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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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太蔵は異世界に召喚され、その記念すべき第一夜を過ごす。


「お早う御座います。食事をお持ちしました」


城の給仕と思われる下働きの侍女らしき女性が部屋に入ってきた。

その声に反応して太蔵の目が覚める。


「あっ 有難うござ・・」


反射的に答えたがよく考えれば女性は翻訳機を身に着けていない、相手の言葉は理解出来るが自分の言葉は相手には通じないと理解して少し可笑しくなり、つい苦笑いが出そうになった。


相手はそんな状況に慣れているのか、表情も変えず淡々と自分の仕事を終えると部屋の外に出ていく。


何の位寝ていたのだろうか? 推定で半日以上は寝ていたと思う。

太蔵は携帯も腕時計のたぐいも持っていない、いや正確には携帯など後数十年たたねば世に出ない時代である。


ベットから立ち上がり軽く体を動かしてみる。

今だ体の不調は感じるものの通常の活動には支障ない程度の回復はしている。


あの魔女?による回復が効果があったのだろう。

空腹が太蔵を襲う、食欲のある事は良いことだ。食べれば体力は回復する。


粗末な椅子に座り食事のトレーを覗き込む。

テーブルに置いてあるトレーの中身に少し眉をひそめる。


黒パンらしき物と野菜スープ。

スープを一口飲んでみる、塩味だけのスープだ…。


なれど今の太蔵には兎に角食べて体力の回復を図らねばならない。


「出来ればご飯をたべたいのだが・・」


無理を承知でつい呟いてしまう、パン食など小・中学の給食以外は食べた事がない。


「もう少し量も欲しいが・・」


食べ盛の太蔵には少し物足りない感がある。

出された食事を綺麗に平らげ一息ついている時だった。




「御免よ 入るぞ」


紛うことなく聞こえてきたのは日本語であった。

食事の間に邪魔な翻訳機は外してテーブルの上に置いてあるのだ。


その声に反応して慌ててドアの入り口を注視する、一人の騎士風な男性が入ってくるのが見えた。


「おっ 意外と元気だな。若さが違うか?」


歳は太蔵より4・5歳上ぐらいか、恐らく22・3歳ぐらいと見かけた。

見かけは西洋風の防具を身に着けているが姿・形は東洋系に間違いない。


「正解だ 今年23になる」


えっ? 自分は知らずに声を出していたのかな?


「いや これは俺のスキルだ。相手の考えがわかるのだ」


そう言って悪巫山戯が見つかったような顔で笑ってみせた。


 ・・・スキル??


何を急にこの御仁は言い出したのだろう、相手の考えがわかる??


