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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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商会から立ち去った太蔵は皆の元に戻る前にふと足を止める。


「そうだ最期に・・」


直ぐに戻る予定であったが、一ヶ所だけ立ち寄る事にしてみた。


「・・まだ帰ってきていないな」


森の中の一軒家 その家の入り口には 本日休業 の札が下がったままであった。


「次回に会えるといいな・・」


あの婆さんにはお世話になった、会ってお礼を言いたい太蔵であったのだ。

それに今回はあまりにバタバタして太蔵の望む予定が何もクリアできていない。

今回は元貴族の二人の身の安全確保で満足すべきだと判断する。


「そうそう ここも現在の写真を残しておかねば・・」


次回の転移に備えて家や周辺の風景を付属のカメラに収め込んだ。


「さぁ 仲間の元に急ごう、大転移の開始だな」


太蔵は最後にこの地の風景をその目に焼き付けていた。




仲間たちが待っている山間部の洞穴へと太蔵は現れる。


余計な争いを避けるために昔野営時に見つけた洞穴に隠れていたのだ。

もうすぐ夕方になる、皆は荷物の整理に追われていた。


転移が開始されると魔法袋はその機能が止まり、単なる袋になってしまう。

つまり物が袋から溢れて何処かに紛失して仕舞う事になる。


大切な品物が紛失しない様に持参して来たリュックに移し替えの作業中であった。


「おう 老師、帰って来たな ご苦労様」


「田嶋さん 皆さん只今帰り着きました」


「ご苦労をかけたね マリーは元気だったかな?」


岡田氏が近寄り小声で首尾を確認しに来た。


「はい 次回の再開を楽しみにされておりました」


嬉しそうに頷いた岡田氏であった。

本来はこの世界に馴染み帰国したくはないが、今は犯罪者として捜索の手が回っている。

ここは一旦安全な祖国へ戻りまたのチャンスを探すしかない。


「老師 この荷物が入らないかな?」


「うん?構わんぞ 儂の荷の中に入れておけ」


太蔵のリュックはかなり余裕がある。

小田切と久保田は何やら太蔵のリュックにごそごそと詰め込んでいた。


「で 出発は明日の朝で?」


「そうですね 今夜は最後の異世界の夜?ですかね」


「ははは 是非ともまた帰ってきたいのだけどもね」


「様子を見て再訪問はお約束しますよ」


「有難いね・・まだ見知らぬ未来の日本にも興味はあるのだけども・・」


50年後の日本など二人には予想も出来ない筈だ、着いてからの楽しみより不安の方が大きいのかもしれない。


「当面私の道場暮らしで、ご不便をおかけしますが・・」


「何の 身寄りもいない自分達の為にかえって此方が恐縮してしまう」


やがて夕闇が辺りを暗く染め始める。

皆で食事を終え しばし雑談にて楽しんでから明日に備えて一人二人と眠りに付き始める。


後は入り口で火の当番をしている者しか起きていない。


それも次の担当者に代わった真夜中に、太蔵は皆を起こさぬように静かに立ち上がり入り口に歩き出した。


「・・行くのかい?」


火の当番の田嶋氏が少し困惑した顔で太蔵に尋ねる。


「・・はい、禍根は断ち切らねばなりません」


太蔵は決意を前面に出して前方を睨んだ。


「・・そうだね、、あの方は少し無茶が過ぎたよね、、気を付けて無事に帰ってきておくれ。皆が待っているからね」


太蔵は静かに頷いて 洞窟の外へと歩き出した、暫くすると光の陰に包まれて太蔵の姿は掻き消えていた。


 



城のある一室に太蔵は息を潜めて細心の注意で様子を伺っていた。


この部屋の外には門番兵と思われる兵士の気配が感じられる。

前回には存在しない警備体制とも言える。


余程前回起った事に懲りての警備体制であろう。

夜目にも慣れてある程度確認できる様になると、ようやく太蔵は静かに立ち上がり、この部屋で寝ているこの国の主の元へと注意深く近寄る。


まだ本人の最終確認が出来ていない。

替え玉の可能性も無いとは言えないが、その時は次回のチャンスを待つだけである。


ベットの端で立ち止まり 最終確認の為に鑑定の魔導書を取り出して本人確認をしてみた。


(間違いない 本人だ!)


