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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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当面一週間に数回の投稿予定になります



ラーシャと別れた心の寂しさを少しでも埋める為に街に出歩く太蔵である。


西欧中世の面影を残すこの街は太蔵にとっては興味深い風景である事には間違えない。

高い城壁にて囲まれている市内地は中心部は1km四方の壁内と、更にその外側に囲まれた二重の壁の構造都市になっていた。


無論内壁は王宮関連で外壁内が一般庶民関連に分かれている。

正直衛生関連はあまり発達していない、一般地区に関しては異臭の漂う地区が散見される場所がある。

ただ太蔵にとってはそれなりの興味が誘われる場所もあちこちに存在する。


都市全体を城壁で囲い込む方式はあまり日本では見られない方式であるし、中心点から最低3Kmはあると思われる城塞都市はそれはそれで見ごたえのある造りである。

どれほどの人口を養っているのか見当もつかない事に感心させられた。


日本では秀吉に攻められた小田原城の城塞都市が有名だが、壁の造りが高さ10m程度もある石造りは流石に日本では存在しない。


広大な平野があっての城造りであろう、興味のつかない街並みを店のメモを片手に太蔵は心当たりの場所に移動している。


田嶋やアレックス氏から渡された魔術師・魔道具店等の一覧表になる。

人口は多けれど魔道士関連の店は左程多くはない、探索開始3日目にして早あらかたの店を訪問する事が出来た。


疲れ果てて部屋のベットにて横たわり今後の対応をどうするか検討していた。

新しい付き人に関してはもうすぐ勇者一行も帰還するので、その後に身のふりを考えるとして一旦断っていた。


太蔵としては在野生活を続け安全に祖国に戻る方法を検討していた。

送りの儀式がいまいち信用出来ない為だ。

他の都市や他国に活路を見出すかとも考えている。


だが秘密保持に関して他国への移動はかなり難しそうな気がする。

最悪この国内の移動しか許可されないと考えた方がよい。


場合によっては強硬策にてこの国から脱出も考えられるが、この国自体もかなり広く大きな都市も何箇所かある、時間はかかるがまずは此の国で魔法関連を洗い直した方が良いと考える。