「済まんな混乱させてしまったようだ、今スキルを封印する」


男は 田嶋 健一 と名乗る。三橋 (みつば)太蔵です と答える。


「はは 警戒しないでくれ、もうスキルは封印したからな」


警戒も何も事情が分からず混乱の真っ最中だと正直に答える。


「悪い悪い 先程まで訓練の最中でついスキルの封印に気がつかなかった」


 えーと 申し訳ないのですが昨日から混乱しっぱしなので、出来るなら最初から説明して頂ければ…


「あっと 済まん済まん ならば少し話しは長くなるが・・」


この 田嶋 健一なる御仁は太蔵より一月以上早くこの世界に召喚されて来たらしい。

 そもそも召喚自体がよく分かっていないのですが…。


「うーん 俺も難しい理屈など分からんのだが、魔法の力で他の星に住んでいる者を呼びつける? まぁそんな事が出来るらしい」


「・・魔法? それ自体が信じられないと言うか」


「もっともだ 俺も当初一週間は混乱の極みだったな」


当時を思い出し懐かしがっている様に見える。


「この世界に呼ばれた目的は何なんですか?何か勇者の補佐役にて・・」


「・・違うな 何が補佐役だ。本当は予備要員だ」 


そう言って顔をしかめて見せた。


「予備? 何の予備ですか?」


「勇者と呼ばれているのは 石和 龍太郎 と言う人物だ。そして彼には従う人物が他に4名いる。その内誰かが欠員した時の為に予備員として俺たちは召喚された」


「・・欠員とはもしかして、、」


「・・そうだ 死亡したときの予備要員だ、、」


これまた唐突な返答に一瞬固まってしまう。


何なんだ!その為に呼ばれた? 冗談ではない、何故にこんな見も知らぬ世界の為に命をかけねばならないのか。何を考えているのか無性に腹が立つ。


「この世界の為に何故に私達が?この世界の事はこの世界の住人が解決すれば良いのでは?」


「・・スキルらしい」


 えっ? そう言えば先程もスキルがどうのと話しが出ていたが・・。


「スキルとは実際に何なのですか?この世界の人はスキルと呼ばれているものは無いのですか?」


「スキルとは特殊な特技と考えてもらえばよいな。それにこの世界の人にもスキルはある」


「? ならばこの世界の人にて対応出来るではありませんか?」


「効能が段違いに違うらしい…召喚されて来た者は信じられない効能のスキルが身につくらしい」


「・・・その為に私は無理やり召喚されたと?」


彼は力なく頷いた。 只々呆れるしか無い。


「予備要員を拒否したらどうなります?」


「過去には居たみたいだな・・」


「・・無事に帰れたんですよね?」


「さて? 無事に帰りつけたと思いたい、、」


田嶋氏から感じられる雰囲気はどうにも納得出来ない、何かこれに関して話したくない気配がプンプン匂いたっている。


「・・正直に話して頂けませんか?」


彼は暫くの沈黙後軽いため息と同時に意を決したように顔を太蔵に向ける。


「その前に君自身はここに来た時はどんな様子だったか聞かせてくれないか?」


私?ああ どう言えばいいんだろう、全身がだるくて体から力が抜け…そう息をするのも辛いようなそして何も考えられない気分になっていたな、まるでしにん あん? まるで死人になったような !!


「ま まさか・・」


彼は気づいたかと言うような目線を太蔵に向けた。


「ちなみに私はまる二日間のあいだ死線を漂っていたらしい」


「・・召喚とは危険を伴うのですか?」


「これは先に召喚された人からの情報なのだが、彼は偶然召喚の儀式が行われる場所にてこの儀式を行う者たちの会話を耳にしたんだよ」


「どの様な内容だったのですか?」



(今回は成功するかな?)


(どうだか、何せ召喚者の3人に2人は息が戻らないからな)


 何だと!それってつまり…死亡確率が66%の儀式だと言う事ですか?!


「ふう この話しは内密にな。私が聞いた話ではないので真否の程はよく分からぬ」


「その方に聞けばより詳しく内容が聞けるのですか?」


「その人は勇者のグループにて今はいない、そして、、」


「・・そして?」


「最近 死亡したと連絡が入ってきた、、、」


どうしようもない失望感が太蔵に襲ってきた、全てをぶち壊しまくりたい。

無性に体がぶるぶると怒りに燃え上がっている。


「短気は駄目だよ 時期を待つのだ。それまで耐えるんだ」


田嶋氏は諭すように太蔵にアドバイスをする。

怒りを必死の形相で太蔵は抑え込み、田嶋氏に頷いて見せた。

と 同時に昨日のあの嫌なフレーズを思い出し彼に話す。


「何だって!あの皇女がそう話していたのか!」


(今回は成功した ()()で死ぬことがなかった)


()() とは召喚の儀式の隠語だと聞いている。そうかあの皇女め、、」


 いいかい この話しは絶対に他言無用だよ。

 そしてあの皇女は信用してはならない、外面は天女にも匹敵するが、腹の中は真っ黒がドグロを巻いているのがあの皇女の正体だから。


彼は再度太蔵に約束させ部屋から出ていった。



昼近くになり皇女から話があると言う伝言があり、迎えの者と一緒に会見の間に案内される。

皇女は何食わぬおだやかな顔で召喚者の力を借りて魔王征伐を成功したいと語りだす。

成功の暁にはこんな素敵な褒美が待っていると 天女の如く微笑みながらのそれは思わず頷いてしまう程の魅力にあふれてしまう皇女の姿と提案事であった。


田嶋氏からの忠告がなければ間違えなくこの王女の虜になる危険性が大だ。

太蔵は腹の中は煮えくり返れども、必死の思いで耐えて皇女の提案を喜んで受ける振りを演じて会見は終了した。


会見の間から出ていく間際に胸の内で皇女を罵った。


(外面菩薩 内面夜叉とは良く言ったものだ。覚えておけよ)


案内の者と一緒についていき明日からの活動を打ち合わせる事となった。

どうやら 明日からは修行とレベル上げの毎日となるようだ。

太蔵は必ず強くなりこの国で亡くなった同郷人の為に可能であれば復讐を誓うのであった。


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