開戦前③
開戦前③
────対ポルム組織ジズ 訓練室
「今からライコス掃討作戦の説明をする!」
僕はあの時以来、地上作戦には参加しなかった。
他の班は偵察クラスの後方支援という形で参加していたらしい。
班のレベルで考えたらニアース班はジズクラスで一番のレベルだと思う。
というのはニアースさんが言っていたことだけど僕もそう思う。
それなのにニアース班が参加できなかったのは僕のせいだ。
カインさんとの勝負の時にアースを発動して以来、アースは使っていない。
ずっと飴を使って訓練をしていた。
そうせざるをえなかった理由はもちろん分かってる。
僕があの時、カインさんを殺しそうだったからだ。
そんな僕だけど今こうしてバモンさんが招集した、何十人もいるジズクラスの1人として作戦の説明を受けている。
そう……ジズは今、こんな化け物の僕でさえ実戦の作戦に参加させなくてはいけないくらい、追い込まれている。
「今回の作戦はこれまでで一番リスクが高いものになるだろう。後方支援という名目だが前線が突破された場合はお前たちにも戦ってもらうことになる。もしも辞退したい者がいたら今すぐで構わない……この場から出て行くんだ」
バモンさんはまるで全員に「出て行け」と言っているみたいだった。
でも誰1人として足を動かさない。
こういう反応をするのは分かっていたみたいに、彼は教壇の上で息を吐いた。
「お前たちのその覚悟、私が守ると約束しよう!」
────対ポルム組織ジズ マダー・ステダリーの部屋
珍しく部屋に十分な蝋燭が置いてあった。
ステダリーは机の上の地図のようなものと、いくつかの書類を見ていたのだ。
書類は茶色く汚れていたり、シワや折れているところがあった。
「もしもの時はあなたにも戦ってもらうことになるかもしれません」
「──」
彼の目の前にいた黒装束の者は口を開けはしなかったが、ステダリーの顔の方を向いている。
それがどういう意味なのか分からないが、どうやらステダリーには伝わったらしい。
「分かっています。その際のお礼はちゃんとしますよ」
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その日の夜はいつも通り寝れた者、寝れなかった者、過去を思い出した者、興奮している者。様々な夜があったであろう。
次の日が来て欲しくない者、来て欲しい者、死に怯える者、殺しを楽しむ者、戦いを終わらせたい者。
それぞれの夜は次の日、それぞれに同じ朝を与える。
ライコスがジズに総攻撃を仕掛ける決戦の日。
一部の人間のための戦いにたくさんの命が使われる戦いが始まる。