現れた文字板にこの国の主であると言う記載が書き込まれていた。


(済まんが あんたは余りにも好き勝手にやり過ぎたよ)


太蔵は黒光りするナイフを静かに取り出す。

無造作に胸の中央部めがけてナイフが突き刺した。


手加減したのか即死になる事は無く、刺された本人は驚いたように目を開けてその両手を持ち上げて、胸の異物を確かめようとゆっくりと動き始めたがそこまてであった。


その恐怖の目が侵入した男の目と互いに合わさった時に太蔵は一言・・。


()() さらばだ」


ナイフが胸の奥まで沈み込んでいた。

途端に力が抜けて両手は元のベットへ力なく倒れ込み 恐怖におびえた顔はそのまま凍り付いたように、僅かに片方へ傾いていた。


「・・帰るとするか」


気だるい動作で何やら唱えると太蔵の姿はその部屋から掻き消えていた。



「・・お帰り」


「・・ただいま帰りました」


互いに短い会話を交わしながら出かけた成果を互いに目で確認していた、太蔵は自分の寝床へとゆっくり向かっていった。


その様子を見ながら深いため息と共に田嶋氏は薪を静かに火の中へ数本投下していく。




翌朝は皆が早めに目覚め、朝食の用意やら最終確認に追われていた。


「「さて 老師、こちらは準備完了したぞ」」


「「自分等も 問題ありません」」


ならばと皆で洞窟を出て洞窟の前の広場に集まる。


「何か慌ただしい 異世界訪問だったな・・」


「久保田の一番の目的の素敵な女性とのめぐり逢いも無かったようだな」


「ろ 老師、それは失礼な。俺はあくまで修行の目的で・・」


「ははは 何か昨夜にそれらしき事を呟いていたよな?」


「小田切 それは黙っていると言う約束だったろ・・」


いつもの軽口を叩きながら皆はこの異世界に別れを告げようとしていた。


「ならば全員集まってくれ。久保田例の画像を」


太蔵が見やすい様に位置を調整しながら画面を見せる。

久保田が転移前に撮っていた道場周辺の画面である。


「上手く行けば良いな・・」


「へへ とんでもなくズレた日本に転移はお断りですよ」


「任せろ 皆念のために儂にしっかり掴まって離すなよ」


軽い緊張と共に他の4名が太蔵の体を握りしめる。

最後に一度久保田の持つ画面をしっかりと見ながら太蔵は転移を発動する。


「いざ 日本へ! 転移!!」


足元に並べた魔石や魔素結晶が太蔵の魔力に反応して光の渦を発していた。





それは突然に太蔵等の道場の前に現れた。

光の渦が昼間の太陽に負けぬ勢いで一箇所の地面が光り輝いていた。

留守番の皆がすぐさま感じるほどの異様な光の渦が出現したのだ。


まず一番に見つけた者は道場にて監視カメラを画面で見ていた隊員であった。

突然にモニターの画面の一つが眩しく光り出しその光に目を細めていた。


次に窓際に座り極秘書類を目を通していた大宮三尉が庭先の異常に気がついた。

室内にいた隊員達が何事と その現場を確認し始めた時には、その光の中から何人もの人影を見る事が出来る状態に移っていた。


「「「老師達だ」」」


今だ光に包まれてはいるが、それを見つめる隊員達は反射的に理解した。


次第に光の渦は薄れていく、そして何人もの人影はそれとは逆に人物が確認出来るようになってきた。

正に太蔵を始めとして高弟の二人、そして初めて見る顔の人物が更に二人の5名が現れたのであった。


「「「「「お帰りなさい 老師」」」」」


皆の出迎えを受けて老師がにこやかに立ち上がっていた。

続いて高弟達もふらつきながらも元気な顔で片手を上げて皆に応えている。

そして一人がまた立ち上がり、最後の一人がかなり苦痛の顔で耐えながら立ち上がる。


最期の一人は岡田氏であり、他の者は皆体力強化にて転移を乗り切ったが、彼はそのスキルを持っていなかった。


レベル40越えの体力に任せて転移の荒行を乗り越えてきたのだ。


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