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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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遅くなり誠に申し訳ないです。

異世界にて通常の数倍以上の力を身に着けたと言う、太蔵の話をポカンと新一は聞いていた。


太蔵が高校3年制になって直ぐの頃体験した異世界転移に始まり、彼がどのようにして現在の力を身につけるための努力をしたのか、そして異世界における不思議な出来事及び魔法のある世界・・等。


新一はどう理解してよいのか、いや現実的に太蔵が見せた超人的な体力を理解すれどもそれが直様腑に落ちる程信じられない話しであり、自分の思考力もほぼ停止状態に近かった。


やっとの事で唸るように言葉が出てきた。


「・・うー まだ混乱しています。信じない訳ではないですが、あまりにも常識はずれと言うか、申し訳ありません、いまだ半信半疑なのです・・」


当然だ、自分でさえ転移当時のあの混乱を思い出していた。

その現実が目の前にあったのに信じられない当時の出来事であった。


「はは 今直ぐ信じてもらわなくても結構だよ。むしろこんな話を直ぐに信じろという事が無理な事と思っている。あくまで君の疑問に答えての結果だよ。ただ 申し訳ないが先に約束した通リこの件に関しては他言無用で願いたい。直様信じるものはいないと思うが、人は千差万別だ。利用しようと厄介事が起きないとも限らないからね」


「む 無論です。当初約束した事を破るつもりはありません、私も三橋一族の一員ですので、しかし・・太蔵さん、その話に出てきた 魔法 とかは此方では使えないのですか?出来たらば、、」


彼の言いたい事は分かる、魔法を見せてはもらえないか とのお願いであろう。

残念ながらこの世界では…いや、まて 魔石が、、。


祖父達に見せてから仕舞い込んでいた魔石は万一に備え太蔵の品物の奥深くに仕舞い込んであったと思いつく。あと何回使用できるかは不明だが、一度見せて見るのもいいかもな と太蔵は動き出す。


急に少ない太蔵自身の荷を探し出す姿に何が起きるのかと新一はその行動を凝視している。


「おう あった これこれ」


荷の奥に置いてあった頭陀袋の中から更に小さな布袋を取りだしその中から黒い小さな塊の物を手の平に取りだした。


「新一君 これが何だか分かるかな?」


にこやかに笑いながらその塊を新一くんの手の平に落とす。


「…これは、石炭?黒曜石?いや 何方も違うような、、」


手の平に置かれた塊を物珍しそうに弄り回している。


「はは これは先程話に出てきた魔物の体内にある魔石と呼ばれていた物なんだ。向こうの人達はこの魔石には生命体にとって大切なエネルギー物質と考えられている」


「・・魔石 ですか?」


突然の話にまたしても思考が止まりそうな新一だ。


「その魔石を利用して魔法も発動する事が可能なんだ。試しにそうだな、風よ起これ 炎よいでよ 水よ出でよ 何でも良い、強く念じて見てご覧」


半信半疑ながら新一は強く 風 火 水を順に念じていたが結果的に何も起こることは無かった。


「うーん 流石に急には無理かな どれ!」


太蔵は新一から魔石を受け取り何やら呟くと野球ポール大の火の塊が突然現れ燃え上がる。

その勢いに新一は思わず身を反らす。

手品や決してインチキではない証拠に太蔵は先程着替えて少し寒い季節でもあるが、半袖のTシャツ一枚しか上半身には身に付けていなかった。


どう見ても太蔵の手の平に突然と現れた炎の塊にどう対応していいのか困難な状態であった。


「た 太蔵さんそれは?! あ 熱く無いのですか?」


当然な質問であろう、太蔵はそれには答えず新一に向かって言う。


「新一君 家の戸扉を開けてくれないか、そして周りに誰もいないかも確認してくれ」


言われた通リに新一は家の戸を開け広げ、素早く辺りを伺い問題ないと答えた。


 ふん!

