235 異世界のエルフ族【第8部完】
第8部少し長くなりました。
少しお休みをいただいて 9部に向かい構想を練る予定です。
暫しの中座をお許しください。
「そこまで断言は出来ぬが、、人族と暮らし始めて見えてくる世界も変わって来たと感じてきた と言えば理解できるかな? つまり変化をあまり好まずに長命な世界に暮らす我等と、常に変化を見つめ何かを生み出そうとする短命の人族・・どちらが幸せなのであろうかな・・・」
その問いにはユリフレーヌは答えられずにただ黙するのみであった。
「姫様 もう一つ質問が、、サブロー様達の住む世界で同胞エルフ達はどの様に暮らしておるのですか?」
途端に彼女は少し困った表情になる。
「・・それよ、、妾も少し気になり聞いて見た事はある。同胞たちはこんな世界でどの様に適合しているのかと もっともな疑問であるが・・聞いた答えは 我等が国では過去に於いてもエルフ族など存在してないと 笑われたわ・・・」
「エルフ族は存在していない国・・・・」
「それどころかドワーフや獣人の村さえもあの国では存在がしていないと・・・」
「・・・それは全て人族に滅ぼされたと考えても・・・」
「いや 言葉の意味はどうも当初から我等が存在などはしていない世界らしい、、、」
「・・・混乱しています そんな世界などがあるとは、、つまり人族しか存在しない世界であると?」
「妾の言葉が信じられぬと?」
「いえ 滅相もありません、ただエルフ族のいない世界があるとは・・・」
「ふむ かく言う妾も当初は半信半疑ではあったな・・・」
呆然と立ちすくむユリーヌにマーラも苦笑しながら呟いた。
「そして 魑魅魍魎の話は聞くが、我等の世界にいる魔物もせいぜい昔話の類であると、誰も見た事など無いと言うのが正解らしい・・・」
「・・・そんな世界があるんですね、、まさに我等の世界とは似てるようで異なる世界と、、、」
「・・・ふふふ じゃからこそ、異世界なのであろうな」
マーラの言葉に再び異世界について考え込むユリーヌである。
「そうそう・・・ただお伽話の世界には我等と似た様な種族が住んでいた様な話が残る国もあると、、なれど当然誰も目撃者などはいないらしいがな」
「・・せ 精霊様達はどうなのでしょう?」
ユリーヌは困惑しながらもマーラから情報を吸収しようと尋ねる。
「・・・姫様、ほぼ理解は出来ましたが先ほどのお伽話に出て来たエルフらしき同胞者の話ですが、聞けば聞くほどに我等によく似ておりますが、もしかして過去に我等の仲間がサブロー様の世界に紛れ込んだ? とは考えられませぬか?」
「・・我等の仲間達が?」
そうか・・その考えはなかったな。マーラも何となく可能性はあるかと思いつく。
「うん? 何を二人で話し込んでいるのかな?」
老師が執務室に入ると、深刻な顔の二人に尋ねる。
「おう お前様、丁度いい 聞きたい事があるのじゃが・・・」
二人で話していた疑問点について尋ねるマーラだ。
「・・・面白い着眼点かも知れん、その話はかなり遠くにある国での話で、わが国にはそんな言い伝えはないのも、そんな可能性がもしやあるかも知れんな、、、もしそうだとしても今現在は残念ながらもし転移したと思われる仲間達はあまりにも年月が過ぎ去っている、生きてはおらんと思うがな、、、」
「・・・サブロー様、意外と我が種族は考える以上にしぶとい?のです。危機になればなるほど長生きになる可能性があります」
彼女等は普段はその長命ゆえに生きるのに飽き?がきて、早くお迎えを望む毎日か自ら大樹の肥やしになる事を実践する者がいるが、約束事とか仲間に会いたい等の思いが強い者の目標が明確の者達はとことん生に拘る傾向になると言う。
その結果 そんな者達は通常のエルフの寿命を超えて生存する可能が高いらしい。
「・・それとですが、精霊に近い存在も語り伝えられていると聞き及んでいます。その地では魔法の発動は困難と聞きおよびますが、我等は基本精霊魔法に特化しております。仮にですが迷い込んだ仲間がいたとして、森の精霊に巡り合えば精霊より力を借りて結界も構築できる可能性があるものと・・・」
「・・森の奥で人目につかず精霊結界に守られて生き延びている可能性があると?」
「はい あくまで想像の域ですが、何となくそんな気がいたします・・・」
うーむ エルフ本人がそう言うからには何かアンテナに引っかかるものがあるのかな?
