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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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太蔵はいつもの様に相手の本心を確認する予定であった。


新一が連れてくる相手がマトモな人物であれば良いと考えている。

武人としての誇りがある相手なら共に楽しい酒を交わすことも考えられるが、、、。


それにしてもレベル47の体力や反射能力が何故にこの世界でも引き継ぐ事が可能なのか?

魔法に関してはどんなに逆立ちしても無理な事が判明しているが、特定のスキルは例外になる。


 そうか、魔力を消費するスキルだけが例外なんだと 思いつく。


どのような仕組みなのか不明だが、この世界でも魔力の代替えがあればもしかして・・。

無いものねだりとは理解している、そうでなくとも異世界での恩恵を十分に感じている自分になんとも言えない嫌悪感が浮かんでくる。


これ以上望んでどうなる、レベル47の恩恵は通常人の約6倍近くの能力発生を生む。

何もせずにだ、しかも太蔵はこんな僻地で地力の向上を図っている、つまり只の普通人ではない。


それなりにこの世界に帰還してからも体を鍛え上げているのだ、普通の人から見れば超人であろう。

可能であれば五輪に参加すれば恐らく参加する個人競技の全てに優勝の冠をいだくであろう。

単純に百m程度の距離なら5秒そこそこにて走り抜く自信がある。


流石に人目につくような真似はしたくはない、異世界チートのお陰によるものだからだ。

それくらいの常識と判断力は持っている、今の段階では・・。




新一君がやがてお客を連れて現れた。


剛強流 6段 谷上 某と名乗った。

歳は40前か? 体力的には下り坂だが、技の完成においては今がピークかも知れない。


さて、相手の口上を聞くとするか。


「初めまして 私が三橋 太蔵です」


「おうおう そなたが三橋殿か、私は 谷上 某と申します。いやお若いとは聞いていたが正にその通りの風貌ですな。世間では鬼のように強いともっぱらの評判でしてな、いやはやその若さで何とも言えぬ風格までお持ちだ。正に……」


駄目だ こいつは、太蔵はそう判断した。

相手のオーラが会話をする度に暗く淀んでいく。

口は軽く中身がない会話だ、、恐らく虚をついて攻撃を仕掛けてくるタイプであろう。

面倒だが少し会話を合わせて虚を作ってみるか、恐らく相手はしめたと攻撃に入ると思われる。


「いやいや 先程からの過言な褒め言葉は少し照れますね、先程からの立ち会いの件承知しました。その前に少しあばら家ですがお茶など、おっと これはしまった・・」


突然腰にしていた手ぬぐいが風に吹かれて数メートル飛ばされた、これはいかんと太蔵は前かがみになり手ぬぐいを拾おうと相手との視線を切った。


突然の動きが相手にあった、思っていたより素早い動きにて太蔵に近寄ると、必殺の蹴りが太蔵を襲ってきた。


 危ない! その動きを見ていた新一が思わず叫んでいた。


なれど相手から発せられた蹴りは正にしゃがみこんだ太蔵の急所を目掛けて唸りを上げている。


「もらった!」 相手が喜びの声を上げた。


どう今から動いても避けられない必殺の蹴りであった、あった筈だ・・。

突然に太蔵の姿が妙な影と共に揺らいだ、するとその蹴りは揺らいだ影を切り裂いていた。


そう 谷上 某の蹴りは揺らいだ太蔵の影を蹴り上げていたが、実体はそこには無かった。太蔵は谷上 某の後ろに現れてその右の手刀がゆっくりと相手の首筋を叩いていた。


白目を向いて彼は地面に倒れ込む、その様子を新一はただ呆然と見ていた。


「新一君お茶にしよう」


そう言って太蔵は大地に転がっている相手には目もくれずにあばら家に入って行く。


新一は倒れている相手と家に何事もない様子で入る太蔵の二人を交互に見ていたが、軽いため息を吐きながら家に消えた太蔵を追いかけた。


お茶と太蔵は言ったが、現実に出てきたのは一部割れた湯呑みと中に入っているのは白湯である。

つい今しがた湯を沸かしたのか、適度な暖かさの白湯を新一はゆっくりと飲む。


飲み終えた新一は一呼吸をおいて太蔵に尋ねる。


 あの 先程の技は何なのだ と。


すると照れくさそうに太蔵は笑いながら、技と言う程のものではない、ただ素早く移動しただけだと笑って応える。


 素早く?どう返答して良いのか新一には分からない。


暫く考え込んだが、無駄と理解したようだ。


 それであの人はどうするんですか?