軽い気合と共に火の塊がそれなりの速度で表に飛んでいく、着地と同時に大火量の炎が飛び散り爆発の音も響き渡る。


 ・・呆気にとられ、呆然と火が燃えた箇所と太蔵本人を何度も見比べる新一がいた。


「・・あれが 魔法ですか?」


「うん なかなかの威力だろう?」


面白そうに笑う太蔵にようやく現実に戻った新一が頷く。


「一応断っておくが、あれは魔石の魔力を利用しているから、後何回しか同じ事は出来ないからね」

魔石の魔力がなくなれば単なる石でしかない。


「・・この事は他の人には?」


「祖父・父そして居合わせた姉、そして君にしか見せていない」

祖父と父はもうこの世にはいない、今現在知っているのはこの世界に二人だけと言う。


「・・わかりました、この件我が父にも秘密を守ります」


「うん 助かる、宜しく頼むよ」

太蔵は新一くんの並々ならぬ決意を感じていた。


暫く異世界の事を色々と聞きたがり、それら分かる範囲で丁寧に答えていく太蔵である。

異世界話しに花が咲くが、やがて夕方が近い、山は急に暗くなる。

早めに新一君を大量の猪肉と共に帰らせねばならない。

聞きたいことがまだあるような新一であったが、暗くなるまでに家路につくことになる。




一週間後に新一は客を連れてきた、事情を聞くと一人の若者がそれに答えて口を開く。


「自分はこの近くの自衛官でありまして、前々からこの地に住み修行を行っている噂を聞き及んでいました。自分は体術に関して部隊でもそこそこの腕前を自負しております。是非一度先生に手合わせをお願いしたく本日お邪魔いたしました」


新一によるとこの水谷 某氏は新一の友人の歳の離れた兄貴であり、小さい内からこの辺りの腕白坊主で暴れ者だったらしい、現在は自衛官にて得意の体力を生かした格闘技に熱中していて、メキメキと上達している猛者らしい。


 ふむ 面白い人物かも。太蔵も少し興味を持った。

 その前に少し腕試しだな・・。


「新一君 君は修行をいつまでしていた?」


突然聞かれた新一は少し戸惑っていた。その様子を水谷は驚いた顔で見つめていた。

まさか同行をお願いした自分の弟の知り合いが体術をしていたとは知らなかったようだ。


「そのー 中一まではそこそこに・・」

それから三年は恐らくほとんど修行もしていなかったのだろう。


「えーと 確か新一君だったな、君もやるのかい?」

そう言って片手の拳を持ち上げた、経験者なのかを尋ねたのだ。

恥ずかしそうに応える新一に太蔵は笑いながら。


「新一君 少し腕を見せてくれないか?水谷さん相手になってあげてくれますか」


二人は互いに見つめ合い、新一は深く頷いた。


「いや その いいのかい?私は少し荒っぽいよ」

体力的にも経験からも自分に分があると水谷は思ったようだ。


 まぁ 怪我をしない程度に相手をしてあげて欲しい と再度太蔵は水谷に頼む。


ようやく水谷も納得して二人が向き合い、試合開始とあいなる。

結果的には三年のブランクながら新一はそこそこに善戦した、力での攻撃では水谷に分があったが、幼い頃からの修行は伊達ではなかった、上手く切り替えしての攻撃もあったが、如何せん最後は体力に勝る水谷に押され、急所打ちが決まる寸前にて拳が止まった。


荒く大きな息をついて休憩する新一である。


「ははは 新一君 お父さんが嘆くぞ」


新一は申し訳ないと頭を深々と下げた。

対戦した水谷も驚いた、最初は軽く見ていたが最後の頃はほぼ全力に近い攻撃であった。

勝因は日頃の訓練によるたまものと理解していた。


「それはそうと 近頃の自衛隊組手は各流派の取り込みをしているのかな?」


この年代 空手・キックボクシング・柔術等が流行し始めて、この各流派の良いとこ取りをしているように見られた。


「はい 自分の教官殿が毎年新しい技が増えていくと嘆いておられました」

息を荒くしながら水谷は答えた。


 ふむ それもご時世か 納得した太蔵であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「直様信じるものはいないと思うが、人は千差万別だ。利用しようと厄介事が起きないとも限らないからね」 漏らせば迷惑が掛かるような話を態々しなくても良いと思う。どうしても、言いたくなるのかな。…
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