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野営準備をしていた太蔵は急に背後から声をかけられた。
「お兄さん 久しぶりだね」
夕暮れ迫るダンジョン前で一人の女が声を掛けてきたのだ。
沈む夕日が逆光になり一瞬相手の顔が確認が取れなかったが、確かにその声には記憶がある。
「…確かムラーダのダンジョンで助けた、、」
「そうだよ 良かった覚えていてくれたんだね」
女はエリナと名乗り大げさに喜んでいた。
半月程前に女達だけの珍しいパーティ編成で上級ダンジョンの上層部にてかなり苦戦して、通りすがりの太蔵に手助けの援助をお願いされたのだ。
一撃にて太蔵は対応してお礼の代わりに数個の魔石を貰い、急ぎダンジョンの奥に消えた太蔵であった。
「あの時はパーティの一人が調子が悪くて、兄さんには迷惑をかけました」
ああ そう言えばパーティの一人が随分足を引っ張っていたなと思い出す。
「へへ 女は月に数日不調の日があるもので…」
うん? ああ そう云う事かと 太蔵は話の内容を理解した。
「ねぇ 兄さん あの時のお礼がまだ十分に済んでいなくて、今更だけど向こうの野営で食事の準備もしているので寄ってもらえないかい?」
いやいや お礼の代償は魔石で払ってもらったと 太蔵は誘いを断るが どうしてもと強引に手を引かれて彼女等の野営地に向かいだす。
「「お兄さん お久しぶりです」」
元気な声が辺りに響く、改めて互いの自己紹介を終えて女三人組の食事に参列した。
彼女等が食事の準備をしていたら、いつの間にか一人の男が野営準備をしている事に気づく。
彼女等の一人があの男性に見覚えがあると騒ぎ出し、よくよく観察するとダンジョンで自分達を救出してくれた人物だと判明する。
急遽あの時のお礼を兼ねて食事のご招待となり、エリナが派遣された次第だ。
久しぶりにワイワイと楽しい食事をする事が出来た。
一人での食事はどうしても簡素になりがちだ、腹を満たせば良いと考えがちになる。
「「「えっ お兄さん冒険者ギルドに登録してないの?」」」
それほど騒ぐ問題なのか?逆に何が問題なのか不明だ。
「入る価値はあるわよ、提携している店では割引してくれるし、第一身分証明にも使えるから他国に遠征時にも関所で面倒がないよ」
エルザと名乗った女性が教えてくれる。
「そうだよ お兄さんはどんな身分証明書を使っているの?」
ラマー二と名乗る女性が尋ねてきた。
身分証明書?確かに言われれば身分を明かす物などないな。あっ あの女が発行した例の許可書をもっているが、恥ずかしくて他人に見せられんな。
そもそも金の手持ちが少なくなれば持っている魔石をギルドなり魔導具屋にでも売りに行けば済んだ事だし、他国に遠征など考えてもいなかった。
後長くても1ヶ月程度で目標の魔石数も達成出来る事だしな…。
「…お兄さん 考え込む様な事なの?」
「あっ うん まぁどうしてもと言う時には代用する物があるんだ。それに恐らく他国には出ないと思うし」
他国に出るにはあの許可書は効能がないだろうしな…。
最悪は密入国かな と太蔵は物騒な事を考える。
「「そ そうなの、ならば無理に薦めないけど…」」
楽しい時間はすぐに過ぎ去る、明日に備えて就寝となる。
自分のテントに戻った太蔵は今日はまだ水浴びをしていない事に気づく。
汗を流したいな、確かすぐ近場に泉があったな…。
魔導具のランプを片手に汗を流すために歩き出した。
おーっ 気持ちいい。
季節的にもまだ寒さはそんなに感じない、泉の中に入り頭や体をごしごしと洗い出す。
風呂に入りたいな…この世界での一番の不満は風呂に毎日入れない事だ。
温かい風呂に入りのんびりと1日の疲れを癒したい…。
誰かが近寄ってくる、瞬間に太蔵はもしかに備え体が反応した。
「ごめーん 私も水浴びにきたんだ」
