第4話 所有者が奴隷で奴隷が所有者!?
奴隷契約を結んでからすでに15分が経過し、俺がこの世界に召喚されたからは1時間を経過していた。奴隷契約を結んだ効果なのか、元の世界に帰ることなくこの世界に留まっていた。
「ひとまず、わらわとおぬしの奴隷契約は成立じゃの! 改めて、よろしくなのだ!」
「よ、よろしくです……」
俺は、冷や汗をかきながら返事をし、メリス様と握手をした。
(いや、奴隷になっているのはメリス様のほうなんだけどな……)
俺の右手中指にはめられた指輪は奴隷の所有者、一方のチョーカーは奴隷の証だ。なぜ、このようなことになってしまったのか。
この原因は、間違いなく奴隷の儀式にあったと考えることが妥当だろう。そこで俺は、さっそく先ほどの儀式が行われた魔方陣を調べることにした。
地面に置いてあった魔術書を手に取り、ページをパラパラとめくる。すると、魔方陣の描き方と奴隷契約のやり方について、図解付きで丁寧に解説されているページを発見した。
俺はそのページと、実際に描かれた魔方陣を見比べて間違いがないか細部まで確認した。しかし、この本に書かれている通りに魔方陣は描かれていた。
(えっ、違うのかよ!)
魔方陣に不備があると踏んでいたのだが、予想が外れた。俺は頭をかきながら、次のページをめくってみた。すると、そこには主人になる人と、奴隷になる人の立ち位置が描かれていた。
(へぇ、奴隷になる人は左側で、その主人になる人は右側に立つんだ……って、あれもしかして……)
先ほど、行った奴隷契約の儀式を思い出してみる。
(たしか、長い文字のほうに俺が乗って、短い文字のほうにメリス様が乗ったんだよな……)
そのことを頭に置いてもう一度、魔術書を見る。
(うわぁ、やっぱりか……)
謎が解けた。本来ならば長い文字のほうに主人となるメリスが乗らなければならなかったのだ。しかし、実際にその場所へ乗っていたのは、この俺、内田友恭だ……。反対に、俺が本来乗っていなければなならない場所にいたのは、メリス様だった。
つまり、魔方陣はちゃんと描けていたのだが、主人と奴隷になる人の立ち位置が反対になってしまったために、このようなことになってしまったらしい。
まぁ、時間がなくて焦っていたし、少しパニックにもなっていたというのもあるかもしれないが、この状況がバレでもしたら本当に俺は殺されてしまうだろう。
俺は彼女の主人ではあるが、彼女の奴隷として振る舞うことにした……