外で倒れている彼の心配らしい。


 其の内に目を覚まして、勝手に帰るだろう と説明して太蔵は白湯を続けて飲む。

 そんなものかな・・ 新一はまだ先程の興奮から覚めていなかった。


とりとめのない会話を続けている時に、太蔵はチラリと表を見る仕草をした。


 うん お帰りになるようだ。


一部壊れた戸の隙間から新一は興味深く外を覗き込む。

そこには太蔵の言う通り、フラフラしながら麓にもどる谷上氏の後ろ姿が見えていた。


「もう少し時間を潰してから家に帰るといいよ、万一腹いせに君に危害が及ぶ事も考えられるからね」


にっこりと太蔵は新一に語る、その後暫くは新一の高校生活についての質問があり、新一はそれに対応して色々と語りだした。




次の朝、朝の鍛錬が終了して太蔵は汗をかいた体を冷水にて流していた。

今日は祝日だったのか、私服の新一が自転車で現れると父から迷惑かけたお礼と重箱を渡される。

有り難く受け取ると太蔵は一緒に朝飯はどうかと尋ねてみた。

家に帰ってから皆と一緒に食べるからと、新一は手を振りながら麓へ向かって走らせる。


さて、叔父さんに頂いたこれで朝飯とするか。

今日は久しぶりに狩りに出かけてみるか、この前仕掛けた罠に何か掛かっていればいいが…。


この山の裏手は偶にイノシシなどの大物も見かける。

自然の多く残っている山は歩くだけで鍛錬にもなるものだ。

天気も良いし早く洗濯を終わらせて出かけよう。



樹木の間を器用にかき分けて太蔵は急斜面を上がったり下ったりして獲物を追い詰める。

仕掛けていた罠が引きちぎられていた、大物だな とっさに逃げた方角を推測すると走り出す。

これから先は動物との追いかけっことなる。


手作りの罠は猪でもそこそこの大きさまで捕らえる事が出来る、今回その罠が壊された、かなりの大物と見た。

絶対に逃さないと太蔵はウキウキしながら追跡している。

武器は少し大きめの鉈が一つ、これがあれば日本国内で倒せないものはない。


例え北海道の羆であろうと倒してみせる。

途中途中で逃げた方角を確かめながら太蔵は自然林の中を走る。

追跡開始から約1時間は経過している、かなり獲物に接近している筈だ。


うん?川の流れの方に移動しているな・・水タイムかな?

よしならば山をショートカットだ。

太蔵は更に速度を上げる。


・・いた! かなりの大物が水を求めて小川に移動している。

猪は体の構造上、上り坂は得意だが急な斜面の下り坂は不得意だ。

ゆっくりと緩やかな斜面を下っている。

やがて降りきった猪が小川に口をつけて水を飲んでいる。


もらった! 急斜面を飛ぶように太蔵は駆け下りる。

猪が気が付き逃走体勢に入り斜面を駆け登ろうとする。


そうはさせじと太蔵は力の限りに鉈を猪に投げつける。

物凄い速度で飛んでいく鉈は深々と猪の首筋に突き刺さる。


物凄い悲鳴をあげながら猪は逃げ惑うがやがて大量の出血により動きが鈍りだす。

ヨロヨロと力なく大地に倒れこむ、丁度そのころ太蔵も猪に追いついていた。


ほう かなりの大物だな、すまんが狩るぞ。

まだ僅かに動きがある猪に近寄り、首筋の鉈を引き抜き再度深々と鉈の一撃を加えて止めをさす。


ふむ 川まで引きずり血抜きをするか。

久しぶりの大物にウキウキと川へと移動する太蔵であった。



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