なれば在野の為の大義名分が必要になる。

田嶋・岡田両名は下級貴族としてこの国に残留するが、太蔵にも今後の身のフリを喧しく城から最終確認の使者がよく訪問してくる。


回答は勇者達の帰還まではと引き伸ばしているが、正直そんなに時間の余裕もない。

どうしたものかと頭を抱えていた時に朗報が飛び込んできた。


アレックス氏が田嶋氏と共に太蔵の部屋に突然訪問してきたのだ。

何やら新情報があるらしい、部屋に迎えてその話を聞く事になった。


城壁の西門から出て暫く歩くと初・中級ダンジョンが互いに近い場所に行き着く。

街道のダンジョン近くに冒険者相手の簡易宿泊所や道具屋等の店が数件ある。

その表の街道には面して無く裏手の森林内に少し入った場所に古びた魔道具屋があり、少し偏屈な女主人が道楽にも近い商売をしているとの事だ。


確かにその場所は当初は何回か通ったダンジョン地区であったが、後半は上級ダンジョン専用の訪問の為に足が遠のいていた。


ましてや表の街道に面してなければそんな店など知りようもなかった。

店自体も開いている時が少なく、大概は店は開店休業の状態らしい。

ただ店主の腕はよく馴染みの冒険者がたまに訪れるとの事。


店自体も古くからあり、現在は二代目の店主に代わっていると説明を受ける。

この都市内ではアレックス氏も再度情報収集をしてくれたが、やはりこれと言った新情報は皆無である。

藁にもすがる思いと気分転換を兼ねて明日にも太蔵は向かうことにしてみた。



その場所は西門より歩いて半日の場所にある。

道に面して何件かの店が並んでいる、この世界のレベル上げが一般人には困難な事もあり冒険者と言えど例外がなく高レベルの者は珍しい。


其のために初級・中級ダンジョンには多数の冒険者が訪れていた。

各店も昼間というのにそこそこお客の姿を見ることが出来る。


近くの店で問題の魔導具屋の場所を確認して裏手の森の中に太蔵は踏み込んだ。

長い間に踏み込まれた獣道と言っても良い道を用心深く進む。


数百m程度踏み込んだ場所にその問題の家があった。

横手には小さな畑もあり、古びた家の扉の前には 開店営業 の木札がぶら下がっている。


確かにこの家にて間違えがないようだ、しかしこんな森の奥に世捨て人同然の生活でよく生活出来るものだと感心しながら家のドアを開いて中に入り込む。


カランカランと客の訪問を知らせる音が響き渡る。

やがて奥からのっそりと初老に近い店主と思われる女性が顔を見せた。


「…見ない顔だね ()()かい」


警戒ともとれる様な仕草で太蔵を見つめて質問する。

こんな外れにある店だ、ある程度の警戒は仕方あるまい。


「…九日 十日」


太蔵はついしようもない古典落語の一セリフが口から出てしまい、慌てて言葉を続ける。


「失礼 いや知人からこの店の品揃いによい品があると聞かされてね…」


初老の店主に余計に警戒心を与えたようだ。


「…誰からの紹介だね?」


いかん完全に誤解されたかも…。胡散臭そうな視線が太蔵を襲う。


「城の武術指南役アレックスさんだ…」


「…ふーん あの小僧か」


おっ 知っているのか? でも40近いアレックス氏を小僧扱いか…。

好きなだけ見て気に入ったら買っておくれと椅子に座り込む。


店内には20点ばかりの品が並んでいる。

どれも左程高価な品には見えない、ダンジョン内にて使用する便利アイテム類だ。


其のうちの一点の品の指差し説明を求めると、面倒くさそうに立ち上がりその品についてあれこれ説明を始めた。


 いまだ! 太臓は説明する店主に新スキルの LV.1ではあるが人物鑑定を発動した。


初見の太蔵に店主が貴重な転移魔法を素直に話してくれる事などない、訪問した店の店主にスキを見つけては太蔵は鑑定を繰り返すのが日常になっていた。


この鑑定でその人物のスキル等を先に確認し、気になる者には更に言葉で確認する毎日だった。


「おい はな垂れ小僧!おかしな真似をするな」


説明を始めていた店主がいつの間にか左手に持っていたナイフを太蔵の胸に押し付ける。

突然の反撃に流石の太蔵も対応が取れないほどの行動であった。


この反撃には太蔵も肝を冷やし、慌てて無礼について謝り事の誤解を解こうとしたが、聞く耳を持たずに太蔵は店の外に放り出され二度と来るなと念を押される。


店の外で太蔵は暫し呆然として事の次第を考えていた。

確かに相手に了解も取らず鑑定スキルを使用した自分が悪い、だが油断していたとは言えレベル40超えの自分が何も対応出来なかった事に驚きがあった。


「な 何者だ あの婆さん…」


長い間太蔵は店の前でただ呆然として考え込んでいた。



次の朝 近くの簡易宿にて泊まり込んだ太蔵は、早朝から詫びの手土産持参にて再度森の中に踏み込んでいた。

二度と来るなと言われたが、太蔵はあの老婆がかなりの腕前とチラ見したスキルに興味を抱いた。

スキルに関しては確認出来なかった、一瞬見えたスキルは全て 解析不能 の文字で覆われていたのだ。


つまりLV.1のスキルしかない太蔵では相手の高位スキルになる鑑定が見ることができなかった。

自分より高位の 鑑定スキル 持ち、絶対に何かあると感じていた。

何回か追い返されても誤解を解いて相手の話を聞く必要があると思っていた。


家の前の商札は当然 本日閉店 の札がぶら下がっていた。

朝も早いこともありしばしこのまま待機だと太蔵は立ち尽くす。


やがて店の扉がかなり勢いよく開かれた。


 おっ ようやく開店か と太蔵は気を引き締めるまもなく巨大な火球が太蔵めがけて飛来する。



当面一週間に数回の投稿予定になります


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