ジズVSライコス開戦③
ジズVSライコス開戦③
「そうか……お前らは知らないのか。人をドミー化させる薬はもう出来ているぞ?」
「な、何を言っている! 人のもろい体ではドミー化できないはずだ!」
バモンは全力でコペルトに殴りかかった。
「あいつを一発殴らなければいけない!」その一言が彼の脳を支配していた。
しかしその拳は話を続ける青年にかすりさえしない。
「ああ、だから人を直接ドミーにはしない。ドミーにするその前に人から卒業させてやるのさ。あいつらには人体強化の薬と弱体化させたポルム──お前達で言うところの飴も飲ませていた。そしてそれを使用制限を無しに戦いで何度も使わせる。そうすれば慣れた体はいつか自然とドミーになる」
「覚悟しろよコペルト!!」
「おお! マジで怒っちゃったか?」
氷鳥の拳は黒鳥の頬をかすめた。
だが黒い羽が数本舞う程度。
その程度でコペルトは驚かない。
けれど、羽ばたいてバモンとの距離を十分にとった。
「お前のように人の命を使って遊ぶようなやつに! 人々を助けるということは任せられん!」
「そうかよ。ならバモン! お前1人で俺たちを止めてみな!」
(1人!? 俺たち!?)
バモンは後ろを振り返った。
振り返った先には腹から血を垂らしているドドと、手の先からひじ部分まで赤く染まっている子供が立っていた。
子供の白い手は面白いくらい赤く染まっている。
幼い少年は体を洗うように右腕を撫でて、しつこく絡みついている血を払った。
「コペルトさ~ん。僕先行ってて良い?」
「良いぞ。ジズの入り口を綺麗に掃除しておいてくれ」
2人はご飯を食べる時のような空気で普通に会話をした。
子供は誰にも止められないままジズの入り口の方へ走った。
その時バモンはドドに駆け寄っていた。
「ドド!! お前が死んだら誰が偵察クラスを導くんだ!」
怒鳴る青年の姿は先ほど無線機に吠えていたドドのようだった。
「もう……部隊はいな……い」
「くそう死ぬなよ! 氷鳥の羽!」
ドドの体を撫でながら傷口を凍らせていく。
それでも傷が治ったわけではない。
けれどなんとか呼吸を続けていることを確認し、凍結させた自身の上着を彼の上半身を守るようにかぶせた。
バモンはゆっくりと立ち上がりながら再度コペルトに尋ねる。
「コペルト。さっきの子供は何だ。あれもお前の玩具か?」
「おもちゃ──じゃないな~。あれは俺の最高傑作だよ。あいつと俺ならあのブラックにも勝てる!」
「イーサン・コペルト。たった今、お前を三幻鳥クラスから除名する」
「────別に良いよ。だって俺があんたを! ジズごと無くしてやるから!」
黒鳥は漆黒の翼を羽ばたかせ、黒く燃え盛る炎の竜巻を氷鳥へ放った。