幻覚、それは僕が実際にみたこと
死が僕に近づいた時、冬の夜だった。
それは冷たく、ある一人の男が歩いていた。
その男が僕の魂を奪っていったんだと思った。
だから後を追うことにした。
夜9時で電灯の灯りしかなく、ただ寒かった。
けれど、その男を追うのはやめにした。
なぜなら、これは幻覚だからだ。
ホテルの部屋に戻った時、水の流れる音がした。
壁から聞こえる。
僕は耳を壁に近づけた。
でも音は大きくも小さくもならなかった。
低音をだけかがかけているようだ。
でも、止まったり、鳴ったり、これは僕の頭の中にある幻聴だ。
カーテンが揺れている、もちろん窓は閉まっている。
思考が頭に差し込んでくる。
大切な人が亡くなったみたいだ。
僕はホテルを後にすると車を走らせた。
ただ。走らせた。
これは病的な妄想に基づいている。
人が泣いている。ただ、それは僕の頭の中だけで。
ガソリンスタンドでガソリンを補充した。
深夜の空気に触れていると頭の中が静まって来たようだ。
ここから、思考は断片的になり小説に書くことはできない。
何が幻聴でなにが現実かわからないからだ。
これは僕が精神科の隔離室を経た実際の経験である。