好きに考えてみる
「なぁ、好きって具体的にどう言うんだ?」
恋愛経験のない人物にとって、そんな事を言われても。
「いや、別にハッキリと伝える必要はねぇだろ。そんなこと言うなんて、珍しいな」
男子のアホとバカの会話。
相場竜彦の素朴な疑問と、舟虎太郎の普通な回答。
「そろそろ俺も本気出して、彼女を作ろうと思うんだ」
「おう。いい心がけだ。でも、女を紹介するほど知り合いは多くねぇぞ」
どちらも顔が良いとは良い難い。この世でそれを変えるとなると、男子高校生で払える額ではない。大人しく、そこらの化粧品使って清潔感だけがアピールタイム。
それが難しいから、イケメンとそれ以外の格差はあるものだ。そこで男子の良さ、人の良さを磨くためにもトーク力について考えてみたところ。
「会話してて楽しい奴はいるよな」
「まー、一定数いるよな。趣味の合う奴、笑うところが一緒な人」
「俺もあれくらいのトーク術を磨きたいんだ」
「……たまによ、女子が無理して笑ってるところ見るから。場の勢いなんかって思うぞ」
「それでもいいじゃないか」
「んで、それと冒頭がどう繫がるわけ?」
「ストレートに言わず、どう思ってどう伝えるんかなって」
言われて見ると、そうだな。
やっぱり、その人の良いところを言うのが大切なんだと思うぞ。
練習という形で相場は女子達に無理矢理、練習をしてみるのだった。
◇ ◇
バヂイィィッ
一発目の平手打ちは、御子柴からであった。
「……めちゃくちゃ怒られたわ」
「ビンタ一発」
向こうもなんの冗談だって顔で、攻撃してきた。
そんな相場が何を言ったか。
「お前の自慢の胸が好きだって、具体的に告白したんだが……」
「好感度高ければ成功しそうだが、好感度ない奴からしたら変態にしか見えねぇから」
「うむ。やっぱり、好感度って大事だな。で?どう上げればいいんだ?重ねたデートや金を貢ぐほど、俺達の財布は裕福でもないし、時間もないぞ」
そんな状態で彼女を欲しがるのはどうかと思うんだが……。
「よし、じゃあ次な。今度は優しい男って感じをアピールしてくる」
「まー、頑張れ」
そして、2人目。
「あ、お断りですー」
一体なんやねんって感じで、川中も。相場の誘いを断った。
悩んだポーズをとりながら、舟にも届いた独り言。
「……難しいな」
「なんて言ったんだ?」
「勉強を教えようとな……」
「お前が人に勉強を教えられるわけねぇーだろ。川中さんはクラスでも上位の優等生だし、お前は授業中じゃよく寝てるしな」
「普段の行いも大事というわけか……」
「逆に勉強を教えて欲しいと頼めば良かったんじゃね?」
「その言い方、頭が良いな。今度、川中さんにそう言ってみる」
そして、3人目。
会話はそこそこ弾んだのだが、……イマイチ噛み合わず。
「男子には分からないでしょ」
「そーいうものか」
手応えとしては3人の中で良かったのだが、どこか噛み合わない。でも、良いんじゃねぇか。って感じの雰囲気だった。
「動画好きの嶋村と、ネタを合わせて話しをしてみたぞ」
「なかなか上手くいっていたぞ。遠目から見て」
「けど、嶋村は結構細かいところ見てて、話を合わせるのが大変だった。相槌をうつぐらいしか、終盤できなかったな」
「ニワカ晒しちゃったな」
「そこ含めて、察してくれる嶋村が良い奴で良かったけどな」
今話している女子連中は、相場達も気軽に話せる仲。友達感覚だからこそ、こーいう事はできる。そこで少しは学べた気がする。
「よーし!本気で彼女作るぞー!」
「ところで思うんだが、相場。さっき話した3人の中で、好きな奴いたのか?好みという意味でだが」
アイドル枠の川中、巨乳枠の御子柴、オタクっ子の嶋村。
訊かれる意図も察して、相場が答えたのは
「そもそもどんな彼女が好きになるか、考えたことねぇーや」
「そこからかよ」
「好きな気持ちになるのって、案外難しいじゃん」
「んー、まぁそうか」
だったら、さっきまでの練習になんの意味があったんだ?
そこ考えておけよ。アホ。
というか。
「相場さー。あんたって面白いところあるけど」
嶋村がUターンして、相場に教えに来てくれた。察する女は結構厄介。舟では言い辛かった。
「練習道具とか思ってる男子って、私達からしたら好感度マイナスだからね?」
「……分かった。じゃあ、どうやって自分がもっと女子の事が好きになるか。考えておくぞ」
「頑張れ」
「そのまま突き進ませたら、ヤバイ気がする回答なんだがな」