分だ。

人はそれぞれの生活を守って生きて行かねばならない。


正月早々の初稽古から、もう正月気分は抜けている各々であるが、太蔵は三名を自分の個室に招いて相談事を投げかけた。


「当道場は昔から自衛官の方が何人も出稽古にも来られるが、此の中で一番信頼に厚く上官にも覚えの良い人とは何方だろう?」


突然の質問に各々が暫し考え込んだ。


「…技術指導官を任されている 大宮 一曹 かと思います」


高弟の小田切 新次が一人の名を告げた。

小田切は今年34歳 弟子入りして10年が経過してこの道場では次期当主の 三橋 新伍 を省けば実質的なNo.1と誰しもから認められている存在だ。


元は大相撲出身で将来の横綱と誰からも思われていたが、相次ぐ膝の故障により大相撲から離脱しかなり生活が荒み、とある街の酒場にて大暴れをしていた時に太蔵により諌められ弟子入りした経緯がある。


「うむ あの人は一徹だよな」


久保田 達夫 31歳 弟子入りして8年が経過している。

元々ある地方都市の悪ガキで少年院にも入った事のある乱暴者だ。

地元の地回りともよく揉めてある日恨みを買った事により背後から短刀により襲われたが、たまたま居合わせた太蔵から命を救われ、その折に見た太蔵の古流にいたく感動しての弟子入りとなる。


この二人は太蔵の元でメキメキと頭角を現し、共に恵まれた体とずば抜けた運動神経の持ち主であり、当時の弟子では直ぐに稽古相手が居なくなるという有様で、太蔵が良くこの二人の才能を愛し稽古をつけていた。

小田切にライバル心を持ち稽古に励んだのが功を奏して実質No.3の地位に上り詰めた。

そんな二人が認めたのが 大宮 一曹であった。


「確かあの人は この駐屯地に赴任して数年だと思いますが、なかなか上にも下にも慕われていると聞いた事があります」


三橋 新伍 も間違いないと頷いた。


「そうだな よし彼にお願いしよう。ところで新伍 此処から先はお前はこの話に絡まないでもらいたい」


突然の拒否に納得の行かない新伍であった。


当面一週間に一回の投稿予定になります


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