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皆が食事を終えてのひとときに三人組より相談が持ち込まれた。
「うん 相談事と言うか人助けなのだけど…」
「兄さん イリーナ村を知っているだろう?」
「イリーナ村?」
「この手前6キロ位の街道から少し外れた村だよ」
ああ 言われてみれば街道からはずれた所に集落の村があったな、と太蔵は思いつく。今回は転移魔法の練習をしていたので、その村の付近は飛び越してきている。
「その村がどうかしたのか?」
「どうやら野盗により村が荒らされたようなんだ」
彼女等によるとその村の側を通り過ぎる時に何やら家が燃えているような煙が見え、村人が大騒ぎしている様子が確認されたそうだ。
不審に思い街道から外れ村に近づいてみると何人の人が怪我をしていて、騒ぎが続いていた。
村人に状況を尋ねると野盗が10名程急に襲ってきて、村人を脅し金品から食料を強奪され村娘も何人かが無理やり攫われたとの事だった。
抵抗した村人が何人も大怪我をして今治療の最中だという。
村長らしき者から村娘の救出依頼を受けたが、相手は冒険者くずれや傭兵くずれの野盗だ、女三人では部が悪い。
悪いが町に誰か走って至急に討伐隊を依頼した方がよいとその場を離れたが、野盗退治に出張って来るまでは最低数日以上かかるだろう。
その間野盗がおとなしく待っているとは考えられない。
何処かの町へ移動して女達を奴隷にでも売り捌くはずだ。
そんな話をしながらようやくダンジョンに到着したのだが、ここで運の良いことに以前助けてもらった恩人に再開出来た。
良ければ人助けで我ら三人の支援をお願い出来ないだろうかと太蔵に頼み込んできたのだ。
野盗か…相手は10名と言うが近くにまだいるのなら隠れ家にも予備人数がいる可能性がある、そうなれば15名近い戦力がいると考えねばなるまい。
その考えを彼女等に伝えると、彼女等も流石に考え込み4名では無理があるかと黙り込む。
「なぁ お前たちはレベルはどの程度だ?」
それに答えて 20・17・19 と教えてくれた。
得意は剣と弓それと黒魔法に斥候だと教えてもらう。
うーん この場に田嶋・岡田氏がいれば3名でどうにかなるかも知れないが、このメンバーでは少々きついなぁ…。
何かよい策がないか太蔵は考え込む。
一番は討伐隊を待つ事だが、恐らく到着した時にはこの近くにはもはやおるまい。
今日あたりが限界で明日には移動する可能性が大だな。
やるなら急がねばならないな。
野盗の居場所が限定出来れば、太蔵一人であの魔法を上手く使えれば突破口になるかもしれん。
上手く転移しながら人数を減らせばいいな…。
そうだ魔物から逃げ切る用心に煙幕玉を何個か購入したな、これも利用できそうだ。
ならばと背負い籠の中身をゴソゴソと探し出す。
やるなら俺一人で対応しよう、彼女等は逃げ出す野盗の処理を任せよう。
場合によっては初めての人殺しになるかも知れない、躊躇したら負けるぞ そう己に言い聞かす太蔵であった。
「時間がないな、至急村に移動するぞ」
「「「「えっ お兄さん協力してくれるのかい?」」」
「いや やるのは俺1人でやる。お前達は逃げ出す野党を捕まえるなり処分するなりしてくれ」
「「む 無理だよ いくら兄さんが強くても15名相手なんて」」
「まぁ 現場を見て最終判断をする。行くぞ」
時間がない、秘密を守ってもらう約束で協力すると念を押して太蔵は転移魔法を使用した。
「げっ 吐き気が」 「め 目が回る」 「うー」
到着と同時に三名がヘタリ込む。
「まぁ最初はそんなもんだ 大丈夫かい?」
「ま まさか 転移魔法だとは…兄さんにしっかりつかまれと言われた時に察するべきだった…」
「…くれぐれも約束は守ってくれよ 起きれるか?」
三人はフラフラと起き上がり向こうに見える村に歩き出した。
「村長いるかい?」
村に入りながら村長を探す、比較的大きな家からのっそりと老人が顔を出した。
「おう 昨日の冒険者だな…どうした?一応街には知らせには行っているが」
「例の野党はどの方角へ逃げた?逃げた方角に何か隠れ家らしき物はないのか?」