その声はエリザと呼ばれていた女性の声だった。
「でもお兄さん凄い反応ですね 驚かさないように気を配ったんだけど…」
少し離れた場所で服を脱ぎながらエリザは感心したように話し出す。
「…まぁ一人で行動しているから、いつの間にかだな」
彼女を見ないように後ろ向きになりながら頭を洗う。
「ああ 気持ちいい、汗が流れ去る」
彼女も泉に浸かり汗に汚れた体を洗っている。
「いつから一人でダンジョン攻略しているんですか」
「そうだな、まだ数ヶ月しかたっていないが、ようやく慣れてきたかな?」
数ヶ月といいながら基本上級ダンジョン攻略だ、何回か危ない場面もあったがお陰で色々覚えてきたな とつい独り言に近い口調で自分を振り返っていた。
さてもう上がるか お先にと 体の向きを変えると裸の彼女が太蔵の胸に飛び込んできた。
どうした? 少し慌てながら思わず問いかけた。
抱きついたエリザはその問に答える。
「あの時は私のドジで仲間に迷惑をかけてしまった。もしかして仲間が全滅した可能性があったと思うとお兄さんにいくらお礼しても足りないぐらいなの。こんな私で良ければお礼代わりに抱いて下さい。本当に感謝しています」
そう言ってエリザは太蔵に抱きついている手に更に力を込めて体を密着してきた。
「ま まてお礼はあの時に魔石にて対応してもらったから…」
最後まで喋れなかった、エリザが太蔵の口に自分の口を押し付けてきたのだ。
こ これは困った…。
暫し彼女が落ち着くままこのままでいるべきかと太蔵は迷っていた。
しかしそれを実行するには太蔵は若く健康的な体であった、しかもこの二ヶ月ほどは女性と接していない。
自分の意思とは異なり太蔵の体の一部は敏感に反応を始めた。
それをエリザは目ざとく感じて、静かに太蔵から口を話すと太蔵の耳元に囁いた。
「ふふ 良かった私に反応してくれた…ねぇ あそこの草むらで此の続きを…」
なれどエリザの言葉は途切れた、別の方角から急に声があがったのだ。
「ああ ずるっこい、私も参加する」
思わず声のする方向を二人して向くと、いつの間にか来たエリナが服を脱ぎだしている。
「ま まて これは違うんだ…」
慌てた太蔵は言い訳をすべきエリナを止めようとしたが、さらに後ろから違う声が聞こえる。
「あら 私も参加したいのですが、直ぐに水浴びしますので待ってくださいな」
ラマー二さん 君もか…。
「む 無理です 三人はとても…」
結果的に無理ではなかった、流石太蔵は日本男児である。見事三人の要求に答えた、次の朝少しの朝寝坊と引き換えに。
はっと 太蔵は寝過ごした感じを受けて飛び起きる、テント内には太蔵一人が居た。
大きめのテントであったが、流石に4名が入ると窮屈であり、二人は外で順番を待っていた。
そんな記憶が蘇る太蔵であったが、恐る恐るテントから顔を出すと例の三人が楽しそうに朝食の準備をしている最中であった。
「あっ お兄さん もうすぐ朝食出来るよ。こっちに来て」
元気なエリナの声が辺りに響く。
ここが上級ダンジョンで良かった、辺りには他の気配はない。ダンジョン内の安全地帯には何パーティかは居るとは思うが…。
のそのそと言われる通り太蔵は彼女等のテントに近づく。
用意が終わり配り始めた朝食を太蔵にすすめ彼女等は食べる太蔵をニコニコと眺めている。
「えーと そんなに見られると恥ずかしいのですが…」
思わず太蔵は居たたまれなくなり抗議する。
「あら 昨夜はさんざん色々恥ずかしい体勢で私達を可愛がってくれたのに?」
ぶっつ!口に入っていた食物を思わず吹き出した太蔵であった。
彼女等はキャー キャーと笑いこける。
堪らんな この三人組は…。
恐らく太蔵より数歳は年上と思われる三人組はその後楽しそうに食事を開始した。
「えっ 相談事ですか?」
皆が食事を終えてのひとときに三人組より相談が持ち込まれた。