今は建国及び帝国対策でごたごたしているが、これが落ち着いたら彼女等の願いを叶えに、古のエルフ探しも一興か!?
「その節にはどうぞ私めも同行させて頂きたいと・・・」
古のエルフ探しにはエルフの同行が一番見つける可能性も高いと老師も頷いて約束するのであった。
二人のエルフ達は嬉しそうに互いに喜びを嚙みしめていた。
「なぁ 龍よ、こう言ったら怒るかも知れんが、俺は何かこの国が気に入っているんだがな・・」
沢山の菓子の差し入れを抱えて村木はご満悦の様に見える。
「ははは 私はとっくにこの菓子・・・ではなく、この獣人国に根を張って生きても良いと思っているよ」
日下も部屋の中には菓子類の空袋が所狭しと投げ捨てられているらしい。
「・・・お前等な、、、」
勇者石和は頭を抱えてこの惨状を眺めていた。
何処でこうなった? いつからこの二人は初心を変え始めたのか とつい考え込んでしまう。
確か当初はこの世界に嫌気がさして、この3人で帝国から遁走し何とか元の世界に戻ろうとの約束で行動を共にしてきたはずなのに、、、、、。
そんな思いがこの二人の今からは何も感じられずに、このまま獣人国に住むだと?
思わず腹ただしさから近くの菓子袋を開けて、食べ始めていた。
「おい 龍、それは俺の菓子だぞ!」
うるさい! 無性に情けなくやり切れぬ思いになり、次の菓子に手を伸ばす。
「龍、それ私のだよ!」
どうやらこの3名は異世界の菓子類に骨抜きにされて?当初の予定から大幅に方向展開の舵を切ったように思われる。
「うー-む、 この菓子が悪いのか!?」
菓子袋を睨みつけ真剣に悩む石和であった。
「そうか・・・勇者達は少し悩んでいるのかも知れんな?」
お得意の盗聴器?から情報を集めたユリーヌはマーラに報告をしていた。
「あん? お菓子で当初の目的がふらついているとな!? あの3人大丈夫か?」
たまたま居合わせた久保田が呆れたようにテーブルの上のお菓子を摘まむ。
それを横目で睨みながら小田切も久保田も同じ穴のムジナと笑いながら、好みの菓子に手を伸ばす。
「ふむふむ ならば菓子であの3人を釣る事も可能だと?」
太蔵は笑いながら菓子を食べ終わり緑茶を味わっていた。
「あら 私から見ても日本国の菓子類はそれ程に価値のある品と思うけど?」
「ええ 特に3時のおやつには必需品です」
アナーシャと真知子隊員は二人して顔を見合わせて頷き合う。
「う うーむ、言われれば妾達もいつの間にか3時のおやつに飼いならされている?」
マーラは何か身に覚えがあるのか、ユリーヌと顔を見合わせた。
この所獣人国はまた平穏な状況に戻りつつある、一番の悩みの種の帝国は何か国内で揉めているのか出陣準備がどうも大幅に遅れている様だが、引き続き警戒体制である事には誰もが納得していた。
「済まんが その菓子を食してみたいのだが・・・」
情報収取に現れたケンラン国の辺境伯グレイランス卿は大吟醸酒を飲みながら、柿ピーに興味を覚えたみたいだ。
((恐るべき嗅覚、、酒飲みの本能か?))
高弟二人は横目でチラチラと辺境伯を観察していた。
どうでも良いが、酒の為とは言え月に一度隣国の辺境伯自身が他国の獣人国にいそいそと訪問するのもいかがなものかと老師は深いため息を吐いていた。
肝心の帝国はいまだに国内での意見の統一が取れずに、だらだらと小田原評定を繰り返している始末でもあり、ひとつには前皇帝とは違い現皇帝はそこまでの部下の統率力が無く、また小知恵はあるが大局を判断する大臣なりの力不足もあり、一度もめ始めると己の立場しか考えぬ文官や武官しかおらぬ事がこの帝国の先行きに暗い影を投げかけ始めていた。
ある意味国が亡国に移る過時が今の現状かも知れない。
そんな中でこの国に唯一残った勇者田川だけが何やら浮かぬ顔でこの評定を、半分あくびを噛みしめながら別の考えを纏め始めていたのだ。
今の彼にあるのは前回のミスの回復とより高い地位への願望だけであり、一番権力に対する執着心が強いのは田川であろうと他の勇者達が言い切るのにも核心を突いているのかもしれない。
勇者も人の子であり、決して人格者でない事の証明にもなるかも知れない。
太蔵と勇者達そして帝国との今後と何かと騒がしくこの異世界も変化しようと動き出して行くのであった。
【第8部完】




