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「小説家になろう」で小説家になれなかったヤツの話  作者: 変上 キョーマ だったひと
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「小説家になろう」

 高校3年生。現実を見る世代。大学の学費、入試試験、その先の就職。

 自分が学校という名の箱庭で育てられた世間知らずだということをまだそれほど自覚していなかった頃。箱庭は突然に門を開き用済みとなった畜生を外に追いやるかの如く乱暴に「これからのことを考えろ」と言い出した。親はただただ「勉強しろ」しか言わないし、それしか言うことのできない存在に信頼のカケラもなくなっていた。私は孤独だった。だが、当時は何かしらの才能があるのではないかと思っていた。勉強はそれなりにやっていたが、特別に受験勉強として「一日5時間必ず勉強!!」なんてことはしていなかった。とりあえず受かりそうな大学を見つけて、親にはもう一つ偏差値が上の大学を第一志望と嘘をつき、適当にやった。本気になれなかった。勉強することの意義を私は見出すことができなかった。それを相談するような友人も信頼できる教員もいなかった。私は本当に孤独だった。


 ある日、何のきっかけだったか忘れたが「小説家になろう」というサイトを見つけた。「小説家 なり方」などで検索したのかもしれないが、そもそもなんで小説家になりたいと思ったのか忘れてしまった。私はそのサイトを「自分の書いた小説を投稿してたくさんの人に読んでもらえて、あわよくば出版社などからお声がかかり小説家になれる!」というものだと当時は理解した。

 ランキングがあり、その総合ランキング1位の作品を少し読んでみた。私には酷くつまらなくて疎い文章に読めた。そこから徐々に理解し始めてしまう。「小説家になろう」は、「社会に疲れ切った人間が自己肯定感を満たす自慰行為をするための小説がたくさん集まってしまったサイト」だと。(これは現在の私の考え方と変わっていない) 私はそれを否定したかった。社会とはこんな形で闇を濃縮したかのようなものをインターネットに作り出してしまうものであることを。社会に疲れ切ったような人間がこんなに空気の篭ったところで傷を舐め合うかの如く集まっていることを。それを象徴するように、いわゆる「なろう系」がランキングにのさばっていることを。

 これらを否定するために、また私という生命がこの世に存在していることを証明するために私は小説を投稿した。だが、鳴かず飛ばずだった。短編を毎日一本以上投稿したのだが、システム上、短編よりも連載小説の方がファンを付けやすく、またこのサイトで王道となってしまっている「なろう系」は絶対に書かないため、戦略的に詰んでいたのだ。そのため感想が滅多に来ないものだから、自分の書いた小説自体が面白いものかどうかすら主観でしか判断できなかった。私は自信を失っていった。疲れていった。しまいには、連載小説を書けば良いのではないかと考え(まぁそこまでは良いのだが)自分では書きたくなかったラブコメを書いてのたれ死んだ。ラブコメを書いたのは当時何かの賞があったので、それで人から見られる可能性が増えるのではないかという考えで書いてしまった。失敗だった。連載小説にはポイントが付いたが、感想は来なかった。このポイントが、人間によるものなのか、機械によるものなのかすらよく分からないでいた。それを反証するものがないのだから。私は本当に疲れ切って、ある意味、過労死して小説を書くのをやめた。

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