再会
離婚して1年が過ぎた。
あの白い大きな家は売って、
元旦那さんは恋人とマンションに住んでいる。
最近は別れ話が出ているらしい。
私は息子と郊外のマンションに引っ越して来た、
自然の多い場所で息子も気に入っている、
昔よりゲームをやる時間が減り、
外に遊びに行くことが多くなった。
私は昔の家で唯一好きだった庭がなくなり、
狭いベランダで花を育てるだけでは物足りなく、
近所の園芸ショップで働き始めた。
昔のようにイライラして息子に八つ当たりすることもなくなり、
穏やかな日々の繰り返し。
「お母さん、いってきます!」
「いってらっしゃい、気を付けてね。」
今日も良いお天気。
私は支度をして仕事に向かう。
玄関の鍵を閉めて、自転車に乗る。
家の鍵には前の家の庭に落ちていた三日月のキーホルダーが付いている。
結局、誰が主人の浮気現場の写真を撮ったのか、
わからないままだった。
元旦那は私が興信所に頼んだと思っているようだけど、
もちろん私は頼んでいない。
私は前の大きな家に引っ越した時に、
この家に合うような、
きちんとした妻で母親にならないといけないと、
自分で自分に魔法をかけていた。
私は一生懸命、母親という型に自分をはめようと頑張っていた、
そして主人や息子にも父親なら、子供ならとそれを強要していた。
あの家での生活は窮屈だった。
自由があるようで無い、
鳥かごの中の鳥のような生活をみんなでしていた。
あの三日月の形のキーホルダーは、
鳥かごの鍵だったのかもしれない。
あの夢とキーホルダーのお陰で私は自由になれた。
月は本当のお月様で私をあの鳥かごから解放する為に、
夢に出て来てくれたのかもしれないと私は本気で考えていた。
今の私は大好きな草花に囲まれた仕事をしている。
仕事は大変だけど、楽しい毎日だ。
「おはようございます!」
「星野さんおはよう、丁度よかった!来たばかりで悪いんだけど、
花束の注文なんだ、今、手が離せなくて変わりにお願いしてもいい?。」
「はい、わかりました。」
「じゃお客様レジにいるからお願い!」
そう私は離婚して、
旧姓の星野の戻り、星野あかりという名前になった、
昔のアイドルみたいな名前であまり気に行っていない。
レジに行くと男の人が花を見ている。
「花束希望のお客様ですか?」と聞くと、
「はい、お願いします。」と振り向いたその男性は月だった。
つづく




