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その男 異世界帰り   作者: 西南の風
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振り向いた太蔵の目に入ったのは、一糸も身に纏わぬ裸体のラーシャがいたのである。


突然のことに固まった太蔵は、何かの見間違えと繁々とラーシャを見つめてしまう。

予想よりも豊かな胸と引き締まった腰、長身の性もあるがその長く引締しまった足に少女と大人の境目における腰まわりの彼女を。


太蔵はパニックゆえ夢か幻かと余計に真実を見極めようとした結果、彼女の裸体を脳裏に刻む結果となってしまった。

 

「オ気ニ 召シマシタデショウカ?」


か細い声が顔を斜に向け下向きの口から溢れた事により太蔵はようやく理性を取り戻した。


慌てて太蔵は遅ればせながら事態の全貌を知り後ろ向きに身を変える。


「ど どうしたんですか ラーシャさん 服を着てください」


声が裏返りながら太蔵は懸命にラーシャに発した。


「…オ気ニ 召シマセンデシタカ?」


か細い声が僅かに震えているのが太蔵の耳に入ってきた。


「いえ いえ 気に入らないとかそう云う意味ではなく、兎に角一度服を着てください。その後に話し合いをしましょう」


暫くの沈黙の後にラーシャが服を身に着けている様子が太蔵の背中越しに伝わってくる。

その音が止んで暫くして太蔵は恐る恐る振り向いた。



その場には美しい顔を能面の如く無表情にしながら、僅かに寂しさを湛えるラーシャの姿があった。

上品な服を身にまとった彼女であったが、太蔵には先程の裸体のイメージが強く残り、服が透けて人肌が見えている気がして戸惑っていた。


「…まずは その椅子に座ってください」


やっとの思いで声をかけ、彼女の目の前の椅子を指差した。

動揺を必死に抑えながら太蔵は今回のあらましについて尋ねた。

すると彼女は不思議そうな顔で、太蔵の付き人として問題ないか最終確認の為だと答える。


 …付き人? 何のことだ、、。

 あっ、たしかに最初に会った時にそのような発言があったな…。


太蔵は突然現れた美しい彼女に見惚れてつい肝心な事を聞き逃していた。


「ゴホン えーと確かにその様な事をおっしやっていましたが、それと今回の事がどう関係が…」


僅かに彼女が苦笑いの様な顔をする。


付き人たる者、全ての身の回りに責任をもたねばならない。当然夜の相手も含まれる、それでも相手にも好みがあるためまずは相手の好みの体であるかどうか確認してもらう必要がある。