太蔵が時間がないと会話に入り込む。
「アンタも冒険者かい?逃げた方角は分かっている、ほらかなり先に見える岩山の方角だ、あの辺りは大きな洞穴がいくつもある、少しの期間なら洞穴が便利だ…」
「よし 行くぞ」
太蔵達4名は踵を返して村から出ようとしていた。
「ま 待ってくれ、アンタ達4名じゃ無理な話だ、応援が到着するまで…」
「待っている時間があるのかい?いつまでも同じ場所にいるとは考えられないぞ」
「…ならば せめて手助けにむらの若い者を」
「邪魔になる 気持ちだけ受け取る 行くぞ」
出ていく太蔵達4名にいつ出てきたのか数名の村人達が両手をあわせて太蔵達の無事を祈りだした。
「よし ここまでくれば転移できるな 掴まれ」
ここから先は目線で届く範囲での移動となる、三人を連れて数度の転移を続ける。
「どうだ…追跡出来そうか?」
斥候が得意というエリナが懸命に辺りを探している。
「うん この馬の足跡がつい最近の足跡だ。こっちだ」
エリナの後をついて岩山近くまで進んできた。
「待って 動かないで足元に罠がある」
太蔵の踏んでいる草を注意深く分けて確認する。
「ほら このロープに引っかかると音がする仕組みだ」
おうおう 古典だが効果のある罠だな、罠があると言う事は敵が近くにいると言う事になる。
罠から遠回りに迂回して岩山に近づいていく。
「ここから先は隠れる場所がない、敵から丸見えになるぞ」
「森から出ず ギリギリの地点で探すしかないな」
辛抱強く移動しながら探索を開始する。
「待て 何か声が…」
「…馬の声だ 野党共この場所より引き揚げる準備をしているのでは?」
「うむ 急ごう」
馬の声や人の喋る声が僅かに聞こえてくる。
「いた あそこの岩陰に何人かが動いている」
数人で馬車に荷を積み込んでいる様子が見られる、洞窟の奥から荷が表に運び込まれていた。
洞窟の地形をじっくりと観察する、岩山の数メートル上に平坦な場所がある事が判明する。
「あそこだ あの地点から敵を攻撃する、お前たちはこの場所にいて逃げ出す野党の処分を頼むぞ」
「兄さん一人で本当に大丈夫かい?」
「ああ 敵は油断しているし 手に負えなければ転移で逃げ出すから安心せい」
二人は短弓 一人は黒魔法が使える、遠方攻撃で対応出来るだろう。
太蔵は水筒を出すとタオルに水を含ませ自分の口元をカバーする。
「何が始まるのだ?」
「煙玉だ まぁ見ておれ」
岩山の着地地点をよく心に刻み 転移 と小さく唱える。
おっと 小石を落とさないように注意せねば…
岩山の平坦な場所に無事に転移出来た太蔵は、上から野党達の動きを監視する。
出てきている野党は5・6名か…まず火魔法を叩き込むか。
丁度荷台近くに集まって荷の積み込みを開始している。
火魔法! 喰らえ。
得意の火魔法で上から投げつける。
ぎゃー! 助けてくれ!…
たちまち火に全身を焼かれた野党が大声を上げて転げ回る。
馬たちも驚いて大きな声を発して暴れる。
何だ 何があった おい火が 消せ 消せ!
仲間に駆け寄り火を消そうと、さらに数名が洞窟より飛び出してきた。
もう一丁!! 太蔵は続けて火魔法攻撃を行う。
敵だ! 魔法攻撃だ!! 更に数名が火達磨になり大声で仲間に救援を依頼する。
血相を変えて仲間の野党が飛び出して何処から攻撃されたのか探し始める。
馬鹿め さらに喰らえ!
三度目の攻撃に流石に野党も自分の上からの飛来と分かったようだ。
上だ 上からの攻撃だ! 弓矢を持ってこい
次はこいつだ 喰らえ! 太蔵は連続してけむり玉をふたつ投げつけ下へ飛び降りる。
「体力強化!」 スキルレベル4 元の体力の3倍強化が可能になる。
着地と共に野党を切り捨てる、煙幕で相手は混乱している、同士討ちの可能性があるため迂闊に切り込めないのだ。
ごほん 気をつけろ! 敵が現れ… ぎゃー 。
敵は同士討ちの可能性があるが、此方は一人煙幕の中で動くのは全て敵。
当たるを幸いに斬りつける。
ごほん 煙の外に逃げろ ぎゃー。 逃がすかい、今のうちに一人でも多く処分する!
7…8… 倒した敵の数を確認しながら動き回る。
9…10…11 煙の効果が薄れてきたが構わん 奥に突っ込む。