な なる程、、。それで脱いで裸体を晒した訳なのか。

それは付き人ではなく愛人に近い関係なのでは…。


太蔵は世間一般の常識不足の中で必死に考え込んだ。


「私ハ 失格デショウカ?」


少し悲しい顔をしたラーシャから再度の質問に思わず反応してしまう太蔵であった。


「いやいや 飛んでもない。貴女ほどの素敵な女性を断るなんて、ただ急に言われても困るし、その第一に私はまだ女性を……」


普段の太蔵と違いかなりテンパりながらの受け答えに、ラーシャは僅かに能面の顔を微笑んで立ち上がり太蔵の耳元にて呟いた。


「最終確認ガ マダ終ワッテイマセン、抱イテ下サイ」


意識が飛びそうな興奮が太蔵を襲う、それを何とか抑えて再びラーシャを椅子に座らせると、


「いいですか、暫くこのままで待機して下さい。直ぐに帰りますから!」


それだけをようやく伝えると逃げるようにドアを開けて飛び出した。




向かった先は二部屋先の田嶋の部屋だ。


「田嶋さん 居ますか?相談事です ここを開けて下さい!」


ドアを忙しなく叩き、田嶋に助けを求めた。

暫くしてようやくドアがゆっくりと数10センチ程開いて田嶋の顔が辺りを確認するかのように現れた。


「田嶋さん 相談したい事が…」


ここにおいて太蔵は己の思量不足を思い知らされた、田嶋は上半身が裸であった下半身には大きめのバスタオルに匹敵する布をまいている。


それと太蔵は田嶋より背が高く、つまり中の様子がある程度見渡せたのだ。

奥にあるベットには裸体の女性が横たわっている様を…。


瞬間的に気まずい空気が太蔵を包んだ。

全てを理解して太蔵は固まった状態になってしまった。


落ち着いていたつもりでも、やはりこの手の経験が不足している太蔵には軽いパニック状態になっていたのだ、冷静に考えれば直ぐに田嶋も同じ状況であると思いつくのだが…。


兎に角この場から離れようと逃げ腰になった太蔵に、状況を飲み込んだ田嶋は中に入れとドアをさらに開く。

飛んでもないと太蔵は慌てるが、強引に田嶋により引き込まれてしまう。

いつの間にかベットにいた女はシーツを胸まで引き上げて、闖入者の太蔵に微笑みかけている。


落ち着かない様子の太蔵が椅子に座り田嶋に自室で起きた事柄をつっかえながら話していく。

途中から笑いを必死に堪え始めた田嶋はついには我慢できず、背を丸めて必死に声を出さぬように全身で笑っている。


一通り笑い終えたのか田嶋は目からも溢れた涙を拭きながら笑顔を太蔵に向けた。


「いや スマン笑って、そうだな太蔵くんには少し刺激が強かったかな」


「……」


「そう怒るな 年よりも大人びていたから大丈夫と思っていたが、この件に関しては年相応の反応だったな」


尚もニヤニヤと顔を崩す田嶋はからかうような目で太蔵を見ていた。


「それでどうしたんだ、ちゃんと抱いてあげたか?」


飛んでもないと太蔵は頭を振る。


「えっ? まさか何もせずにここへ?」


驚いたように田嶋は見つめ返す、思わず太蔵は無言でうなずいた。


「あいたー 太蔵くんもしかして国に好きな子が? それともあの可愛い娘は好みじゃないのか?」


国には確かに片思いに近い子がいるが打ち明けてもいない、そしてラーシャに関して好きか嫌いかと尋ねられるなら自分の好みだと答える。


「何じゃそれは…では何故に抱いてあげない?このままでは大変な事になるぞ」


真剣な顔で忠告する田嶋であった。

思わず引き込まれる太蔵である。


「まず 少し詳しく説明してあげる…」 田嶋は語りだす。


この国ではレベル30に達したものは最強者の一人として認められる。

当然出世に関しても有利となり、場合に寄っては上級位の娘との婚姻も可能な程だ。


特に異世界人のレベル30に関しては更に好条件が普通にある。

同じ30レベルでもこの世界の人とは明らかに差があるからだ。


まず付き人として選ばれる女達はそれなりに厳選された女性達だ。

親や知人達からの推薦がまず行われる。

対象は学識がたかく上品で美人である事が求められる。


そして何人かの面接と体に問題が無いかの検査の結果選ばれる。

無論全員が処女である事が条件の一つとなる。

これに関しては後で説明をする。


上記に述べた選別から選ばれる女性は補欠を入れても数十人に一人の合格となる。

その後日本語の教育を受けさせられて覚え込む。


何故そこまでして娘を差し出すかだが、当然その家に莫大な支度金が国より支払らわれる。

そしてこれは推測だが、勇者グループにいた者から聞いた話だと断りを入れて話し出す。


どうも異世界人の血が欲しいのではと 小声で伝えた。

かなり小さなボソボソ声なので太蔵でさえ聞きとりにくい。


レベルの上昇さや一レベルあたりの数値の上昇数はこの世界ではありえない。

どうもこの世界で生まれる異世界人とのハーフはその血を受け継いでいるようだと。

ただ血が薄まると当然その利点も薄まる。


それが証拠に付き人の妊娠が発覚すると、直ぐに新しい付き人に交代されるらしい。

表向きは母体の健やかな安全の為だと言う。


中には将来夫婦になると誓った二人も結果的には引き離されたらしい。


この世界での異世界人とのハーフは当家にとって途轍もない金の玉子になるわけだ。

親が競って娘を差し出す理由が理解できたか?


そこで問題だ お前みたいに選ばれた付き人を拒絶したならどうなる?

答えは簡単だ 付き人の交代になる。

後には虎視眈々と狙っている親たちがいる。

これ幸いと別の家から選ばれた娘が付き人としてお前に近づくと言う訳だ。


そしてあの娘はやくたたずとして家に帰らされて一生下手すると結婚も出来ずに老いていく。

どうだ ここまで聞いてもまだあの娘を抱いてあげないのか?

人として問題ではないのか?


田嶋はそう言っていたずらっぽく笑い出す。


そうだ 何故処女に拘るかもう聞く必要が無いだろう。

異世界人以外の子供はこの場合必要ないからだ。



当面一週間に一回の投稿予定になります


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